貨物新幹線実現への高いハードル。国交省が検討を開始するけれど

課題が多すぎて

国交省が、貨物新幹線の導入に向けた検討を開始します。実現すれば画期的ですが、ハードルは高そうです。

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高速走行と大量輸送

国交省は、貨物鉄道の強化について話し合う「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」の中間とりまとめを発表しました。そのなかで、貨物新幹線の導入の検討が記されました。

現在の新幹線は、基本的に旅客輸送のみをおこなっています。東海道新幹線建設時に貨物輸送が構想されたことはありますが、現在に至るまで本格的な貨物輸送が新幹線でおこなわれたことはありません。車内の空きスペースを活用した貨客混載が一部で試行されている程度です。

検討会の中間とりまとめでは、「貨物専用車両による高頻度の大量高速輸送を実現できれば、我が国の物流においてイノベーションを引き起こす可能性」があるとし、その実現の可能性を探る方針が盛り込まれました。

具体的には、JR貨物が中心となり、線路容量に余裕がある路線で、高速走行と大量輸送を両立できる貨物専用車両の導入可能性を検討します。

E5系

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実現に向けた課題

とはいえ、貨物新幹線の導入は簡単ではありません。検討会でヒヤリングに応じたJR東日本の資料によれば、以下のような課題があります。

まず、近年の新幹線は高速化を進めているため、貨物新幹線を導入した場合、車両の最高速度が低ければ、旅客列車ダイヤに影響を及ぼします。

つぎに、JR東日本の新幹線は、東京から5方面に乗り入れるネットワークとなっていて、列車ダイヤの調整には制約事項が多いことから、乗り入れ可能な区間は限定的です。

さらに、貨物を大量に積んだ車両では、旅客ホームでの荷捌きが困難なため、専用の貨物ターミナル整備が必要となります。その際は、既存新幹線とのアプローチ線も建設しなければなりません。

つまり、大容量の貨物新幹線を導入するのであれば、車両開発はもちろん、乗入区間の調整や貨物ターミナルの整備など、ハード・ソフト両面で、大がかりな課題整理が必要になるわけです。

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軸重の問題

JR東日本の資料にはありませんが、軸重の問題もあります。

新幹線では、軸重が16トンとして設計されている路線が多いため、1両あたり64トンが限度となります。10両編成なら640トンです。

この制限内でどれだけ荷物を詰めるのか、精査することは簡単ではなさそうですが、参考としてE5系10両編成の編成重量は453トンです。差分を積載可能量と見積もっても、187トンが限度です。実際に積める荷物となれば、もっと少ないでしょう。

車両定員をベースに考えると、新幹線1両に体重70kgの人が100人乗ると仮定すれば、1両あたり7トンが積載量となり、10両編成で70トンが積載限度になります。

在来線の貨物列車がどれだけ積めるかといえば、国交省によれば、現在、最長の貨物列車はコンテナ車を26両連結して運転します。この場合、標準コンテナ(5トン積み)130個を積載することができ、1編成あたり650トンの荷物を運ぶことができます。

つまり、新幹線の貨物列車は、在来線貨物列車に比べて重い荷物を運べないことがわかります。となると、新幹線貨物列車が運べるのは、宅配便など、嵩のわりに小重量のものに限られそうです。

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航空貨物の代替?

その場合、貨物新幹線が実現できたとしても、在来線の貨物列車が運んでいた荷物を、新幹線が全て肩代わりすることはできません。

どちらかといえば、代替できるのは在来線貨物列車ではなく、航空貨物であるようも感じられます。速度的にもライバルは航空貨物でしょう。飛行機に積めるような荷物を、新幹線で早く大量に運べるようになる、と考えればいいのかもしれません。

東北・北海道新幹線を想定か

貨物新幹線が検討されるのは、「線路容量に余裕のある区間」です。具体的には東北・北海道新幹線が想定されているのでしょう。

仙台以北の東北新幹線なら、旅客列車は毎時2本程度しか走っていない時間帯もあるので、たしかに貨物列車を走らせるスジはありそうです。青函区間に導入できれば、青函トンネルの共用問題の解消にもつながります。

一方、東海道・山陽新幹線では導入される可能性は小さいでしょう。JR東海も、検討会のヒヤリングで後ろ向きな姿勢を明確にしています。東京以西で導入される可能性があるとすれば、九州新幹線くらいでしょうか。

いずれにせよ、既存の新幹線にアプローチ線を設けて専用ターミナルまで建設するとなれば壮大なプロジェクトとなるでしょう。超えなければならないハードルの高さに比べ、中間とりまとめの記述内容は貧弱で、実現への道のりは定かではありません。(鎌倉淳)

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