埼玉高速鉄道の岩槻延伸について、埼玉県とさいたま市が、国土交通省に「現実的な支援」を要請しました。なかなか動き出さない計画ですが、今度こそ実現するのでしょうか。
浦和美園~岩槻間7.2km
埼玉高速鉄道は、赤羽岩淵~浦和美園間14.6kmを結ぶ第三セクター鉄道です。岩槻を経て蓮田まで延伸する計画があり、このうち浦和美園~岩槻間7.2kmについて、早期の事業化を目指しています。
埼玉県の大野元裕知事とさいたま市の清水勇人市長は、2025年4月14日に国土交通省を訪れ、延伸事業について予算の安定的な確保と事業の実施に向けた現実的な支援を求める要望書を、中野洋昌国土交通相に手渡しました。
途中2駅を計画
埼玉高速鉄道の岩槻延伸は、浦和美園~岩槻間7.2kmを複線で建設し、途中、埼玉スタジアム駅と中間駅の2駅を設ける計画です。
当初、さいたま市が埼玉高速鉄道に対して、2023年度中に事業実施要請を行う予定でした。しかし、建設費が当初の見込みより大きく増加することがわかり、延期しています。

事業費1390億円、工期14年
その後、さいたま市では、鉄道・運輸機構と埼玉高速鉄道に対し「技術的な協力・支援」を要請し、計画の再検討をしてきました。その結果が2月にまとまり、新たな概算事業費が1390億円、工期が14年と示されました。
費用便益比の再試算もおこない、新設する中間駅付近の定住人口を、これまで4,000人と見積もっていたところ、1万人規模と仮定すると、費用便益比が1.2となることが明らかにされました。8,000人規模でも1.0となり、基準となる1をクリアします。
2025年度にも事業実施要請
新たな試算がまとまったのを受け、県と市では、2025年度に、埼玉高速鉄道に対する事業実施要請をおこなう予定です。当初の見通しより2年遅れますが、岩槻への延伸が動き出すことになります。
今後は、都市鉄道等利便増進法の補助を受けるための速達性向上計画の素案を作成し、これを国土交通大臣が認定すれば、正式に事業着手となります。
「現実的な支援」とは何か
今回、県と市が国に対しておこなった要望は、「延伸の早期事業化」と「予算の安定的な確保と事業の実施に向けた現実的な支援」の2点です。
早期事業化や予算確保は理解できるとして、気になるのは、「現実的な支援」とは何か、ということでしょう。
これについて、清水市長は「予算の確保に代わる代替的な支援策もある。いろいろな知恵、支援を提案いただきながら、私どもとしても現実的なものにしていく」と述べるにとどめています。
中間駅まちづくりがポイント?
上述したように、今回の再試算のポイントは、中間駅のまちづくりにおいて、定住人口の仮定を4,000人から8,000人以上に引き上げたことです。
当然、鉛筆を舐めるだけでは済ませられないので、まちづくりにおいて具体的な計画を盛り込まなければなりません。
大野知事によると、中野国交相からまちづくりについて、「熟度を上げてほしいという言葉があった」とのことです。また、都市鉄道等利便増進法の適用について、「国にご判断いただくことだが、さまざまな施策を考えてほしい」とも述べました。
こうしたことから、県市が求める「現実的な支援」のポイントは、中間駅のまちづくりについてのようです。
2040年代開業へ
延伸区間の中間駅から東京都心までは、50分程度はかかると見込まれます。人口減少時代に、東京都心から50分もかかる場所に、新たに1万人規模のまちづくりをするのは、そう簡単ではないでしょう。
いっぽうで、延伸区間が開業すれば、浦和美園などさいたま市東部エリアと、ターミナルである大宮駅が、東武アーバンパークラインを通じて鉄道でつながります。さいたま市全体の発展を考えれば、必要性の高い路線であることも確かでしょう。
工期が14年と見積もられていますので、2025年度中に着工できれば、最速で2039年度末、つまり2040年春の開業が見込まれます。そこまでスムーズにいかなくとも、2040年代には開業にこぎ着けることができるでしょう。
必要性の高い路線を、無理なく実現できるか。「現実的な計画」が立てられることを期待したいところです。(鎌倉淳)