大阪モノレール、事業費8割増の衝撃。開業も延期、2033年頃に

物価高と軟弱地盤で

大阪モノレールの瓜生堂延伸の事業費が8割増となります。開業も延期となり、2033年ごろにずれ込む見通しとなりました。公共工事で事業費の上振れは珍しくありませんが、8割増というのは衝撃的です。

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門真市~瓜生堂間8.9km

大阪モノレール線本線は、大阪空港~門真市間21.2kmを結ぶ路線です。さらに門真市~瓜生堂間(仮称)間8.9kmの延伸工事を進めています。

延伸区間では、新たに松生町、門真南、鴻池新田、荒本、瓜生堂の5駅(いずれも仮称)を設置。大阪メトロの長堀鶴見緑地線やJR学研都市線、近鉄けいはんな線、近鉄奈良線に接続します。

新設はもともと4駅の予定でしたが、2021年に松生町駅の設置に関係者で基本合意し、のちに計画に加えています。

大阪モノレール

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開業目標は2033年ごろに

開通すれば、大阪空港と近鉄奈良線までが一本で結ばれます。旅行者にも期待の高い延伸計画で、開業予定は2029年度とされていました。

ところが、大阪府は2024年4月25日に、開業目標が2033年ごろにずれこむと発表。瓜生堂駅付近の地盤が想定より軟弱であることが判明し、駅舎の安全確保のため、基礎工法を変更しなければならなくなったためと説明しています。

大阪モノレール瓜生堂延伸地図
画像:大阪府建設事業評価審議会資料

 

83%の大幅増

同時に事業費も見直し、インフラ部分で約650億円を増額します。従来は786億円と見積もられていましたので、合計約1430億円となります。割合としては約83%の大幅増です。

事業費増の理由は、物価上昇が約530億円、用地補償費の増加が約30億円、基礎構造の変更など設計変更が180億円です。駅舎の見直しなどで約90億円を削減したものの、総額では大幅な事業費増となりました。

これとは別に、車両費などインフラ外部で約327億円を見込んでいます。こちらも上振れする可能性があります。

大阪モノレール事業費増
画像:大阪府報道発表資料

 
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埼玉高速、アストラムラインでも

昨今の物価上昇は激しく、公共事業費の上振れは珍しくありません。

埼玉高速鉄道の岩槻延伸では物価上昇により事業費が1.5倍程度に膨らむことがわかり、事業着手の延期に追い込まれました。人手不足で事業期間も7年から18年に大幅に伸びることが明らかになっています。

また、広島のアストラムラインでは西広島延伸工事の事業費が1.3倍に膨らみ、開業時期を6年程度遅らせることを公表しています。

今後の新線建設に影響も

そうした状況でみれば、大阪モノレールでも事業費増は避けられなかったとみられますし、4年の延期もやむを得ない事情でしょう。一定の利用者が見込める路線ですので、事業中止もなさそうです。

ただ、工事がある程度進んだ段階で事業費が8割増というのはなかなかなく、驚きは隠せません。

今後の鉄道新線建設はこうした事業費を前提に試算がおこなわれます。したがって、今後の新線建設の採算性調査には影響を与えそうです。(鎌倉淳)

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