「スマートEX」時代の新幹線格安利用術。割引きっぷはこう変わる

「東京~新大阪」を中心に考えてみた

東海道・山陽新幹線にインターネット予約「スマートEX」が導入されます。年会費無料の新サービスで、会員向けの割引きっぷも設定されました。新しい乗車方法が加わるのを受けて、東海道・山陽新幹線のこれからの格安利用術を研究してみました。

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スマートEXで早特チケットが買える

「スマートEX」は、JR東海とJR西日本が導入する、東海道・山陽新幹線のインターネット予約サービスです。

これまでにもインターネット予約として有料会員制サービスの「エクスプレス予約」がありましたが、「スマートEX」は年会費無料。クレジットカードがあれば無料で会員になれるため、利用対象が大きく広がります。手持ちの交通系ICカードを使えば、チケットレス乗車も可能となりました。

「スマートEX」では、これまでエクスプレス予約会員でしか使えなかった、ネット販売の早特きっぷも購入することができます。「EX早特」がその代表で、「EXファミリー早特」といった複数人割引も設定されています。

いっぽうで、「のぞみ早特往復きっぷ」が縮小されるなど、紙の割引きっぷは縮小傾向にあります。利用者としては、スマートEX時代の上手な新幹線の使い方を知っておく必要がありそうです。

東海道新幹線

「スマートEX」割引きっぷまとめ

最初に、「スマートEX」で利用できる、ネット販売専用の割引きっぷの性格を簡単にまとめておきましょう。

EX早特

「EX早特」は3日前までの予約で安くなるきっぷ。「のぞみ」も利用でき、利用時間帯制限もなく、お得さと使いやすさでは一番です。しかし、東京・新横浜~岡山・広島・博多など、山陽エリアにかかわる区間にしか設定されていません。

EX早特21

「EX早特21」は、東京・新横浜~名古屋、京阪神といった主要区間にも設定があり、価格も安いですが、利用時間帯の制限があります。乗車駅で朝6時台、昼11~15時台に限り使えます。

EXグリーン早特

「EXグリーン早特」は、東京・新横浜~名古屋、京阪神に設定されているグリーン車用チケットで、「のぞみ」は早朝しか乗れませんが、「ひかり」は終日使えます。「のぞみ」指定席に近い価格で「ひかり」グリーン車に乗れるという点ではお得なきっぷです。

EXこだまグリーン早特

「EXこだまグリーン早特」は、「こだま」のグリーン車に乗れる割引きっぷで、設定区間が多いのが魅力です。東京~静岡間くらいの短距離では割引率はそれほどでもありませんが、東京~新大阪間といった長距離では、普通席の正規価格を大きく下回る価格です。

EXのぞみファミリー早特

「EXのぞみファミリー早特」は、土休日に2人以上で利用する場合に割引になります。東京・新横浜~名古屋・京阪神間に設定されていて、価格も安く、週末のグループ旅行にはお得です。グリーン車用と普通車用があります。

EXこだまファミリー早特

「EXこだまファミリー早特」は、利用日や利用列車の制限がなく、2名以上で利用する場合に割引になります。グリーン車用と普通車用があり、普通車用はとくに破格値です。東京・新横浜~名古屋・京都・新大阪と、名古屋~京都・新大阪に設定があります。

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東京~新大阪間の割引きっぷリスト

新しく導入されたスマートEXですが、代表的な区間である東京~新大阪間で、終日「のぞみ」が安くなるといった、わかりやすい割引きっぷは設定されていません。

では、どういうチケットがあるのでしょうか。東京~新大阪間のJR販売のきっぷを一覧で見てみましょう。価格順に並べてみると、以下のようになります。価格は通常期で、回数券類は1枚あたりです。「指定席」「自由席」はそれぞれ普通席です。

東京~新大阪新幹線割引きっぷリスト
きっぷ名 対象列車・設備 価格
正規価格 のぞみグリーン席 19,230円
正規価格 ひかり・こだまグリーン席 18,920円
グリーン回数券 全列車のグリーン席 18,920円
正規価格 のぞみ指定席 14,450円
EXグリーン早特* 主にひかりグリーン席 14,400円
EXのぞみファミリー早特* のぞみグリーン席 14,400円
スマートEXサービス* のぞみ指定席 14,250円
正規価格 ひかり・こだま指定席 14,140円
スマートEX* ひかり・こだま指定席 13,940円
指定席回数券 全列車の指定席 13,690円
正規価格 全列車の自由席 13,620円
スマートEX* 全列車の自由席 13,620円
e特急券+乗車券 全列車の指定席・自由席 13,570円
★EX予約サービス* 全列車の指定席・自由席 13,370円
☆学割 のぞみ指定席 12,700円
☆学割 ひかり・こだま指定席 12,390円
EXのぞみファミリー早特* のぞみ指定席 12,340円
ぷらっとこだま* こだまグリーン車 12,000円
☆学割 全列車の自由席 11,870円
※株主優待割引* のぞみ指定席 11,560円
※株主優待割引* ひかり・こだま指定席 11,310円
EXこだまグリーン早特* こだまグリーン席 11,200円
EX早特21* のぞみ指定席 11,000円
EXこだまファミリー早特* こだまグリーン席 10,900円
※株主優待割引* 全列車の自由席 10,890円
ぷらっとこだま* こだま指定席 10,500円
EXこだまファミリー早特* こだま指定席 9,900円

★はエクスプレス予約会員のみ購入可。☆は学生のみ購入可。※は別途株主優待券2枚が必要。*は特定都区市内駅制度が使えないきっぷ。

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お得なきっぷはどれか

東京~新大阪間の新幹線には、学割を含めて27種類もの価格があります。実際は、これに繁忙期と閑散期が設定されているきっぷもありますので、さらに価格数は増えます。

「のぞみ」の普通車を使えるきっぷは限られます。東京~新大阪間で「のぞみ」に乗車できる最安値のきっぷは「EX早特21」の11,000円です。ただし、利用時間帯に厳しい制限があるのは前述したとおりです。

EXのぞみファミリー早特」も「のぞみ」を使える格安チケットで、12,340円。まずまずお得ですが、土日での複数人利用のみという制限があります。

EX予約サービス」は指定席・自由席同額で13,370円とほどほど安いですが、これはエクスプレス予約用のチケットです。エクスプレス会員になったら、いつでも買える価格で、いわば「エクスプレス予約の定価」です。

新幹線格安チケットの定番と言えば、金券ショップでばら売りされている「指定席回数券」も健在です。利用時間や列車の制限はなく、「のぞみ・ひかり・こだま」共通で使えて1枚当たり13,690円。金券ショップの相場もこのくらいです。

ただ、自由席の正規価格なら13,620円ですから、指定席にこだわらなければ自由席の正規価格のほうが回数券より安いです。自由席は「のぞみ・ひかり・こだま」が共通価格です。

株主優待割引」は、別途、株主優待券が必要です。上限である2枚使用時の価格を表記しました。株主優待券は金券ショップで2枚2,000円程度で流通しており、手に入れば回数券よりも安く利用できそうです。

株主優待割引は、回数券やEX早特系と違い、年末年始やお盆、GWなどのピーク時にも使えるのも強みです。

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東京~新大阪間の傾向と対策

東京~新大阪間の割引きっぷの傾向と対策をまとめてみましょう。

まず、利用列車に制限がなく、エクスプレス会員でも学生でも株主でなくても買える「のぞみ」普通車の最安値は、自由席の正規価格です。格安チケットをいろいろ挙げておいて恐縮ですが、利用列車や利用対象に制限のない割引きっぷはほとんどないのです。

ですから、「時間帯に縛られず安くのぞみに乗りたい」という人は、駅窓口か券売機で「自由席」を買うのがいいでしょう。逆に、時間帯の制限を受け入れるなら「EX早特21」が圧倒的にお得です。

学生なら学割を活用しましょう。「学割自由席」11,870円は、他の割引きっぷと比較しても安い方です。「株主優待割引」は、手頃な価格で株主優待券が手に入るなら利用価値があります。

土休日で複数人なら「EXのぞみファミリー早特」がうってつけ。「ファミリー」と銘打たれていますが、友人同士でも使えます。

「こだま」でもいいのなら、「ぷらっとこだま」10,500円が安いです。700円足せば「EXこだまグリーン早特」も使えます。利用時間帯の制限がなく、お手頃価格でグリーン車を使うには良さそうです。

実際に利用する駅から新幹線駅までのアクセスも考慮に入れましょう。「*」が付いている特定都区市内駅制度が適用されないきっぷは、新幹線駅まで別運賃がかかります。

特定都区市内駅制度が適用されるきっぷは、東京都区内、大阪市内のJR在来線駅から新幹線駅まで別運賃はかかりません。

ちなみに、通常の「スマートEXサービス」は、指定席は定価から200円引き、自由席は定価と同額です。特定都区市内駅制度が使えない点を考えれば、利用区間によっては定価より高く付きます。

東京も大阪も、特定都区市内駅制度の恩恵に浴している人は多いと思いますので、注意した方が良さそうです。

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他区間では

さて、ここまで東京~新大阪間の新幹線価格を見てみました。他区間についても触れておくと、東京・新横浜~名古屋・京都・新神戸では、傾向としては同じです。「EX早特21」が設定されている区間は、それが「のぞみ」利用の最安値です。

東京・新横浜~岡山・広島・新山口・小倉・博多といった山陽エリア向けの区間では、時間帯制限のない「EX早特」があります。3日前まで購入で利用できますし、使いやすそうです。

EX早特」の設定区間がもっと増えれば、と思いますが、飛行機との競合が激しい区間での設定が中心です。「株主優待割引」は、東京~新大阪間では利用価値がありますが、JR西日本とまたがる区間では使えませんし、東京~新大阪間より短い距離ではお得感が薄まります。

「のぞみ」通過駅に割引きっぷは少ない

「のぞみ」の停まらない駅に関しては、割引きっぷの設定は少ないです。たとえば、東京~静岡間では、「EX予約サービス」と「新幹線回数券」、「ぷらっとこだま」くらいしか割安なきっぷの設定がありません。

「ひかり」も停まらない駅に関しては、「ぷらっとこだま」も設定されていませんので、さらに選択の余地は狭まります。

スマートEXサービス」導入で、割引きっぷの選択肢が増えたのは「のぞみ」停車駅間がほとんどです。「ひかり」「こだま」しか停まらない駅では、安く新幹線に乗る方法が増えたわけではなさそうです。

結論を書くと、年に複数回東海道・山陽新幹線を利用する人は、これまでどおり「エクスプレス予約」の会員になり、「EX予約サービス」を使うのが便利でお得でしょう。

年に1~2回しか東海道・山陽新幹線に乗らない人は、「スマートEXサービス」に登録して、そのときの条件にあう割引きっぷを買うか、金券ショップで新幹線回数券のばら売りを探すという昔ながらの方法がよさそうです。(鎌倉淳)

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