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伊丹空港「羽田・福岡」減便も。北海道・沖縄路線拡大へ、国交省で議論

長距離路線制限ルールを見直しへ

国交省の有識者会議で、長距離国内路線の発着枠を制限しているルールについて、見直しが提起されました。伊丹空港における北海道・沖縄路線の増便検討を意味します。報告書では、新幹線と競合する路線からの発着枠転用を示唆しており、羽田や福岡路線が減便される可能性が出てきました。

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国内航空のあり方に関する有識者会議

国土交通省の「国内航空のあり方に関する有識者会議」は、2026年5月22日に第6回会合を開催し、報告書案を公表しました。

報告書案では、「人口減少下での国内航空ネットワークの安定的な維持・拡充のためには、航空需要を喚起していくことも重要」とし、必要な施策の一つとして「モード特性を活かした路線展開」を盛り込みました。

具体的には、新幹線と競合する航空路線の収支が厳しいことを踏まえたうえで、「鉄道と航空の特性を踏まえると、より長距離の路線に航空のリソースが活用されることが一般的には望ましい」と指摘しています。

そのうえで、例として「長距離国内路線の就航に制限のある空港のルール等については見直されるべき」と提言しました。

伊丹空港

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緩和に向け動き出す

「長距離国内路線の就航に制限のある空港」といえば、伊丹空港(大阪国際空港)です。したがって、報告書では、名指しは避けたものの、伊丹空港の長距離路線制限ルールの緩和を求めたといえます。

この内容が、国交省の有識者会議の報告書に盛り込まれたということは、伊丹空港の長距離路線制限が、緩和に向けて動き出すことを意味します。

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1日17往復に制限

伊丹空港には、騒音問題や関西3空港の役割分担を背景に、運用時間や発着枠、就航路線に制限があります。

具体的には、運用時間は7時から21時の14時間運用、発着回数は1日370回で、うちジェット機枠が200回、低騒音機枠が170回に制限されています。低騒音機枠は、かつてのプロペラ機枠ですが、現在はB787やB737、A321などのジェット機も使用できます。

長距離路線の規制として、1,000km超の路線は、ジェット機枠(200回)の5%と低騒音機枠(170回)の15%未満を足した本数が上限と定められています。すなわち、10枠+25枠=35枠です。1往復で2回発着しますので、1日17往復しか運航できません。

伊丹空港から1,000km超とは、おおむね函館以北、那覇以南を指し、北海道と沖縄路線が該当します。そのため、現在、伊丹空港から北海道・沖縄に定期便として運航されているのは、札幌(新千歳)9便、函館2便、那覇6便にとどまっています。

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規制の意味を失って

伊丹空港の長距離路線制限は2005年に始まりました。当時不振だった関西空港へ国内線旅客を移す目的で実施され、札幌便や那覇便が減便されたほか、女満別便や旭川便が関空へと移管されました。また、石垣便は神戸空港に移管されています。

その後、2013年夏ダイヤから段階的に制限が緩和され、現在のルールとなりました。

ただ、LCCピーチの就航以降、関西空港は国内線が充実し、伊丹空港から国内旅客を移す必要はなくなっています。したがって、本来の目的としての伊丹空港の長距離路線制限は、意味を失ってきているといえます。

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地元自治体も要望

地元自治体の伊丹市も、長距離路線の規制緩和を訴えてきました。2025年12月には、伊丹市議会の飛行場問題対策特別委員会の議員らが国交省を訪れ、「国内長距離路線の充実」などを求める要望書を手渡しています。

伊丹市によると、国交省として対応した近畿圏・中部圏空港課長は「大阪国際空港における国内長距離便の拡大については、特に、関西国際空港との関係で、地元関係者との議論を重ねることが大切であると考える」と回答しました。関西空港や地元との協議次第という姿勢をにじませたわけです。

さらに、「『国内航空のあり方に関する有識者会議』を開催し、その中での議論や検討を踏まえて必要な対応を検討したいと考えている」と付け加え、有識者会議で検討をしている旨を伝えています。

つまり、昨年12月に国交省は、伊丹空港の長距離制限について、有識者会議で議論中であることを明らかにしたうえで、協議次第ではルール変更も可能という姿勢を示していたわけです。

こうした流れをみると、ルール見直しは突如浮上したわけではなく、国交省のなかで検討を重ねたうえで、有識者会議のお墨付きを得て、実現に向け動き出したことがうかがえます。

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新幹線競合路線は縮小へ

今回の有識者会議は2025年5月から開催されています。第1回会合で、JAL、ANAの大手航空会社2社は、ヒアリングに対し、新幹線競合路線や、大阪発着路線の収益性が低いことを訴えていました。

また、国交省の提出資料では、「短距離航空路線と高速鉄道の役割分担」とする解説を設け、フランスでは「列車を利用すれば2時間半以内で到達可能な都市間について、短距離航空便の運航を禁止」していることを記載しています。

これらの議論や資料から、国交省としては、大阪発着の新幹線競合路線を縮小する方向で、政策を調整していることがうかがえます。

そのうえで、有識者会議の報告書に「モード特性を活かした路線展開」を盛り込みました。これは、「新幹線特性を活かしやすい路線を減らし、航空特性を活かしやすい路線を増やす」という意味でしょう。

そのうえで、伊丹空港の長距離路線制限の緩和を進める方針を打ち出したわけです。

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長距離路線に枠を転用

ここまでの内容を整理してみましょう。まず、「鉄道と航空の特性を踏まえると、より長距離の路線に航空のリソースが活用されることが一般的には望ましい」という記述からは、新幹線の競合路線を縮小して、その枠を北海道・沖縄路線に転用する方針が読み取れます。

伊丹空港の発着枠はすべて使われていますので、長距離路線にリソースを割くには、短距離路線を縮小する必要があり、縮小対象が新幹線競合路線ということです。

また「フランスでは列車を利用すれば2時間半以内で到達可能な都市間について、短距離航空便の運航を禁止」という記述からは、縮小対象となりうる短距離路線が羽田線や福岡線であることが示唆されています。両区間とも、新幹線で約2時間半の行程だからです。

現実に、JAL、ANAとも、新幹線と競合する羽田~伊丹間や、伊丹~福岡間で機材の小型化を進めています。両区間とも、新幹線の運賃・料金が航空運賃の上値を抑えていて、燃油費など運航コストの上昇を運賃に転嫁できず、収益面で苦戦しているためです。

そのため、報告書では、こうした路線を縮小し、発着枠を札幌や那覇といった長距離幹線に転用したほうがいい、と提言しているわけです。

ざっくりいえば、伊丹空港から羽田や福岡路線を縮小し、札幌や那覇などへの路線に振り向けるわけです。国交省として、そうした政策に舵を切りつつある可能性が高い、ということです。

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伊丹空港の路線別利用者数

ただ、路線の増減便は、航空会社が決めることです。国交省としては、長距離枠のルールを見直すことはできますが、見直した枠を航空会社がどう使うかは決められません。また、どの路線を減便するかも、航空会社の裁量です。

航空会社が増便を望むのは、利用者が多く、座席利用率が高い路線でしょう。

そこで、伊丹空港の主要路線の利用者数を見てみると、札幌線、那覇線とも年間100万人以上が利用していて、座席利用率も80%を超えています。函館線も限られた本数ですが、座席利用率は86%と好調です。

【伊丹空港の主要路線利用者数と座席利用率】
①羽田  511万人 77.2%
②札幌  135万人 86.4%
③那覇  122万人 83.2%
④仙台  85万人 69.6%
⑤鹿児島 65万人 71.7%
⑥福岡  63万人 78.6%
⑦宮崎  63万人 73.9%
⑧熊本  51万人 69.5%
⑨松山  50万人 74.7%
⑩新潟  42万人 73.1%
———-
 函館  18万人 86.6%
※航空輸送サービスに係る情報公開(国交省2024年度)より

すなわち、長距離枠が見直された場合、これら北海道・沖縄路線が増える可能性が高いことは確かでしょう。既存路線のある札幌や函館、那覇だけでなく、現在は季節・臨時運航の女満別、旭川、宮古、石垣などの路線の定期化も検討されるかもしれません。

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仙台、熊本、鹿児島路線が減便も?

一方、伊丹~羽田線は年間511万人が利用しており、利用者数ではダントツの1位です。

座席利用率は77%で、高いとまではいえませんが、伊丹空港発着の他路線に比べて悪い数字ではありません。これだけの需要がある以上、簡単に減便とはいかないかもしれません。

また、伊丹~福岡線も利用者数は63万人にとどまりますが、座席利用率は78%と悪くありません。

主要路線で座席利用率が低いのは、仙台線や熊本線、鹿児島線で、70%前後にとどまっています。これらの路線も新幹線と競合しますので、羽田や福岡よりも、仙台、熊本、鹿児島路線が減便の対象になる可能性もありそうです。

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合理的な判断

なんであれ、現時点では、有識者会議が報告書案をまとめた段階にすぎません。したがって、伊丹空港の長距離路線制限ルールの緩和が、実行されるかは未定です。

ただ、航空各社の国内線の経営環境の厳しさをみれば、収益性の低い路線を縮小して、収益性の高い長距離路線に振り向けるというのは合理的な判断です。そういう判断が可能な裁量を航空会社に与えることは重要でしょう。

したがって、伊丹空港の長距離路線制限ルールの見直しは、遠からず実現する可能性が高そうです。その場合、札幌や函館、那覇路線などが増え、仙台、羽田、福岡、熊本、鹿児島路線あたりが減便対象の候補になりそうです。(鎌倉淳)

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