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JR北海道「黄線区」の行方。上下分離を自治体は呑めるのか

骨格路線の廃止が焦点に

JR北海道が、単独では維持困難としている8線区について、上下分離方式などを提案し、沿線自治体と協議に入ることを発表しました。2026年度中に、区間ごとに協議を進め、抜本的改善策を取りまとめたいとしています。自治体は提案を呑めるのでしょうか。

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路線維持に向けた仕組み構築

JR北海道の綿貫泰之社長は、2026年4月15日、同社単独では維持することが困難な線区について、「路線維持に向けた仕組み構築に関する考え」を発表しました。

対象となるのは、JR北海道が2016年11月に発表した、単独では維持することが困難な線区のうち、輸送密度200人以上2000人未満の「黄線区」です。

具体的には、釧網線、根室線滝川~富良野間、同釧路~根室間(花咲線)、富良野線、石北線、宗谷線名寄~稚内間、室蘭線苫小牧~岩見沢間、日高線苫小牧~鵡川間の8線区が該当します。

JR北海道黄線区、赤線区
JR北海道「単独で維持することが困難な線区について」(2016年11月)より

 

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4つの協議項目

JR北海道はこれらの線区について、すでに地域関係者との協議を開始しています。

おもな協議項目は、「輸送体系のさらなる見直し」「持続的な運行に必要となる担い手の確保(踏切除雪、駅業務の自治体への移管など)」「鉄道資産の自治体への譲渡による固定資産税の負担軽減」「上下分離方式の検討」の4つです。

簡単にいえば、減便、業務移管、減税、上下分離を求めました。

冬の釧網線

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更新費用を確保できない

なかでも最大のトピックは、上下分離でしょう。JR北海道は、これら8線区の鉄道施設を自治体に譲渡して、維持・更新を自治体の費用でまかなうことを求めています。

理由として、老朽化した土木構造物の更新などの費用を確保できないことなどを挙げています。橋梁などの鉄道施設を更新していくには巨費が必要ですが、JR北海道の経営状況では、とても資金を調達できないということです。

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総営業距離の4割

とはいえ、上下分離となると、自治体にとっても簡単な話ではありません。8線区の営業キロの総計は925kmにおよび、JR北海道の総営業距離の約4割に相当します。合計の営業損失は年間148億円に達します。

ふつうに考えれば、財政力の乏しい北海道の市町村が、長大なローカル線を維持するだけの財源を捻出するのは無理でしょう。北海道としても、全路線となれば相当な負担で、簡単に呑める話ではありません。

とはいえ、8線区の多くは北海道の「骨格路線」とも称される北海道の基幹的なローカル幹線で、貨物列車が走っている路線もあります。廃止となれば、貨物輸送に支障が生じますし、急増するインバウンドの足が失われ、観光産業への影響も生じます。

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有識者会議の提言

また、国交省の有識者会議は4月に公表したとりまとめで、基幹的な鉄道ネットワークは国の責任で維持すべきとしたうえで、「幅広い受益者から負担を収受する仕組み」の導入を提言しました。

ユニバーサルサービス料などで財源を作り、ローカル幹線の支援に充てるべき、という趣旨です。

こうした提言の直後に、北海道の「基幹的な鉄道ネットワーク」を廃止するわけにもいきません。すなわち、国が新たな財源に関する制度設計に着手し、多くの路線の維持を図ることになるのでしょう。

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監督命令に基づき

JR北海道は、2026年度末までに、線区ごとの改善方策をとりまとめる方針を示しました。この期限は、国の監督命令に基づいたものであることを強調しています。

国土交通省は2024年に、JR北海道に対する監督命令で、「令和8年度末までに、線区ごとに事業の抜本的な改善方策を確実にとりまとめる」ことを命じているからです。

ただ、JR北海道は事実上の国営企業です。国が国営企業に対して監督命令を出し、上下分離を促す一方で、国が主催する有識者会議では「基幹的な鉄道ネットワーク」を維持する方針を示し、制度づくりが始まるわけです。歩調を合わせているとみることもできるでしょう。

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国が支援策を示すか

自治体としては、ない袖は振れないので、現行の制度のままで、2026年度末までに、上下分離に同意することは不可能でしょう。国が決定する新制度の行方を見守るほかなさそうです。

あくまでも筆者の予想ですが、国が「基幹的な鉄道ネットワーク」の基準を示し、その支援策を固め、それに基づいて、沿線自治体が判断する、という形になるのではないでしょうか。

8線区がすべて基幹的な鉄道ネットワークに該当するわけでもなさそうなので、その基準が焦点となりそうです。つまり、最終的に路線の存廃を決めるのは、国ということになるのかもしれません。(鎌倉淳)

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