神戸市の須磨海浜水族園の建て替え・リニューアル工事が着工しました。「神戸須磨シーワールド」と名付けられた新水族館の詳細を見て行きましょう。
須磨海浜水族園をリニューアル
須磨海浜公園は2019年に再整備方針が決定し、2022年1月11日に建設工事に着手しました。
目玉となるのは、須磨海浜水族園のリニューアルです。新たな水族館の仮称は「神戸須磨シーワールド」。水族館の新たな事業者がサンケイビルに決まり、同社が千葉県の鴨川シーワールドも運営していることから、ネーミングをあわせるようです。
神戸須磨シーワールドの目玉は、鴨川での飼育技術を活かしたシャチの展示です。日本国内でシャチを展示している水族館は、鴨川シーワールドと名古屋港水族館のみ。神戸須磨シーワールドで展示を開始すれば、西日本唯一となります。

須磨海浜公園再整備の概要
最初に、須磨海浜公園全体の再整備の全体像を見ていきましょう。平面図は以下の通りです。

水族館施設は、既存のバス回転場付近に立地します。水族館の中心に「海のみえる丘広場」を据え、左右に展示棟を配置するレイアウトです。
展示棟は、広場の東側にシャチ棟を、西側にイルカ棟と魚類・アシカ・ペンギン棟を配置します。シャチ棟の前にエントランス棟があり、イルカ棟の前にレストラン棟を設けます。
水族館の東側には「神戸須磨パークス&リゾーツホテル」を配置。西側は「松の杜ヴィレッジ」として、知育・文化・アウトドア施設などを分散配置します。公園西端には「コミュニティ広場」という3000平米の多目的広場を設けます。
シャチ棟
では、水族館の展示計画を見て行きましょう。
目玉はなんと言っても、シャチ棟です。オルカスタジアムでは、西日本で唯一となるシャチのパフォーマンスを実施します。

メインプールのほか、サブプール、ブリーディングプール、メディカルプールを備えた広々としたスタジアムです。
シャチを見ながら食事ができる「オルカレストラン」や、カフェ併設の「オルカテラス」もオープン。シャチに関する教育ゾーンとして「オルカラボ」も設けます。

イルカ棟
イルカ棟にも大規模なスタジアムが設けます。イルカのスピーディーな運動能力を発揮できるパフォーマンスを実施。独自の演出手法を用いた「スペシャル・ナイトパフォーマンス」もおこないます。

イルカと直接触れあえる「イルカビーチ」も設けます。他の水族館にはあまりない施設になりそうです。

1階にはイルカの生態を間近で観察できるホールを設けます。イルカを観察しながら休憩できるスペースです。
近海・淡水展示
魚類・アシカ・ペンギン棟は、1~3階が魚類展示エリア、3~4階が海獣類・ペンギン展示エリアとなります。
エントランスは3階です。右手から入ると、六甲水系や瀬戸内海の生態系を展示する「ローカルライフ」が始まります。いわゆる近海・淡水展示です。
3階平面図

館内に順路は設けませんが、赤い点線が主要動線です。「ローカルライフ」は、瀬戸内海の自然や神戸・須磨の原風景に想いを馳せる空間となります。

3階には海獣コーナーもありますが、それは後回しにして2階に降ります。2階にもローカルライフの展示が続いていて、干潟の生物などがあります。
遠海展示
2階ではローカルライフが終わると、「クラゲライフ」、さらに太平洋の「コーラルライフ」と続きます。いわゆる遠海展示です。
2階平面図

コーラルライフでは、ヤシやアダンなどの植栽や擬岩を配して、サンゴ環礁の自然を再現します。カラフルな熱帯魚類も紹介します。

コーラルライフには、メインとなる「沖合水槽」を設けます。水量は700トンです。近年の水族館は1,000トン以上の大水槽を備えることが多く、大阪・海遊館の大水槽は5,400トンもありますので、それに比べると小ぶりです。

メイン水槽の周囲にはスロープを螺旋状に配し、砂浜から水中、海底へと下る水中散歩をするような演出です。散歩をしながら、「コーラルライフ」は1階に続きます。
1階平面図

イベントコーナーでの企画展示では、実験コーナーや、タッチングプールを設置。タッチングプールでは、エイやサメなどに触れたり、給餌ができます。

アザラシ、アシカ、ウミガメ
1階からエスカレーターで再び3階にのぼると、海獣コーナーに出ます。
アザラシ、アシカ、ウミガメの水槽が並びます。「タートルポンド」「シールアイランド」と名付けられています。

3階平面図

さらに、最上階の4階に上がると、それぞれの陸場も見られます。
4階平面図

ペンギンは、マゼランペンギンを展示。草原の丘の地中に巣穴を設け、ペンギンが本来暮らす環境を再現します。広い水槽を備えるほか、ペンギンの住処に足を踏み入れて間近で観察できるコーナーも設けます。

「タートルビーチ」では、岩山をのぼるスロープに沿ってウミガメのプールを設けます。

入館料
「神戸須磨シーワールド」の入館料は、正規料金が1日券大人3,100円、小中学生1,800円、幼児1,800円、シニア2,500円となります。神戸市の小中学生は、年1回に限り500円で入場できるプログラムを用意する計画もあります。

これまでの料金が大人1,300円、小中学生800円、幼児500円(現在は営業縮小で700円、400円、300円)なので、それに比べると大幅な値上げとなります。シャチを展示している鴨川シーワールド(大人3,000円)と同水準で、海遊館(大人2,400円)に比べても高額です。
シャチ、イルカと二つのパフォーマンスを擁するうえに、魚類や海獣展示も充実させるとなると、この程度の入館料になるのでしょう。
展示内容からも、料金からも、これまでの「須磨海浜水族園」とは一線を画した新たな大型マリンパークとなりそうです。
リニューアルに向けて、2023年5月に現在の須磨海浜水族園が営業を終了します。神戸須磨シーワールドとしてオープンするのは、2024年春の予定です。(鎌倉淳)