JAL系の新LCC「ZIPAIR」が成功しそうな理由。旅行者には魅力的!

まずはバンコク、ソウルへ

JALが運航を開始する新LCCのブランド名が「ZIPAIR」と発表されました。初就航先はバンコクとソウルで、近い将来、欧米線への参入を目指します。

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圧縮座席?

日本航空は、2020年に新しいLCC(格安航空会社)として「ZIPAIR(ジップエア)」を成田~バンコク(スワンナプーム)、ソウル(仁川)線に就航させると発表しました。すでに設立している準備会社ティー・ビー・エルの社名を「ZIPAIR Tokyo(ジップエア・トーキョー)」に変更します。

「ZIP」は、圧縮ファイルのフォーマットとして知られています。LCCだけに「圧縮座席に詰め込まれるのか?」と思ってしまいそうです。

もちろん、そんな意味ではなく、JALによると、「英語で矢などが素早く飛ぶ様子を表した擬態語」にちなんだとのこと。矢のように「フライトの体感時間が短い」意味を持たせたそうです。

zipair
画像:JALプレスリリース

787-8型機を導入

ジップエアは、成田を拠点とし、「日本初の中長距離LCC」を標榜しています。ピーチやジェットスター・ジャパンなど、既存の日本のLCCは国内線や短距離国際線が主体ですが、ジップエアは東南アジアや欧米など、中長距離路線への展開を目指しているのが特徴です。

そのため、導入する機材は長距離を飛べるボーイング787-9型機。当初はJALから譲り受けた2機で運航を始め、就航後5年で10機程度に増やす計画です。

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2020年夏スケジュールから

手始めに2020年夏スケジュールで、バンコクとソウルに就航します。バンコクはともかくとして、「中長距離LCC」がソウル就航とは、ちょっとがっかりした人も多いでしょう。

これについて、記者会見でジップエア東京の西田真吾社長は、「中長距離LCCとしての真価を発揮する路線」としてまずバンコクを選び、需要の太いソウルを加えた旨を説明しました。バンコクを軸に、機材運用と需要を考えた結果として、ソウルと組み合わせたということのようです。

ETOPS取得目指す

期待された欧米路線は、今後の課題です。西田社長は、「まずは北米、その後に欧州を考える」と説明しています。

エンジン2機のボーイング787では、太平洋を渡るためにETOPSの基準を満たさなければならず、北米路線はすぐに開設できません。

ジップエアとして、アジアの中短距離路線で実績を積んでETOPSを取得した後、LCCで初めての太平洋を渡る北米路線を開設する方針です。

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北米の就航都市は?

気になる北米路線の就航都市はどこになるのでしょうか。

当サイト2018年5月15日付「JALの新LCCの就航地を予想してみる。バンコク、シアトルあたりが有力か」では、タイトルの通りシアトルを予想しました。成田・シアトル間は所要時間が片道9~10時間。往復24時間以内で運航でき、1つの機材で回せる立地が、LCCには魅力的です。

しかし、JAL本体が、2019年3月に成田~シアトル線を開設することが決まりました。JAL本体が開設したばかりの路線に、ジップエアが後を追って参入するのは考えづらく、シアトルは就航先にならない可能性が高そうです。

ジップエアのアジアの就航先がバンコク、ソウルという需要が太い路線になったことからみて、北米路線の就航先も、同様の選択になると予想できます。となると、ロサンゼルスかサンフランシスコあたりが有力でしょうか。北米路線は、早ければ2021年にも就航します。

シートピッチは?

シートピッチについては、ピーチやジェットスター・ジャパンといった近距離LCCよりはゆったりした設計になります。エコノミークラス症候群などの心配もありますので、長距離LCCでは、身動きが取れないような狭いシートというわけにいきません。

参考となるのは、大西洋路線を運航するLCC・ノルウェージャンです。同社のエコノミーは3×3×3の横9列で、座席幅43cm、シートピッチ78~81cm程度。これは、レガシーキャリアのエコノミークラスと同等です。

ジップエアも、これに倣うなら、太平洋路線を運航する他の大手航空会社のエコノミークラスと比べて、極端に狭い座席にはならないでしょう。

JAL本体のSKY SUITE 787 のエコノミーは横8列で、座席幅約48cm、シートピッチ約84cmと、大手他社に比べてゆったりしています。ジップエアは、それに比べれば狭くなるでしょうが、JAL本体との棲み分けとしてはよさそうです。

運賃は半額程度?

価格については未発表ですが、JALの赤坂祐二社長が2018年6月の株主総会で「LCCなら半額で行ける」と述べたこともあり、大手航空会社の半額程度を目安に設定されそうです。

実際は、支払手数料や荷物料金などLCC特有の手数料がかかり、大手の半額にはならないかもしれませんが、長距離路線は航空運賃が高額なだけに、2~3割でも安ければ、格安旅行者にはありがたいでしょう。

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多くの魅力

各社報道を見ると、中長距離LCCには厳しい見方をする人も多いようです。ただ、旅行者の視点でみれば、ジップエアには多くの魅力があります。

まず、ジップエアは、独自性のある路線ではなく、バンコク、ソウルという、旅行需要が多い区間でスタートしました。旅行者には使いやすい路線ですし、シートピッチが他のレガシーキャリア並みなら、手軽な価格で快適な旅ができそうです。

また、アメリカ西海岸やヨーロッパへ路線ができれば、旅行者にとって旅の選択肢が増えます。とくにヨーロッパへは、格安便といえば東南アジアか中東経由が多いですので、低価格の日欧路線ができれば、これほどありがたいことはありません。

羽田空港との棲み分け

2020年に配分される、羽田空港の新発着枠もポイントです。羽田の新発着枠で、アメリカ路線には、増枠分の半分にあたる1日あたり約24便が配分されます。

これにより、ジップエアが参入を目指すアメリカ路線では、レガシーキャリアは羽田シフトが進むでしょう。そのため、成田を拠点とするジップエアは、棲み分けがしやすくなります。

羽田の新発着枠は、アメリカに半分も回されたため、東南アジア方面への配分は薄くなります。となると、成田拠点のジップエアは、北米・東南アジア間を旅行する際に、乗り継ぎしやすい航空会社になるかもしれません。

航空会社が成功するか否かは経営的な視点が何よりも大事だとは思いますが、同時に旅行者からみて魅力的であることも必要でしょう。その点で、ジップエアの構想には、旅行者が利用したくなる要素があります。ぜひ、中長距離LCCを、日本で根付かせて欲しいところです。(鎌倉淳)

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