東海道新幹線「上級グリーン車」検討へ。グランクラスは西へ?

貸切列車でイベント対応も

JR東海が、東海道新幹線で「上級グリーン車」を検討することを明らかにしました。JR東日本のグランクラスのような車両が、西へ向かって走る日が来るのでしょうか。

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経営体力の再強化

JR東海は、2022年10月31日の社長会見で、「最新の技術を活用した経営体力の再強化」と題する新方針を発表しました。JR東海が「鉄道の将来像と主な取組み」について取りまとめたものです。

注目は「多様なニーズに応じた高付加価値サービス」という項目で、「新幹線の新たな座席のあり方」について検討する方針を示したことです。

具体的には、「グリーン車の上級クラス座席や、ビジネス環境を一層高めた座席の設定」などを検討します。

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グランクラスが東海道に?

現在の東海道新幹線は、普通車とグリーン車の2クラス制度です。かつては100系にグリーン個室を備えていましたが、すでに廃止。近年は、大量輸送を最優先にしたシンプルな座席構成を維持してきました。

そのため、JR東海が「上級グリーン車」の検討を表明したことは、ちょっとした驚きを以て受け止められています。

「上級グリーン車」の詳細は明らかではありません。真っ先に思い浮かぶのは、JR東日本の「グランクラス」のような座席でしょう。JR東海がJR東日本のグランクラスをそのまま導入するとは思いにくいですが、現在のグリーン車よりゆったりとした座席クラスという点では、グランクラスに似たシートが導入される可能性はあります。

VIPの利用が多い東海道新幹線の性格を考えると、個室の復活を期待する方もいるでしょう。座席の多様性という点では求められる形態です。

導入時期などについては明らかにされていません。リニア大阪開業後、東海道新幹線の輸送力に余裕が生じてからの構想にも感じられますが、いま発表したということは、リニアを待たずに次世代の新形式で検討するのでしょう。

新型コロナで生活様式が変わったのを受けて、東海道新幹線の利用者が元に戻らないという前提で考えられた案と言えそうです。

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貸切列車でイベント対応も

新方針では、上級グリーン車と並んで「駅や新幹線車内のビジネス環境整備の推進」も掲げられました。具体的には、駅でのワークスペースや車内の「ビジネスブース」のように、乗車前後を通じシームレスに仕事ができる環境を充実させます。

さらに、「新幹線車内の新しい使い方」として、新幹線車両の団体貸し切りで、車内イベントの開催に対応する方針も明らかにしました。オリジナルの車内装飾や車内放送も許可したうえで、モニタなどの機材も貸し出すことで、さまざまなイベントを実施できるようにします。

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半自動運転も視野

安全面では、新幹線のすべての駅に可動柵を整備します。あわせて半自動運転機能を導入し、運転士の業務を支援します。

半自動運転では、運転士は先頭運転台に乗務し手動で発車しますが、運転中の速度制御と停車は自動化されます。

運転業務が軽減されることで、運転士は駅発着時のホーム上の安全確認やドアの開閉も行います。これまでドア開閉業務を行っていた車掌は、車内での利用者対応に専念することになります。

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在来線特急のチケットレス化

このほか、在来線と新幹線ともに、ネット予約・チケットレス化を拡大します。スマートフォンでの指定席券予約や定期券購入ができるサービスを整備し、在来線特急もチケットレス乗車ができるようにします。

交通系ICカードTOICAについては、JR東海全線で利用できるようにサービスを拡大します。

出札関連では、「サポートつき指定席券売機」や「集中旅客サービスシステム」といった遠隔での案内サービスを拡充します。これにより、早朝・深夜時間帯でもきっぷを購入できる駅が増えます。ただし、駅係員の配置は「適正化」する方針で、駅窓口の営業時間が縮小され、無人駅は増えそうです。(鎌倉淳)

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