「ローカル路線バスの旅 陣取り合戦」第14弾 冬の東北決戦を分析する。二兎を追うものは…

道の駅は早い

「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」第14弾が放送されました。太川陽介が率いるチームと河合郁人が率いるチームが、岩手・青森県内の市町村を陣に見立てて競いました。

乗り継ぎで気になった部分を検証してみましょう。なお、以下はネタバレ100%です。あらかじめご了承ください。(文中敬称略)

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市町村を取り合う

「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」は、ローカル路線バスを乗り継いで「陣」に見立てた各市町村の名所・名物を体験し、その数を競うテレビ番組です。

その第14弾が2024年2月28日にテレビ東京系列で放送されました。対決したのは、ルイルイこと太川陽介が率いるチームと、河合郁人が率いるチームです。

太川チームには、元宝塚歌劇団雪組の紺野まひると、Wエンジンチャンカワイが参加。河合チームには、スピードスケートで平昌オリンピック金メダルの高木菜那と、元読売ジャイアンツ、宮本和知が加わりました。

どちらのチームも使っていいのはローカル路線バスのみ。ただし、両者とも1万円までタクシーを利用できます。

スタートは岩手県盛岡市の盛岡駅。ゴールは青森県八戸市の櫛引八幡宮です。岩手・青森両県の72市町村を「陣地」に見立て、1泊2日でどちらのチームがより多くの陣地をとれるかを競います。ゴール時刻は19時までで、より多くの陣を確保したチームが勝ちです。

今回は「村」を取ると2ポイントとなる「村ボーナス」が設定されました。

ローカル路線バスの旅陣取り合戦第14弾
Ⓒテレビ東京

水バラ ローカル路線バス乗り継ぎ旅陣取り合戦 第14弾 冬の東北決戦!盛岡~八戸
【出演】太川陽介・紺野まひる・チャンカワイ(Wエンジン)・河合郁人・髙木菜那・宮本和知
【放送日】2024年2月28日(水) 18時25分~21時00分(テレビ東京系列、見逃し配信あり)

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太川チームの実際ルート

まずは、両チームが実際に旅したルートをおさらいしてみましょう。時刻表上の定刻をわかる範囲で確認しました。番組ではっきり示されなかった時刻や距離、経路は、筆者による推定です。ロケは日曜日から月曜日にかけて行われたようなので、1日目が日曜ダイヤ、2日目が平日ダイヤに依拠しています。

最初に太川チームのルートです。☆は獲得した「陣」の市町村名です。★は空振りです。

▽1日目
盛岡駅前09:10→11:24龍泉洞前(☆岩泉町)12:37→13:43大牛内→徒歩7.5km→北川食堂(☆☆田野畑村)→タクシー15.7km(6,010円)→中村貢商店(☆☆普代村)→徒歩0.3km→普代駅→タクシー9.2km(2,910円)→17:40えぼし荘(☆☆野田村)18:52→19:06陸中野田駅

▽2日目
陸中野田駅06:37→07:40久慈駅前07:55→08:45陸中大野/大野09:04→10:22ラピア10:33→11:39中央(五戸)→徒歩0.2km→ミートプラザ尾形(☆五戸町)→中央13:19→1415八戸中心街ターミナル八日町/中央通り15:02→15:39赤羽→徒歩0.2km→道の駅はしかみ(★階上町)→赤羽16:35→17:28ラピア17:32→17:59櫛引八幡宮前

2日目、道の駅はしかみを訪れたところ、チェックポイント・道の駅はしかみのレストランでラストオーダーに間に合わず、そのまま折り返す形となりました。最終局面の乗り継ぎは放送では明らかにされていませんが、時刻表をたどると、櫛引八幡宮前のバス停に18時ごろの到着だったようです。

太川チームが獲得した陣は、岩泉町、田野畑村、普代村、野田村、五戸町の5箇所8陣でした。

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河合チームの実際ルート

つづいて、河合チームの実際ルートです。

▽1日目
盛岡駅前09:12→10:22大町→徒歩0.1km→肉のふがね(☆岩手町)→岩手町大町11:07→11:59葛巻→まちの駅くずまき(☆葛巻町)→葛巻14:49→15:50久慈駅前15:56→タクシー7km→つりがね洞(☆久慈市)→タクシー7km(計4,000円)→久慈駅前16:40→17:21道の駅おりつめ→徒歩0.7km→小笠原菓子舗(☆☆九戸村)→タクシー約17km、5,910円→徒歩4.5km→金田一温泉きたぐに旅館(☆二戸市)

▽2日目
金田一温泉郷07:35→08:15軽米病院08:57→10:13ラピア10:37→11:27虎渡→徒歩0.7km→スイーツガーデンKUDO(☆南部町)→徒歩2.5km→南部町役場12:52→13:13三戸町役場前→徒歩1km→三戸城(☆三戸町)→徒歩1km→三戸町役場前15:42→16:32櫛引八幡宮前→16:45櫛引八幡宮(☆八戸市)

河合チームは2日目の最終局面で、三戸町から田子町へ向かうことも検討しましたが断念し、櫛引八幡宮へ急ぐ選択をします。放送ではゴール時刻が16時45分とされていましたので、三戸町役場を15時42分のバスで出発したとみられます。三戸には2時間半も滞在したことになり、検討に時間を要したことがうかがえます。

最終的に、河合チームが獲得したのは、岩手町、葛巻町、久慈市、九戸村、二戸市、南部町、三戸町、八戸市の、8箇所9陣でした。

「陣取り」では、訪問しなかった陣の位置が不明なので、全面的な検証はできません。ここでは、番組で気になった場面について検証してみます。

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岩泉から先に別ルートはないか

最初に太川チームの検証です。盛岡から岩泉方面へのバスを選択し、その後、海沿いの三つの村を狙う「サンソン作戦」を展開しました。しかし、沿岸三村のバスは日曜運休が多く、なかなか先へ進めません。

では、龍泉洞から他のルートはないのでしょうか。検討したところ、平日なら、5kmほど歩いて葛巻町に抜けるルートがあります。

龍泉洞→岩泉病院→上国境→徒歩4.9km→馬淵小学校前→葛巻

しかし、このルートも日曜日はバスが運休です。いろいろ調べてみましたが、日曜日の場合、龍泉洞まで行ってしまったら、実際ルートのように海沿いに抜けるしか方法はなさそうです。

要するに、田野畑村から野田村へはタクシーと徒歩で乗り切るほかなく、太川チームが初日にタクシー代をはたいて陸中野田まで到達したのは、最善手といってよさそうです。

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チャン案は採用できたか

2日目の朝、チャンカワイが、久慈から軽米を獲りに行く「山ルート」を提案します。これに対し、ルイルイは、河合チームに先手を取られると予想して却下しました。

しかし、現実には、河合チームは軽米町の陣に立ち寄りませんでしたので、向かっていれば、太川チームが軽米の陣を取ることができたはずです。その場合、どのような乗り継ぎになるのでしょうか。ルートは2つあります。

▽2日目
陸中野田駅06:37→07:40久慈駅前07:55→08:45陸中大野13:25→13:56軽米新町

▽2日目
陸中野田駅06:37→07:40久慈駅前11:35→12:36福岡川又/岩谷橋12:40→13:32軽米新町

いずれも、久慈から軽米は接続が悪く、うまく乗り継げません。したがって、チャン案は事実上、実現不能のようで、ルイルイの判断は間違っていなかったことになります。

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種市海岸に向かっていたら

久慈駅から大野行きのバスに乗った太川チーム。洋野町に入ったところで、同町のチェックポイントが種市海岸にあることを知ります。方角が違うとして諦めましたが、もし向かっていたらどうなっていたでしょうか。

▽2日目
久慈駅前07:55→08:45陸中大野11:40→12:17種市小→徒歩0.7km→種市海岸喜利屋(☆洋野町)→種市駅13:29→13:39角浜→徒歩6.6km→道の駅はしかみ(☆階上町)→赤羽15:29→16:22ラピア17:32→17:59櫛引八幡宮前

大野で3時間バスを待てば種市へ向かうことはできます。その後、6km余を1時間20分程度で歩き切れれば、道の駅はしかみのラストオーダー(15時)に間に合います。実現できていれば、2日目に2陣を得て計9陣となり、同点でゲームを終えていました。

ただ、道に迷わず6kmを1時間20分で歩くのは難しいでしょう。したがって、種市に向かっていれば引き分けに持ち込めた、という話とは言い切れません。となると、洋野町の陣を諦めた判断が間違っていたとはいえません。

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先に階上町の陣に向かっていたら

大野から八戸に向かった太川チームは、途中で階上町を経由し、陣の位置を知ります。チャンは「場所を知っているのだったら確実に取りに行くというのは?」と提案しますが、太川は「1個取りに行くだけではもったいない」として取り合いませんでした。

仮にここで、先に階上町の陣に向かう判断をしていたら、どうなっていたでしょうか。おそらくはバスを終着のラピアまで乗らず、中心街ターミナルで降りて、階上へ向かっていたでしょう。その場合は、以下のようになります。

▽2日目
大野09:04→10:06八戸中心街ターミナル三日町/中央通り10:38→11:22階上郵便局前11:41→11:45赤羽→徒歩0.2km→道の駅はしかみ(☆階上町)→赤羽13:09→13:46八戸中心街ターミナル三日町/六日町14:03→14:59中央→徒歩0.2km→ミートプラザ尾形(☆五戸町)→中央15:39→16:31桜木町16:50→17:04櫛引八幡宮前

2日目に2陣を得て、計9陣。引き分けに持ち込めていたはずです。実際は1陣しか獲れませんでしたので、二兎を追って一兎しか得られない、という結果になっています。

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十和田市へ向かっていたら

実際ルートに戻ります。太川チームはラピアに到着後、河合チームに遭遇。河合が三戸町に向かったのを見届け、五戸町から十和田市を目指します。

五戸の中央バス停で降車し、11時50分発の十和田市行きバスを発見。乗り継げるタイミングでしたが、何かを勘違いしたのか、五戸町の陣を優先してしまいました。結果として、十和田市の陣を取れなくなってしまいました。

仮に中央バス停で十和田市に向かっていたらどうなっていたでしょうか。

▽2日目
ラピア10:33→11:39中央(五戸)11:50→12:17十和田市中央(☆十和田市)12:44→13:11中央→ミートプラザ尾形(☆五戸町)→中央14:04→15:00八戸中心街ターミナル八日町/六日町15:20→15:38櫛引八幡宮前(☆八戸市)

十和田市の陣がどこにあるかは不明ですが、十和田市中心部にあればクリアすることはできたでしょう。さらに五戸町の陣を1時間弱で片づければ、櫛引八幡宮前に15時半頃にゴールできます。河合チームより先着ですので、ゴールの陣を含め2日目に計3陣を得て、計10陣となります。河合チームは8陣にとどまり、2陣の差を付けての勝利となっていました。

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おいらせ町ルート

ところで、太川チームは、大野からのバスをラピアまで乗り通しました。ただ、八戸のバスターミナルは中心街にあり、ラピアまで行くとやや大回りです。仮に中心街ターミナルで降りていたら、次のような乗り継ぎも可能でした。

▽2日目
大野09:04→10:06八戸中心街ターミナル三日町/六日町10:42→12:13十和田中央(☆十和田市)12:44→13:11中央→ミートプラザ尾形(☆五戸町)→中央14:04→15:00八戸中心街ターミナル八日町/六日町15:20→15:38櫛引八幡宮前(☆八戸市)

八戸からおいらせ町を経由して十和田中央に向かうルートです。十和田中央で30分以内にミッションを終えれば、2日目に3陣が得られ、計10陣です。

おいらせ町の陣をイオンモール下田と仮定し、知って降りた場合は、以下のようになります。

▽2日目
大野09:04→10:06八戸中心街ターミナル三日町/六日町10:42→11:33イオンモール下田(☆おいらせ町)13:03→13:33十和田市中央(☆十和田市)14:35→15:51桜木町16:10→16:23櫛引八幡宮(☆八戸市)

16時半に櫛引八幡宮に到着すれば、八戸市の陣も得て、2日目3陣となまります。

八戸中心街ターミナルから下田(おいらせ町)方面に向かえば、十和田市のほか、六戸町への展開も可能です。仮定に仮定を重ねることになるので詳細は略しますが、八戸から五戸を目指すよりは優れた選択と感じられます。

下田方面へのバスはラピアからは出ておらず、中心街ターミナルの発着です。太川チームがラピアへ向かったのは、大野からのバス運転手のアドバイスに拠りますが、太川が「八戸からいろんなルートに行きたい」と尋ねたことに対する回答でした。

仮に「十和田市へ行くならどこで乗り換えか」と尋ねたら、中心街ターミナルでの乗り換えを勧められていたかもしれません。小さなやりとりの綾が、大きなチャンスの逸失につながったように感じられる場面でした。

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「貯金」を活かしきれず

太川チームの乗り継ぎをまとめると、1日目は満点といっていい出来でしたが、2日目の判断が裏目に出て、1日目の「貯金」を活かしきれませんでした。

ただ、階上町の道の駅のレストランのラストオーダーが15時というのは、さすがに想定外という気もします。

そもそもの話をすれば、階上町の陣を狙わずにゴールへ直行していたら、八戸市の陣を得られ、9対8で太川チームの勝ちでした。それはルイルイもわかっていたでしょう。しかし、番組がつまらなくなるので、演者としては失格です。

その点、「最後まで行ける限り陣を狙う」のは暗黙のルールとなっていて、「ゴール直行」は選択肢として採りづらかったとみられます。

つづいて、河合チームの検証です。

【続きはこちら】
「ローカル路線バスの旅 陣取り合戦」第14弾の正解ルートを考える【2】

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