函館新幹線の「現実解」を考える。まずは札幌~函館のみでスタートを

「新幹線等の函館駅乗り入れに関する調査報告書」の概要3

北海道新幹線の函館駅乗り入れの調査報告書について、これまで2回の記事で読み解いてきました。今回は、導入に向けての現実解を考えてみます。

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「新幹線函館駅乗り入れ」計画に無理はないか? 調査報告を読み解いてみた

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函館駅乗り入れ3パターン

北海道新幹線の函館駅乗り入れ計画(以下、函館新幹線)では、三線軌に複電圧車両を走らせる方式で、北海道新幹線列車を函館駅に引き込みます。

調査報告書では、運行パターンとして、札幌~函館間のみ運行、東京直通あり(分割併合なし)、東京直通あり(分割併合あり)の3つが検討されました。このうち、分割併合なし(フル規格10両)は、輸送力が過剰で、札幌への供給座席数が減るなどの問題があります。

分割併合ありについては、例示された7両+3両の分割が非現実的という問題があります。これについては、秋田新幹線と共通車両にして盛岡増解結にすれば解決が可能ではないか、ということを、当サイトの記事で示しました。

【記事はこちら】
「函館新幹線」実現へ5つのハードル。実現のカギは秋田新幹線に?

では、前記事であまり検討しなかった、「東京直通なし」はどうなのでしょうか。報告書の「ケース1」について、以下で検討してみましょう。

H5系北海道新幹線

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もっともシンプルなのは

函館新幹線を札幌~函館間のみで営業するというのは、もっともシンプルな運行パターンです。北海道新幹線が札幌まで開業したら、JR北海道は道内完結の列車を札幌~新函館北斗間に走らせるでしょうから、それを函館駅まで延長するだけです。ダイヤ上の問題や本州への影響はほとんど生じません。

札幌延伸に備え、JR北海道は新幹線車両を増備する予定です。その車両を充当すればいいので、車両の増備も最低限で済みます。運用区間が伸びるのにあわせて、2編成程度をさらに追加すれば足りるでしょうから、行政が負担する車両費も少なく済みます。

北海道新幹線函館乗り入れ
画像:「新幹線等の函館駅乗り入れに関する調査業務調査報告書」

 
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道内向け車両は必要

ただ、「JR北海道が札幌延伸用に増備する車両」は、本来、複電圧対応ではありません。そのため、函館駅乗り入れにするなら、複電圧車両を用意する必要があります。保安装置なども新在両対応にする必要があるでしょう。

となると、函館新幹線乗り入れ便は、本州直通の車両とは別運用にする必要があります。シンプルな「札幌~函館間」の運行パターンでも、道内運用向けの車両を作る必要がある、ということです。

JR東日本は、東北・北海道新幹線の札幌延伸に備えて次世代型新幹線車両を開発しています。この次世代車両(ここではE9系とします)の道内運用版を作らなければならない、ということです。道内運用版は新在直通対応で、ここでは「E9α系」とします。

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10両編成は不要

E9α系は道内便向けなので、フル規格10両編成の定員710人は輸送力過剰で、7両程度で十分でしょう。

現行車両(E5系)にあてはめると、フル規格7両でも定員は468人で、現行の「北斗」5両編成230人に比べ十分な輸送力があります。7両編成でも過剰気味なら、もっとも短くてもいいでしょう。

なお、調査報告書では、本州直通なしでも10両編成を想定しています。

10両編成にすれば本州向け車両と共通運用できますが、その車両が新在直通に対応していないなら、そもそも共通運用はできませんので、想定としては意味がない気がします。

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新函館北斗~函館で着席保証も

東京直通列車は運行しませんが、新函館北斗駅で下り札幌行きと上り函館行き(もしくはその逆)を接続させれば、新幹線車両同士で乗り継ぐことができます。

新函館北斗~函館間で着席保証がない点が現状の問題点ですが、札幌~函館間の新幹線列車を活用すれば、その問題をある程度解決できるでしょう。いわば「リレー方式」で、東京から来た場合、新函館北斗で乗り換えは生じるものの、座って函館駅まで旅行することができます。

車両費としては「もともと整備する予定だった車両を複電圧対応にする費用」と「運用区間が伸びたぶんの増備費用」を、行政が負担すれば済むことになり、全体の整備費用を抑えられます。

全体的にみて、スキームもシンプルです。となると、これが、函館新幹線の当面の「現実解」の一つになりそうです。

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拡張余地を残す

しかし、政治的に見た場合、「東京直通」が実現できないのは痛手かも知れません。現実的な利便性で考えても、東京直通があれば便利です。

この整備方式で建設した場合、将来的に東京方面へ運行するには、フル規格10連の複電圧車両を投入するのが基本線となります。

札幌開業時にそれを用意するのは難しいかもしれませんが、函館新幹線の利用状況がよければ、将来的に検討することはできるでしょう。検討の余地が残れば、政治的な言い訳は立ちます。

道内専用車両を導入するのであれば、在来線直通用に設計された秋田新幹線車両をベースにする選択肢もある、ということは、前記事に記した通りです。

当面は札幌~函館間の運行であっても、東京直通を目指すなら、ミニ新幹線にしてフル規格車両に連結する方が対応しやすい側面もあるでしょう。地上設備がフル対応なら、ミニ車両も発着できます。

いずれにせよ、運用上、東京直通はハードルが高そうですし、道内利用だけでも一定の需要があります。函館新幹線は、まずは札幌~函館間を最優先で検討するのが「現実解」で、そのうえで、東京直通への「拡張余地」を残しておくことが妥当ではないでしょうか。

函館~新函館北斗間を「ミニ」で作るか「フル」で作るかは、その「拡張余地」を決定づけるポイントです。JRや車両メーカーとも念入りに協議して欲しいところです。(鎌倉淳)

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