JR東日本、営業係数と収支で気になる区間。「特定BRT」もありそうで

「美幸線超え」が続々

JR東日本が、輸送密度2,000人未満の区間について収支状況と営業係数を初公表しました。気になる線区をみていきましょう。

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35路線66区間

JR東日本は、利用者が少ない線区について、収支状況と営業係数を公表しました。対象となったのは、2019年度に輸送密度2,000人未満だった35路線66区間です。

一方、国交省は有識者会議(地域モビリティ研究会)で、輸送密度1,000人未満の区間の一部を「特定線区」と位置づけ、あり方に関する協議の枠組みを作ろうとしています。

こうした背景を頭に入れながら、公表された区間のうち、気になる線区をみていきましょう。

JR東日本収支と営業係数2019

JR東日本収支と営業係数2019
画像:JR東日本プレスリリース

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久留里線久留里~上総亀山間

公表された66線区のうち、もっとも注目を浴びたのは久留里線久留里~上総亀山間9.6kmでしょう。営業係数は2019年度が15,546でワースト、2020年度も17,074でワースト2となりました。JR他社と比べても、日本有数の赤字区間です。

1年間の収入は2019年度が200万円、2020年度が100万円です。個人のアルバイトでも稼げそうな収入で、10km近く鉄道を維持し、運転士を使って列車を動かしているわけです。年間の費用は2.7億円(2020年度)で、1kmあたり2,800万円かかっていることになります。

輸送密度は85(19年度)、62(20年度)と低迷。利用者が極端に少なく、収支状況も悪いため、有識者会議で指摘された「鉄道特性」に関する議論が始まっても不思議ではなさそうです。

同じ久留里線の木更津~久留里間は、2019年度の輸送密度が1,425、営業係数が1,200です。こちらも厳しい数字ですが、「輸送密度1,000」をクリアしていますが、2,000人未満なので、鉄道を残してどう活性化するか、という話になりそうです。

久留里線

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営業係数3,000以上の線区

100円稼ぐのにいくら費用がかかるかを示すのが営業係数です。収支状況の悪さを示す指標で、国鉄末期に「日本一の赤字線」と呼ばれた美幸線の営業係数が3,000~4,000程度でした。

そこで、営業係数3,000以上(2019年度)をみてみると、以下の線区が挙げられます。

・飯山線戸狩野沢温泉~津南(8,258)
・大糸線白馬~南小谷(3,852)
・北上線ほっとゆだ~横手(3,466)
・水郡線常陸大子~磐城塙(5,033)
・只見線会津坂下~会津川口(3,053)
・同只見~小出(4,317)
・津軽線中小国~三厩(7,744)
・花輪線荒屋新町~鹿角花輪(10,196)
・磐越西線野沢~津川(7,806)
・陸羽東線鳴子温泉~最上(8,760)

多くは県境をまたぐ区間です。バスで輸送できる程度の輸送量しかないにもかかわらず、鉄道ネットワークを構成する区間であるがゆえに、維持されている側面もあります。

こうした区間に適したメニューが国交省の有識者会議で提案されました。「特定BRT」です。簡単にいうと、鉄道との通算運賃を維持するなどの扱いを残しながら、バスで運行するという仕組みです。

形式的にJRのネットワーク内に残しながら、実際に動くのはバスという形が、これらの路線で検討される可能性はあるでしょう。

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大糸線白馬~南小谷間

上記の路線でやや異彩を放つのが、大糸線白馬~南小谷間でしょう。本数は少ないものの、東京直通の特急が運行する電化区間です。しかし、2019年度の輸送密度は215と低く、営業係数は3,852に達します。この数字は、JR西日本の南小谷~糸魚川間の2,693(2017~2019の3年平均)を上回ります。

その理由は費用の多寡で、JR西日本区間は35.3kmに5.9億円しかかけていませんが、JR東日本区間は、10.4kmに4億円をかけています。1kmあたりで見ると、JR西日本区間は1,670万円に対し、JR東日本区間は3,840万円の費用をかけています。

これだけの差がでる理由の一つが、電化と非電化の違いでしょう。また、特急が走る場合、車両の減価償却費が高くなるといった事情もありそうです。

ただ、それだけでなく、両社のローカル線区間に対する費用のかけ方の違いを反映しているようにも感じられます。

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日本海縦貫線という重荷

赤字額に目を移すと、驚かされるのは、羽越線、奥羽線という日本海縦貫線を構成する線区の金額です。2019年度の数字で村上~鶴岡間が約49億円、酒田~羽後本荘が約27億円、東能代~大館間が約32億円、大館~弘前が約24億円。合計で132億円に達します。

日本海縦貫線は特急と貨物列車が走る大動脈なので、そのぶん費用がかかるとみられます。そして、これは輸送密度2,000未満の区間だけの数字なので、直江津~青森に至る日本海縦貫線全体を合計すると、200億円以上に達する赤字となっている可能性もあります。

首都圏や新幹線でドル箱路線を抱えるJR東日本だからこそ維持できている区間といえますが、同社の重荷であることは間違いなさそうです。

総額693億円

収支を公表した66線の2019年度の収支は、合計で約693億円の赤字となっています。同年度の同社の連結営業利益は3808億円ですので、JR東日本の企業体力からすれば、現段階では支えきれる範囲でしょう。

ただ、看過できる数字とも言えません。国の有識者会議の結果も踏まえて、いくつかの路線で協議が開始される可能性がありそうです。(鎌倉淳)

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