7線区が「1,000以下」に陥落。JR東日本2022年度輸送密度の研究【1】

東北本線が堅調

JR東日本が2022年度の線区別の輸送密度を公表しました。気になる路線を見ていきましょう。

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「コロナ前」に届かず

JR東日本が、2022年度の線区別の輸送密度(平均通過人員)を公表しました。新型コロナウイルス感染症の影響から回復しつつあるものの、ほとんどの路線は「コロナ前」に届いていません。

JR東日本が公表したデータから、輸送密度4,000未満の101線区について、低い順にランキングしてみたのが下表です。コロナ前の対2018年度比の回復率もあわせて示しました。

JR東日本輸送密度ランキング2022年度(輸送密度4,000未満)
順位 路線名 区間 2022年度 2018年度 対18年度比
1 陸羽東線 鳴子温泉~最上 44 85 51.8%
2 久留里線 久留里~上総亀山 54 96 56.3%
3 花輪線 荒屋新町~鹿角花輪 55 86 64.0%
4 山田線 上米内~宮古 64 148 43.2%
5 磐越西線 野沢~津川 70 133 52.6%
6 飯山線 戸狩野沢温泉~津南 76 126 60.3%
7 只見線 会津川口~只見 79 28 282.1%
8 津軽線 中小国~三厩 ※ 80 115 69.6%
9 北上線 ほっとゆだ~横手 90 134 67.2%
10 米坂線 小国~坂町※ 105 180 58.3%
11 只見線 只見~小出 107 107 100.0%
12 水郡線 常陸大子~磐城塙 143 209 68.4%
13 陸羽西線 新庄~余目※ 148 345 42.9%
14 五能線 能代~深浦※ 160 335 47.8%
15 米坂線 今泉~小国※ 161 274 58.8%
16 只見線 会津坂下~会津川口 182 181 100.6%
17 大船渡BRT 気仙沼~盛 183 272 67.3%
18 気仙沼BRT 前谷地~気仙沼 ※ 185 279 66.3%
19 大糸線 白馬~南小谷 188 249 75.5%
20 気仙沼線 前谷地~柳津 200 227 88.1%
21 磐越東線 いわき~小野新町 203 309 65.7%
22 山田線 盛岡~上米内 217 360 60.3%
23 陸羽東線 最上~新庄 254 363 70.0%
24 奥羽本線 新庄~湯沢 262 424 61.8%
25 吾妻線 長野原草津口~大前 263 364 72.3%
26 八戸線 鮫~久慈 309 493 62.7%
27 花輪線 好摩~荒屋新町 346 440 78.6%
28 五能線 深浦~五所川原※ 354 587 60.3%
29 飯山線 津南~越後川口 355 421 84.3%
30 磐越西線 喜多方~野沢※ 357 569 62.7%
31 小海線 小淵沢~小海 359 500 71.8%
32 北上線 北上~ほっとゆだ 368 442 83.3%
33 大湊線 野辺地~大湊 392 578 67.8%
34 磐越西線 津川~五泉 394 587 67.1%
35 釜石線 遠野~釜石 399 586 68.1%
36 飯山線 飯山~戸狩野沢温泉 410 543 75.5%
37 中央本線 辰野~塩尻 433 583 74.3%
38 弥彦線 弥彦~吉田 442 503 87.9%
39 花輪線 鹿角花輪~大館 ※ 448 580 77.2%
40 津軽線 青森~中小国 ※ 516 735 70.2%
41 大船渡線 一ノ関~気仙沼 注 572 796 71.9%
42 米坂線 米沢~今泉 573 822 69.7%
43 越後線 柏崎~吉田 639 729 87.7%
44 大糸線 信濃大町~白馬 666 797 83.6%
45 五能線 東能代~能代 681 1,030 66.1%
46 陸羽東線 古川~鳴子温泉 708 1,032 68.6%
47 水郡線 常陸大宮~常陸大子 720 965 74.6%
48 羽越本線 酒田~羽後本荘 723 987 73.3%
49 釜石線 花巻~遠野 739 936 79.0%
50 上越線 越後湯沢~ガーラ湯沢 751 753 99.7%
51 奥羽本線 大館~弘前 790 1,139 69.4%
52 左沢線 寒河江~左沢 791 910 86.9%
53 水郡線 磐城塙~安積永盛 811 1,018 79.7%
54 只見線 会津若松~会津坂下 944 1,154 81.8%
55 石巻線 小牛田~女川 958 1,255 76.3%
56 上越線 水上~越後湯沢 976 738 132.2%
57 小海線 小海~中込 983 1,312 74.9%
58 奥羽本線 東能代~大館 1,056 1,550 68.1%
59 久留里線 木更津~久留里 1,074 1,518 70.8%
60 鹿島線 香取~鹿島サッカースタジアム 1,085 1,221 88.9%
61 烏山線 宝積寺~烏山 1,120 1,457 76.9%
62 羽越本線 村上~鶴岡 1,171 1,795 65.2%
63 羽越本線 新津~新発田 1,221 1,362 89.6%
64 五能線 五所川原~川部 1,230 1,548 79.5%
65 外房線 勝浦~安房鴨川 1,295 1,644 78.8%
66 内房線 館山~安房鴨川 1,327 1,621 81.9%
67 男鹿線 追分~男鹿 1,438 1,877 76.6%
68 飯山線 豊野~飯山 1,445 1,725 83.8%
69 奥羽本線 湯沢~大曲 1,448 1,831 79.1%
70 磐越西線 会津若松~喜多方 1,491 1,940 76.9%
71 羽越本線 鶴岡~酒田 1,527 2,197 69.5%
72 常磐線 いわき~原ノ町 1,592
73 磐越東線 小野新町~郡山 1,847 2,333 79.2%
74 羽越本線 羽後本荘~秋田 1,907 2,465 77.4%
75 水郡線 上菅谷~常陸太田 1,996 2,628 76.0%
76 八戸線 八戸~鮫 2,167 2,636 82.2%
77 上越線 越後湯沢~六日町 2,249 2,836 79.3%
78 磐越西線 郡山~会津若松 2,283 3,077 74.2%
79 奥羽本線 追分~東能代 2,285 2,982 76.6%
80 八高線 高麗川~倉賀野 2,389 3,393 70.4%
81 吾妻線 渋川~長野原草津口 2,461 2,949 83.5%
82 中央本線 岡谷~辰野 2,512 3,048 82.4%
83 弥彦線 吉田~東三条 2,554 3,057 83.5%
84 東北本線 小牛田~一ノ関 2,571 2,203 116.7%
85 成田線 佐原~松岸 2,617 3,143 83.3%
86 信越本線 犀潟~長岡 2,632 3,576 73.6%
87 仙山線 愛子~羽前千歳 2,796 3,457 80.9%
88 小海線 中込~小諸 2,919 3,548 82.3%
89 信越本線 直江津~犀潟 2,924 3,985 73.4%
90 内房線 君津~館山 3,090 3,921 78.8%
91 大糸線 豊科~信濃大町 3,170 3,811 83.2%
92 上越線 六日町~宮内 3,189 3,536 90.2%
93 磐越西線 五泉~新津 3,272 4,066 80.5%
94 日光線 鹿沼~日光 3,304 4,301 76.8%
95 陸羽東線 小牛田~古川 3,331 3,885 85.7%
96 上越線 渋川~水上 3,359 3,625 92.7%
97 東北本線 黒磯~新白河 3,402 2,348 144.9%
98 青梅線 青梅~奥多摩 3,420 4,020 85.1%
99 信越本線 高崎~横川 3,682 4,366 84.3%
100 常磐線 原ノ町~岩沼 3,690 3,828 96.4%
101 両毛線 足利~桐生 3,858 4,740 81.4%

※は災害や工事などによる長期間の不通が生じた路線。

山田線

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ワーストは陸羽東線

もっとも輸送密度が低いのが、陸羽東線鳴子温泉~最上間の44。輸送密度が50を割り込んでいる区間はJR他社を含めて僅かで、全国屈指の過疎区間といえます。対2018年度比の回復率も5割程度です。

つづいて、久留里線の久留里~上総亀山間。輸送密度54は首都圏の路線としては異例の低さです。こちらも対2018年度比で半分近くに落ち込んで回復していません。

2022年8月豪雨の路線

その後が花輪線荒屋新町~鹿角花輪間ですが、同線は2022年8月の豪雨で鹿角花輪~大館間が約9ヶ月間にわたり運休していました。その影響もあるため、同線の2022年度の輸送密度は参考値にとどまります。

花輪線に限らず、2022年8月豪雨で被災した路線は、いずれも輸送密度が低迷しています。磐越西線野沢~津川間が70、津軽線中小国~三厩間が80、米坂線小国~坂町間が105、同今泉~小国間が161です。

このうち、津軽線中小国~三厩間と米坂線今泉~坂町間は、いまも復旧していません。

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山田線の衝撃

衝撃的なのが、ワースト4位に入った山田線上米内~宮古間です。輸送密度が64で、対2018年度比で43.2%にまで落ち込んでいます。対2018年度比の回復率ではワーストに近い落ち込み方です。

理由として挙げられるのが、並行する宮古盛岡横断道路が2021年3月に全通したことでしょう。ライバルの「106特急・急行バス」が高速化し、所要時間を短縮。そのあおりで、山田線の利用者が激減したとみてよさそうです。

高速バスの運行開始で鉄道在来線の利用者が減少するというのはよくあることですが、山田線の場合は、以前から「106特急・急行バス」への乗客流出が続いていて、高速全通で、文字通り「とどめを刺された」感が漂います。

只見線が健闘

ローカル線で健闘したのが只見線です。被災による不通から11年ぶりに復旧した会津川口~只見間の輸送密度が79で、対2018年度比で282%と激増しました。

只見~小出間(107)や会津坂下~会津川口(182)も、2018年度と同水準にまで回復しました。

輸送密度の絶対数は小さいもののの、自治体による費用負担など、存続に向けたスキームはできあがっており、今後の心配の小さい区間です。

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東北線も堅調

2018年度より輸送密度を高めた路線は非常に限られていて、輸送密度4,000未満では、只見線のほか、上越線水上~越後湯沢(132.2%)、東北本線小牛田~一ノ関(116.7%)、同黒磯~新白河(144.9%)くらいです。

東北本線は全体に利用者が増えていて、輸送密度4,001人以上でも、一ノ関~北上(101.8%)、福島~白石(110.4%)、新白河~郡山(108.3%)と、100%超え区間が多くなっています。

東北本線が堅調な理由については測りかねるのですが、同線以外でも、地方都市圏で通勤・通学輸送の足として機能している路線は、コロナ後も全体的に堅調です。

ガーラ支線も回復したが

上越線の越後湯沢~ガーラ湯沢間も、対2018年度比99.7%で、コロナ前までほぼ回復したと言っていいでしょう。

ただ、湯沢町の観光統計を見ると、2022年度のGALA湯沢スキー場の利用者数は25万5000人。対して2018年度シーズンは33万5000人でしたので、回復率は76%にとどまります。

要は、鉄道利用者は回復したけれど、スキー場利用者数は戻りきっていないというわけです。逆にいえば、バスやマイカー利用者が大きく減少したまま戻らないことを示しています。

輸送密度1,000人になった区間

国土交通省は、利用者の少ないローカル線のうち、輸送密度1,000人未満の路線について、自治体との協議対象になるという目安を示しています。2022年度は55線区ありました(BRT2線区を除く)。

このうち、2018年度は1,000人以上あり「リスト外」だったのに、2022年度に1,000人を割って対象になった線区は、以下の7つです。

・小海線小海~中込(1,312→983)
・石巻線小牛田~女川(1,255→958)
・只見線会津若松~会津坂下(1,154→944)
・水郡線磐城塙~安積永盛(1,018→811)
・奥羽本線大館~弘前(1,139→790)
・陸羽東線古川~鳴子温泉(1,032→708)
・五能線東能代~能代(1,030→681)

新型コロナのほか、災害の影響を受けた線区もありますし、これらがすぐに協議対象になるとは限りません。とはいえ、心配になる水準です。(鎌倉淳)

次の記事では、輸送密度4001以上の路線について、ランキングしていきます。(明日公開予定)

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