「ローカル路線バスの旅 陣取り合戦」第7弾 松戸駅~飯岡灯台を分析する。勝負を分けた「小さなミス」

負けたとき、ちゃんと放送見てない

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流山駅まで歩かなかったら

「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」第7弾、次は河合チームの検証です。

河合チームは松戸駅を9時ちょうどのバスで出発しました。南流山駅に到着後、流山駅へ向かうバスは約30分後と判明。ここで河合は、バスを待たずに歩くことを提案します。乗り気でない箕輪と小田を励まし、2kmあまりを歩いて流山駅に到着しました。

流山駅では、江戸川台駅行きのバス時刻を先にチェック。出発時刻が迫っていることを確認し、撮影ミッションを手短かに済ませて飛び乗りました。時間ロスのない乗り継ぎで、江戸川台駅へ先行することに成功します。

では、仮に南流山駅で歩かずに、バスを待っていたらどうなっていたでしょうか。

▽1日目
松戸駅09:00→09:26南流山駅南口/北口09:56→10:04流山駅(☆流山市)12:55→13:10江戸川台駅

実際ルートの流山駅でギリギリのタイミングで乗った10時04分発のバスが、南流山駅から来たバスです。裏を返せば、南流山駅で09時56分のバスを待っていると、流山駅でバスを一本乗り逃すことになります。次のバスは2時間50分後まで来ないので、江戸川台駅に到着するのは13時過ぎになってしまいます。

実際には、そんなに待つはずはなく、違うルートを探すでしょう。すると、次のような乗り継ぎが見つかるはずです。

▽1日目
松戸駅09:00→09:26南流山駅南口/北口09:56→10:04流山駅(☆流山市)/流山駅東口10:37→11:06柏駅西口11:20→11:33大木戸→徒歩2.2km→道の駅しょうなん(☆柏市)

流山駅から柏駅へ直行するバスがあり、柏駅に11時すぎに着いてしまいます。実際ルートで一行は、江戸川台駅や柏の葉キャンパス駅を経由して柏駅に12時11分に着いていますので、それより1時間も早く着くのです。

柏駅での接続も良く、柏市の陣(道の駅しょうなん)には、実際ルートより1時間20分ほど早く着けるでしょう。要するに、河合チームは流山駅で乗るべきバスを間違えたのです。

一行が歩いて到達した流山駅は西口で、江戸川台駅への京成バスが発着しています。一方、柏駅へのバスは東口で、東武バスです。

河合チームは流山駅西口に歩いて到着後、すぐにバスに飛び乗りましたので、情報収集の時間がありませんでした。しかし、流山駅にバスで到着すれば、西口発着のバスがしばらくありませんので、情報収集のため歩道橋を渡って東口を確認する可能性が高く、30分後に出発する柏駅行きを見つけるのは容易だったでしょう。

つまるところ、南流山駅から流山駅まで歩いて、一本早い江戸川台駅行きのバスに乗れたことは、いっけん河合の「ファインプレー」に見えますが、じつは「記録に残らないエラー」ではなかったか、ということです。

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我孫子からタクシーを使わなかったら

実際ルートに戻ります。河合チームは柏市の陣を確保した後、歩いて手賀沼を渡り我孫子市に入り、すぐ近くにあった我孫子市の陣(鳥の博物館)を獲得します。しかし、そこから東の栄町方面へ向かうバスがないと知り、タクシーを使いました。結果的に、印西市の木下駅まで乗り通し、初日に6,000円を投じる大勝負に出たことになります。

仮にここでタクシーを使わない場合は、どのような乗り継ぎになるのでしょうか。鳥の博物館の出発時刻が番組ではっきりわからなかったのですが、木下駅の到着時刻から逆算すると15時15分頃のようです。タクシーを呼ぶのに30分かかるとみて、14時45分に鳥の博物館を出発できたと仮定します。

▽1日目
鳥の博物館(☆我孫子市)14:45→徒歩0.5km→市役所14:56→15:35湖北駅南口/湖北駅北口19:48→20:11布佐駅南口

このように、湖北駅で、東へ向かうバスが4時間待ちとなります。そのため、湖北駅からは、タクシーを使うほかありません。以下のようになります。

▽1日目
鳥の博物館(☆我孫子市)14:45→徒歩0.5km→市役所14:56→15:35湖北駅南口→タクシー8.8km、概算3,400円→木下駅→徒歩すぐ→川村商店(☆印西市)→木下駅南口17:01→17:18小林コミュニティプラザ

このように、木下駅から小林に向かうバスで実際ルートに追いつけます。このルートをたどった場合、鳥の博物館から栄町までのタクシー代を、2,000円程度節約することができたでしょう。

とはいえ、これは結果論で、東へ向かうバスがないという情報を得てタクシーを使った判断が間違っていたとまでは思えません。

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栄町へのバスに間に合うには

ところで、鳥の博物館での聞き込みで、河合は、栄町方面のバスについて「我孫子駅からのバスが時刻的にない」という表現をしました。「時刻的にない」というのは、上記の「湖北駅→布佐駅」のバスを指すと思われます。湖北駅発19時48分の前は14時30分ですが、これには間に合わないということです。

では、湖北駅14時30分発に間に合う方法はなかったのでしょうか。先ほどの流山→柏直行バスを利用した場合、以下のような可能性が考えられます。

▽1日目
松戸駅09:00→09:26南流山駅南口/南流山駅北口09:56→10:04流山駅(☆流山市)/流山駅東口10:37→11:06柏駅西口11:20→11:33大木戸→徒歩2.2km→道の駅しょうなん(☆柏市)→徒歩1.3km→鳥の博物館(☆我孫子市)→徒歩0.6km→市役所13:29→14:09湖北駅南口/湖北駅北口14:30→14:53布佐駅南口/布佐駅東口15:08→15:22木下駅南口

大木戸に到着後、合計で4kmあまりの徒歩と、2箇所のチェックポイントのミッションを1時間56分でこなせば、我孫子市役所13時29分発のバスに間に合い、木下駅までバスがつながります。

2箇所のミッションはそれほど時間のかかるものではありませんでしたし、博物館での情報収集の機会もありますので、この乗り継ぎは不可能ではなさそうです。実現できていれば、1日目のタクシー代6,000円をまるまる浮かせることができました。そうすれば、2日目にタクシーを駆使した機動的な展開ができていたかもしれません。

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山武市へ抜けていたら

実際ルートに戻ります。2日目、河合チームは成田市の陣(成田山表参道)をきっちりおさえた後、八街市へ南下して太川チームを脅かします。そこから東金市や山武市方面へ抜けて、太川チームの進路を塞ぐという方法もありそうですが、河合は成田市へ戻る選択をしました。通知を出さずに行方をくらます「隠れ身の術」と表現しています。

では、仮に、八街駅から東金市や山武市方面へ抜けていたらどうなっていたでしょうか。

河合チームが八街駅に戻ったのは09時40分。東金市行きのバスは09時20分発が行ったばかりで、次が12時30分なので使えません。乗れるとしたら、山武市方面へ向かう成東行きでしょう。

▽2日目
成田駅→成田山表参道(☆成田市)→京成成田駅06:22→07:00八街駅→徒歩1.8km→深澤ピーナッツ(☆八街市)→徒歩1.8km→09:40八街駅10:25→11:00成東駅

このように、11時に成東駅に到着できます。いっぽう、太川チームが成東駅近くの東町バス停に到着したのが10時41分。そこから歩いて成東駅に10時50分頃には着いていたはずです。つまり、河合チームが成東駅に着く頃、太川チームはタクシーで山武市の陣(なごみ苺苑)に向かっていたでしょう。

要は、河合チームが八街駅からバスで山武市へ向かった場合、太川チームの後手を踏むことになるわけです。おそらく、河合は八街駅で、その可能性を察したのでしょう。というのも、時刻表をひもとくと、河合が八街駅にいた頃に、太川は東金市の陣(八鶴湖)を獲得しており、その知らせが届いていたはずだからです。

その情報を踏まえて、河合は「山武市合戦」の勃発を予期し、敗退を危惧したため、成田市へ戻って香取市方面へ転進したのかもしれません。「隠れ身の術」は、危機を察して逃れるための技法だったのではないか、ということです。

この転進は奏功し、河合は香取市、銚子市へと長征しながら、見事ゴールまで乗り継ぎました。

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ゴールへの道筋

ここで、両チームの最終局面の道筋を確認しておきましょう。

河合チームは、銚子市の陣(あづま寿司)を大急ぎでおさえて、銚子駅15時13分発のバスに乗りました。この次は17時13分発でしたので、乗り遅れていたら太川チームの先着を許していたでしょう。

逆に15時13分より早い時間帯のバスに乗ることは、どうみてもできなかったので、銚子市を通るルートを選択した範囲では、河合チームはベストを尽くしたといえます。

一方の太川チームは、前述したように八日市場駅から旭駅へ直行していたら、一本前のバスに乗れていました。

両チームの実現可能なゴールへの乗り継ぎをまとめると、次のようになります。

▽太川チーム
旭駅14:23→15:17灯台入口
旭駅15:55→16:40灯台入口(実際ルート)

▽河合チーム
銚子駅15:13→15:35灯台入口(実際ルート)
銚子駅17:13→17:35灯台入口

このように、太川チームが最善を尽くして旭駅14時23分発のバスに乗ってしまえば、河合チームとしては為す術がありませんでした。しかし、ルイルイは次善の到着時刻となったので、最善を尽くした河合チームが先着し、旭市の陣を得たわけです。この最後の陣が勝敗を決しました。

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まとめてみると

全体をまとめてみると、両チームとも相手の進路を塞ぐような奇襲攻撃はカゲを潜め、お互い手堅い勝負に徹していたように感じられます。

なかでも太川チームの1日目は、一つ一つの陣を確実に押さえ、堅実に陣を広げていきました。しかし、2日目に千葉市の陣を諦め、多古町の陣が空振りに終わった結果として、終盤に伸び悩みました。

対する河合チームは、初日の流山で「記録に残らないエラー」をしたり、我孫子からタクシー代を大盤振る舞いしたものの、2日目は勝算の立たない戦いを仕掛けず、ミッションも短時間で済ませて、難しい乗り継ぎを実現しました。早起きして八街市の陣を奪ったことも効果的でしたし、何よりも、通過した市町村で陣の取りこぼしがなく、ゴールの陣もおさえたことで勝利をたぐり寄せたといえます。

端的にいえば、ルイルイが千葉市の陣を一生懸命探すか、多古町に寄り道しなければ、最低限引き分けに持ち込めた勝負でした。今回はルイルイの小さなミスの積み重ねが、勝利を逃す要因になったように感じられます。

これで、通算の対戦成績は3勝3敗1分けの五分となりました。熟練のルイルイに対し、河合もバス旅に慣れてきて、その結果がスコアに表れてきた印象です。次回も楽しみです。(鎌倉淳)

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