JR西日本が、芸備線(三次〜広島間)について、機能強化策を明らかにしました。地元の要望に応え、快速列車の増発や終電繰り下げなどを盛り込んだ構想です。交換設備の新設などが必要ですが、地元が一部費用を負担すれば、実現する可能性はありそうです。
まちづくり交通協議会
この構想は、2026年4月24日に開催された、三次・安芸高田・広島まちづくり交通協議会の会合で、JR西日本が示したものです。「沿線のまちづくりを踏まえた芸備線(三次駅〜広島駅間)の機能強化策」として、5月15日に広島市が公表しました。
機能強化策には、地域住民の要望が強い快速の増発案と、それを実現するための列車交換設備の新設案が盛り込まれました。

朝夕に快速増発
快速の増発は、朝夕の通勤通学時間帯を中心に検討します。
朝は三次発6~7時台の下り(広島方面)、夕方は広島発17〜18時台の上り(三次方面)の快速を増やします。快速だけでなく、朝夕の普通列車も増発します。
昼間時間帯についても、三次〜下深川間で快速・普通を増発し、90分に4本程度を運転(三次行き2本、狩留家行き1本、下深川行き1本)する形のパターンダイヤ化を検討します。
夜間は、三次行き最終列車の繰り下げも検討します。
「通勤快速」を新設
朝時間帯の快速は、「通勤快速」とし、広島〜三次間の所要時間を75~80分程度と想定。現行の快速「みよしライナー」は約82~85分前後を要しており、実現すれば最大で10分程度の短縮となります。
「通勤快速」の停車駅は5〜7駅程度としています。現行の「みよしライナー」は8駅停車が標準で、広島~下深川間が各駅停車ですが、「通勤快速」は、広島近郊でも通過運転を想定しているようです。

芸備線(三次駅~広島駅間)の機能強化策について」より
交換設備新設を提案
芸備線は全区間単線で、列車交換可能な駅が限られることが、増発への課題となっています。
資料では、狩留家〜下深川間、安芸矢口〜矢賀間について、「行違い可能駅間の距離が長く、ラッシュ時のダイヤ設定において大きな制約条件」と説明しています。
そのため、JR西日本はこの2区間に交換設備(行き違い可能な駅)を新設する案を提示。これにより、列車の増発や所要時間短縮、柔軟なダイヤ設定が可能になるとしています。

芸備線(三次駅~広島駅間)の機能強化策について」より
上記のダイヤ案から、交換設備を新設する駅は、戸坂駅と中深川駅を想定しているようです。増設により、運行本数の多い広島~狩留家間で柔軟なダイヤ設定が可能になります。

芸備線(三次駅~広島駅間)の機能強化策について」より
ただし、交換設備の新設費用は、1箇所あたり20〜30億円かかります。2箇所となれば40~60億円となります。
さらに、列車交換の待ち時間を削減し、ダイヤを柔軟に設定するためには信号設備の改良も必要です。その費用を2~3億円と見積もっています。
芸備線の広島~三次間は年間17億円程度の赤字を計上しており、数十億円単位の投資は大きな負担となります。
線形改良案も
芸備線の機能強化策のメニューとしては、このほか、軌道強化や線形改良、斜面防災、ICOCA導入、新型車両導入、駅のバリアフリー化も盛り込まれました。
このうち、軌道強化や線形改良(曲線改良、1線スルー化)は速度向上に効果がありますが、1箇所につき短縮効果は数~数十秒にとどまります。そのため、大幅な所要時間短縮には広範囲の整備が必要としました。
軌道強化・線形改良の費用は、1箇所につき10~30億円もかかることも記されました。大幅な所要時間短縮には百億円規模の投資が必要となり、現実的でないことが示唆されています。
また、新型車両は現行キハ40・47系の置き換えを想定し、1両あたり約4.5億円と試算しました。
バリアーフリー化については、安芸矢口駅を例に、エレベーター、スロープの整備に約7億円がかかるとしています。
実現に向け動き出すか
JR西日本が示した芸備線広島~三次間の機能強化策は、まちづくり交通協議会の中間報告にあたります。今後、協議会として、JR案を踏まえ「芸備線を軸とした公共交通ネットワークのあり方の方向性」をとりまとめ、法定協議会に移行します。
法定協議会で地域公共交通計画を策定し、社会資本整備交付金などの国の補助を活用し、芸備線活性化の取り組みを実施するという流れになります。
したがって、今回の芸備線機能強化策は、荒唐無稽な夢物語ではなく、実現可能性を探るたたき台として意味があります。
すなわち、JRと自治体が費用負担で合意すれば、戸坂駅と中深川駅の交換設備新設と完成後の増発、パターンダイヤ化が、実現に向けて動き出す可能性もありそうです。(鎌倉淳)























