東北・上越新幹線、コロナ後も苦戦続く。JR東日本2022年度輸送密度の研究【2】

都心路線も厳しく

JR東日本が2022年度の線区別の輸送密度を公表しました。輸送密度4,000以上のうち、気になる路線を見ていきましょう。

【4,000未満はこちらの記事】
7線区が「1,000以下」に陥落。JR東日本2022年度輸送密度の研究【1】

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輸送密度上位路線

JR東日本が、2022年度の線区別の輸送密度(平均通過人員)を公表しました。新型コロナウイルス感染症の影響から回復しつつあるものの、ほとんどの路線は「コロナ前」に届いていません。

JR東日本が公表したデータから、輸送密度4,000以上の104線区について、高い順にランキングしてみたのが下表です。コロナ前の対2018年度比の回復率もあわせて示しました。

JR東日本輸送密度ランキング2022年度(輸送密度4,000以上)
順位 路線名 区間 2022年度 2018年度 対18年度比
1 山手線 品川~田端(新宿経由) 872,143 1,134,963 76.8%
2 埼京線 池袋~赤羽 629,849 752,645 83.7%
3 中央本線 神田~高尾 542,056 690,337 78.5%
4 東北本線 東京~大宮(王子・尾久経由) 赤羽~大宮(武蔵浦和経由) 514,206 637,751 80.6%
5 東海道本線 東京~大船、品川~鶴見 など 511,926 669,492 76.5%
6 総武本線 東京~千葉、錦糸町~御茶ノ水 343,629 431,983 79.5%
7 常磐線 日暮里~取手 288,593 363,050 79.5%
8 横浜線 東神奈川~八王子 191,769 231,706 82.8%
9 外房線 千葉~蘇我 178,127 209,509 85.0%
10 東海道本線 大船~小田原 169,301 202,683 83.5%
11 南武線 川崎~立川 167,140 205,876 81.2%
12 青梅線 立川~拝島 162,434 194,019 83.7%
13 高崎線 大宮~熊谷 161,405 198,487 81.3%
14 武蔵野線 府中本町~西船橋 149,572 168,752 88.6%
15 根岸線 横浜~大船(磯子経由) 147,321 177,099 83.2%
16 京葉線 東京~蘇我 市川塩浜~南船橋(西船橋経由) 144,593 181,483 79.7%
17 東北本線 大宮~古河 128,345 157,897 81.3%
18 東北新幹線 東京~大宮 118,914 180,725 65.8%
19 横須賀線 大船~逗子 106,980 129,893 82.4%
20 総武本線 千葉~佐倉 82,919 105,090 78.9%
21 東北新幹線 大宮~宇都宮 81,595 120,571 67.7%
22 上越新幹線 大宮~高崎 79,707 108,697 73.3%
23 川越線 大宮~川越 77,625 89,062 87.2%
24 常磐線 取手~土浦 71,461 102,270 69.9%
25 青梅線 拝島~青梅 67,742 80,631 84.0%
26 東北新幹線 宇都宮~福島 58,209 87,901 66.2%
27 外房線 蘇我~茂原 57,468 70,525 81.5%
28 内房線 蘇我~君津 48,953 57,566 85.0%
29 東北新幹線 福島~仙台 46,675 68,748 67.9%
30 東北本線 岩沼~仙台 42,138 46,821 90.0%
31 東北本線 古河~宇都宮 40,369 48,203 83.7%
32 高崎線 熊谷~高崎 38,613 46,786 82.5%
33 仙石線 あおば通~東塩釜 37,527 44,087 85.1%
34 常磐線 土浦~勝田 36,045 47,266 76.3%
35 東海道本線 小田原~熱海 34,826 42,766 81.4%
36 上越線 高崎~新前橋 34,825 40,481 86.0%
37 中央本線 高尾~大月 33,926 46,132 73.5%
38 北陸新幹線 高崎~長野 33,000 43,278 76.3%
39 成田線 佐倉~成田 31,871 44,425 71.7%
40 東北新幹線 仙台~一ノ関 28,830 42,075 68.5%
41 八高線 八王子~拝島 26,887 32,303 83.2%
42 相模線 茅ヶ崎~橋本 25,972 29,643 87.6%
43 常磐線 勝田~高萩 24,219 29,007 83.5%
44 東北新幹線 一ノ関~盛岡 24,126 34,587 69.8%
45 信越本線 篠ノ井~長野 23,430 27,759 84.4%
46 東北本線 仙台~松島・高城町 23,215 26,298 88.3%
47 信越本線 新津~新潟 22,841 27,855 82.0%
48 中央本線 大月~甲府 22,063 30,822 71.6%
49 五日市線 拝島~武蔵五日市 21,890 24,712 88.6%
50 上越新幹線 高崎~越後湯沢 21,679 30,693 70.6%
51 仙石線 仙台~愛子 21,283 24,781 85.9%
52 横須賀線 逗子~久里浜 21,258 25,791 82.4%
53 篠ノ井線 塩尻~松本 20,439 25,470 80.2%
54 北陸新幹線 長野~上越妙高 18,688 24,781 75.4%
55 越後線 内野~新潟 18,645 23,159 80.5%
56 両毛線 伊勢崎~新前橋 18,124 20,808 87.1%
57 川越線 川越~高麗川 17,727 19,694 90.0%
58 総武本線 佐倉~成東 15,954 19,568 81.5%
59 上越新幹線 越後湯沢~新潟 15,784 22,497 70.2%
60 東北本線 宇都宮~黒磯 14,958 16,011 93.4%
61 東北本線 白石~岩沼 14,519 15,506 93.6%
62 成田線 成田~我孫子 14,500 18,201 79.7%
63 成田線 成田~成田空港 13,897 26,072 53.3%
64 伊東線 熱海~伊東 13,531 16,907 80.0%
65 八高線 拝島~高麗川 13,061 15,690 83.2%
66 中央本線 甲府~小淵沢 12,812 17,020 75.3%
67 東北新幹線 盛岡~八戸 12,787 17,086 74.8%
68 白新線 新発田~新潟 12,660 15,978 79.2%
69 上越線 新前橋~渋川 11,778 14,192 83.0%
70 鶴見線 鶴見~扇町 浅野~海芝浦、武蔵白石~大川 11,037 14,133 78.1%
71 中央本線 小淵沢~塩尻(みどり湖経由) 11,021 14,703 75.0%
72 東北本線 北上~盛岡 10,732 11,863 90.5%
73 東北本線 郡山~福島 10,579 10,860 97.4%
74 信越本線 長岡~新津 9,375 11,296 83.0%
75 奥羽本線 秋田~追分 8,910 10,690 83.3%
76 両毛線 桐生~伊勢崎 8,904 10,286 86.6%
77 東北新幹線 八戸~新青森 8,828 11,556 76.4%
78 東北本線 松島~小牛田 8,693 9,790 88.8%
79 両毛線 小山~足利 8,674 10,547 82.2%
80 南武線 尻手~浜川崎 8,192 8,057 101.7%
81 大糸線 松本~豊科 7,944 9,437 84.2%
82 篠ノ井線 松本~篠ノ井 7,543 9,226 81.8%
83 奥羽本線 米沢~山形 7,541 10,886 69.3%
84 常磐線 高萩~いわき 7,418 9,402 78.9%
85 成田線 成田~佐原 7,403 8,724 84.9%
86 東北本線 新白河~郡山 7,063 6,523 108.3%
87 東金線 大網~成東 6,834 8,075 84.6%
88 日光線 宇都宮~鹿沼 6,814 8,562 79.6%
89 仙石線 東塩釜~石巻 6,776 7,737 87.6%
90 東北本線 福島~白石 6,549 5,932 110.4%
91 越後線 吉田~内野 6,218 7,593 81.9%
92 奥羽本線 福島~米沢 6,056 9,517 63.6%
93 奥羽本線 弘前~青森 6,033 7,659 78.8%
94 総武本線 成東~銚子 5,965 7,054 84.6%
95 奥羽本線 大曲~秋田 5,843 7,951 73.5%
96 外房線 茂原~勝浦 5,744 7,312 78.6%
97 水戸線 小山~友部 5,636 7,011 80.4%
98 東北本線 岩切~利府 5,257 5,785 90.9%
99 田沢湖線 盛岡~大曲 4,794 7,023 68.3%
100 水郡線 水戸~常陸大宮 4,476 5,399 82.9%
101 東北本線 一ノ関~北上 4,442 4,362 101.8%
102 奥羽本線 山形~新庄 4,407 5,483 80.4%
103 左沢線 北山形~寒河江 4,214 4,773 88.3%
104 羽越本線 新発田~村上 4,155 5,686 73.1%

E5系

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山手線、100万に届かず

輸送密度が最大なのは山手線で872,143です。非常に大きな数字ですが、2018年度は100万を超えていたので、大きく減少しています。回復率では76.8%にとどまり、首都圏の他の通勤路線と比べても回復が鈍い状況です。

一方、2位の埼京線は比較的回復率が高く、対2018年度比で83.7%。輸送密度は629,849です。

3位から5位は輸送密度50万台の僅差で、中央本線神田~高尾間が542,056で3位につけました。2018年度の4位から一つ順位を上げています。

2018年度に3位だった東海道本線東京~大船間は、2022年度は5位に転落しています。輸送密度511,926で、回復率は76.5%。コロナの影響から脱しきれていません。

都心部と城南、城西で回復遅れ

輸送密度3位から7位は、中央本線、東北本線、東海道本線、総武本線、常磐線で、いずれも都心から郊外へ延びる放射状路線です。

輸送密度は、山手線内を含む中央本線神田~高尾、京浜東北線を含む東北本線、東海道線が輸送密度50万台と高く、山手線内を含まない総武本線、常磐線が約28万~34万となっています。

全体的に、都心部と、城南・城西エリアを走る路線で、新型コロナからの利用者回復が遅れています。これらのエリアには、リモートワーク率が高い職種が多いとみられ、それが影響しているかもしれません。

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輸送密度10万以上の区間

首都圏の郊外路線に目を転じると、横浜線が最大の輸送密度191,769となっています。コロナ前の輸送密度20万人台には戻っていませんが、回復率は82.8%で、首都圏路線のなかではまずまずです。

その後、外房線千葉~蘇我、東海道本線大船~小田原などから、横須賀線大船~逗子までが輸送密度10万人以上です。これらの路線のほとんどは、回復率80%を超えています。

ただし、輸送密度10万以上の区間は、2018年度の23線区から19線区に減りました。なかでも常磐線取手~土浦間は、2018年度の102,270から2022年度は71,461と、7割以下に落ち込んでいます。

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新幹線で苦戦続く

新幹線は苦戦が続いています。主力となる東北新幹線東京~大宮間の輸送密度は118,914。対2018年度比で65.8%にとどまります。コロナ前の3分の2までしか回復していないわけです。

新幹線は区間により違いはあるものの、おおむね65~75%程度の回復率です。近距離の通勤・通学の利用者に比べ、観光やビジネスの旅客の戻りが遅れていることを示しています。

JR東日本の新幹線で輸送密度10万以上は、東京~大宮間のみとなり、大宮~宇都宮間が81,595、大宮~高崎間が79,707にとどまっています。

ちなみに、大宮~宇都宮・高崎間を合わせた輸送密度は161,302で、東京~大宮間の1.35倍です。東京~大宮間だけ乗車する人をゼロと仮定すれば(実際はいますが)、大宮駅から東北・上越・北陸新幹線を利用する人は、東京・上野駅から利用する人の3割程度という計算になります。

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「成田空港線」は厳しく

新型コロナの直撃を受けたのが、成田空港輸送です。該当する成田線の成田~成田空港間をみてみると、輸送密度13,897で、幹線としての水準には達しています。

ただ、対2018年度の回復率では53.3%と厳しい水準です。インバウンドが戻ってきているとはいえ、日本人の海外旅行が盛り上がりを欠いているのが、苦戦の理由かもしれません。

来年度以降は、より回復するとは思いますが、コロナ前の水準に戻るには、もう少し時間がかかりそうです。

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東北本線、軒並み100%超え

輸送密度の対2018年度回復率が100%を超えたのは、南武線尻手~浜川崎101.7%、東北本線新白河~郡山108.3%、同福島~白石110.4%、同一ノ関~北上101.8%の4区間だけです。

南武線の浜川崎支線は堅調ですが、接続する鶴見線は78.1%と回復率は低くなっています。

東北本線は、前記事でも記しましたが、全体的に輸送密度が高まっていますが、理由は測りかねています。

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リストから消えた線区

上表では輸送密度4,000人以上を示しています。これは旧国鉄時代の廃止基準である「特定地方交通線」に該当しない水準です。

2018年度の輸送密度が4,000人以上あり、2022年度に特定地方交通線水準に落ちてしまった線区は5つです。いわば「輸送密度4,000人以上」のリストから消えてしまった線区です。

・両毛線足利~桐生(4,740→3,858)
・信越本線高崎~横川(4,366→3,682)
・青梅線青梅~奥多摩(4,020→3,420)
・日光線鹿沼~日光(4,301→3,304)
・磐越西線五泉~新津(4,066→3,272)

磐越西線を除けば東京近郊の路線です。東京近郊で特定地方交通線水準の線区が増えてきたことは、JR東日本として危機感は大きいでしょう。 (鎌倉淳)

【関連記事】7線区が「1,000以下」に陥落。JR東日本2022年度輸送密度の研究【1】

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