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久留里線、空前の「乗り納めブーム」に。43年ぶり首都圏でローカル線廃止

寒川支線以来

久留里線の久留里~上総亀山間が2027年3月末を以て廃止されることが正式に決まりました。日中の列車はすでに「さよなら乗車」とおぼしき客で賑わっています。首都圏1都3県でのローカル線廃止は、1984年の相模線寒川支線以来43年ぶりとあって、これから1年間は空前の乗り納めブームになりそうです。

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久留里~上総亀山間廃止へ

JR久留里線は木更津~上総亀山間を走るローカル線です。末端部である久留里~上総亀山間9.6kmの利用状況が悪いことから、JR東日本は地元と協議の上、2027年3月末限りで廃止することを決めました。2026年3月9日には、鉄道事業の廃止を国土交通大臣に正式に届け出ています。

約1年後の廃止が決まり、久留里線では、すでに「乗り納めブーム」が起こりはじめています。筆者は4月の平日に久留里線を訪れ、木更津13時01分発の上総亀山行きの列車に乗車しましたが、「さよなら乗車」とおぼしき客で賑わっていました。

久留里線

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平日日中に席が埋まる

この日の列車は2両編成で、木更津駅発車時点の旅客はざっと50~60人くらいでしょうか。ロングシートの座席がおおむね埋まり、立ち客が出るほどです。

久留里線の輸送密度(2024年度)は、木更津~久留里間で1,021に過ぎませんので、平日日中時間帯に、これだけ乗車していることは意外でした。

春休み期間とあって乗客の属性は多彩で、リタイア世代もいれば、熟年世代の夫婦、カメラを首から下げた中高生の鉄道ファン、小学生連れの親子とさまざまです。

もちろん地元客も利用していて、途中駅で客を降ろしていきます。久留里駅到着時点で乗車していたのは、20~30人程度でしょうか。

久留里線

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輸送密度76

久留里駅で、新たに10人くらいの鉄道ファンを乗せて、廃止予定区間へと進んでいきます。終点の上総亀山駅到着時には、30~40人くらいの客が乗車していました。

久留里~上総亀山間の輸送密度は76に過ぎません。にもかかわらず、平日午後の1列車に30~40人が乗っていたわけですから、過去の統計よりも、多くの利用者が訪れていることがわかります。

この列車の折り返しまでの時間は20分ほどです。到着客は、それぞれに列車や駅を撮影していました。

久留里線

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駅に係員が待機

青春18きっぷの期間中でしたが、見た限り、利用者はわずかでした。青春18きっぷが旧ルールなら、「余った1日分」を使用して訪れる客も多かったと思われますが、いまの連続使用のルールでは、上総亀山駅を訪れるのに、青春18きっぷは向いていないのでしょう。

平日なので他に使えるフリーきっぷもなく、普通乗車券の利用者が大半でした。つまり、乗り放題のついでではなく、この路線のためにわざわざお金を払って来ているのです。

上総亀山駅は本来無人駅ですが、この日は制服姿の係員が一人待機していて、列車到着時に集札を手伝っていました。折り返し列車が出発する前には「次の列車は3時間後までありません」と構内アナウンスしています。

出発時には発車ベルを鳴らして乗車を促したうえで、運転士がドアを閉めました。上総亀山駅のようなローカル駅で発車ベルが鳴ったのも、意外でした。ほとんどの客が、折り返し列車に乗車していきました。

久留里線上総亀山駅

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首都圏だけあって

ローカル線の廃止が報じられると、「さよなら乗車」の客が訪れるのは世の常とはいえ、廃止まで、あと1年もあります。にもかかわらず、これだけの客が沿線外から集まり、JRとしても、受け入れ体制を整えているわけです。

筆者の乏しい経験からみただけの印象ですが、廃止1年前のローカル線が、平日にこれだけ賑わっているのは珍しい気がします。やはり首都圏だけあって、「ちょっと乗りに行ってみよう」と思い立って訪れる客が多いのでしょう。

久留里線

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寒川支線以来43年ぶり

じつは、JRが首都圏1都3県で鉄道路線を廃止をするのは初めてです。国鉄時代まで遡ると、1984年の相模線寒川支線(寒川~西寒川)以来、43年ぶりとなります。いわゆるローカル線の廃止も、首都圏では寒川支線以来です。

私鉄まで範囲を広げても首都圏での鉄道廃止は珍しく、遊園地関連の路線を除けば、近年では東急東横線横浜~桜木町間(2004年)以来、23年ぶりです。

東横線は圧倒的な輸送力があるので、「さよなら乗車」の客が殺到しても捌き切れましたが、寒川支線は1日4往復でしたので、廃線が近づくと激しい混雑になりました。

筆者は1984年の廃線日に訪れていましたが、ご覧のような状況でした。当時は規制が緩かったので、線路上にも入り放題です。

西寒川駅

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空前の「さよなら乗車ブーム」に?

久留里線久留里~上総亀山間は1日8.5往復あり、寒川支線の2倍です。とはいえ、鉄道ファンの裾野の広がりも当時の比でなく、「乗り納め」の客は当時の数倍に達するかもしれません。

廃線日が近づくにつれ、多くの利用者が訪れて混雑するのは間違いなさそうで、空前の「さよなら乗車ブーム」が起こりそうです。とくに、日中時間帯は、木更津13時01分発、上総亀山14時27分発の1往復のみですから、この列車に「乗り納め客」が集中するでしょう。

現時点では、筆者が見た限り、「賑わっている」程度にとどまり、「混雑」というほどの状況にはなっていません。しかし、平日ですでにこの程度なので、土休日は、今後、かなりの状況になっていくのではないでしょうか。最終日は想像もつきません。

「乗り納め」を計画している人はお早めに。できれば朝夕の列車にしたほうが、「ローカル線」をより楽しめそうです。(鎌倉淳)

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旅行総合研究所タビリス代表。旅行ブロガー。旅に関するテーマ全般を、事業者側ではなく旅行者側の視点で取材。著書に『鉄道未来年表』(河出書房新社)、『大人のための 青春18きっぷ 観光列車の旅』(河出書房新社)、『死ぬまでに一度は行きたい世界の遺跡』(洋泉社)など。雑誌寄稿多数。連載に「テツ旅、バス旅」(観光経済新聞)。テレビ東京「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」ルート検証動画にも出演。