JR四国が2015年度の決算(2016年3月期)を発表しました。そのなかで、各区間の輸送密度を公表しています。全体的に前年度より改善し、全社平均では3%数字が良くなっています。
各路線・区間の輸送密度を、増減率のランキング形式でご紹介しましょう。
2015年度・JR四国輸送密度「増減率」ランキング
1. 予讃線(海線) 向井原~伊予大洲 444(112.7%)
2. 本四備讃線 宇多津~児島 23309(107.6%)
3. 土讃線 琴平~高知 2845(105.7%)
4. 予土線 北宇和島~若井 307(105.5%)
5. 予讃線 高松~多度津 23923(105.2%)
6. 土讃線 多度津~琴平 5531(105.2%)
7. 予讃線 観音寺~今治 5924(103.7%)
8. 徳島線 佐古~佃 2921(102.9%)
9. 予讃線 今治~松山 7389(102.8%)
10. 土讃線 高知~須崎 4102(102.8%)
11. 牟岐線 徳島~阿南 4833(102.5%)
12. 予讃線 多度津~観音寺 9401(102.4%)
13. 鳴門線 池谷~鳴門 1944(101.3%)
14. 高徳線 引田~徳島 3635(101.1%)
15. 高徳線 高松~引田 4807(101.0%)
16. 予讃線 松山~宇和島 3199(100.3%)
17. 内子線 内子~新谷 3810(99.6%)
18. 牟岐線 阿南~牟岐 741(99.6%)
19. 牟岐線 牟岐~海部 262(94.2%)
全社平均 4632(103.8%)
※カッコ内は前年度比です。同率の場合は、輸送密度が高い方を上位としました。
「伊予灘ものがたり」人気が貢献
トップは前年度比112%増となった予讃線海線。全体で唯一のふた桁増となりました。予讃線の中でも特急が通らないこの区間が上位になったのは、ひとえに「伊予灘ものがたり」のおかげでしょう。「伊予灘ものがたり」は松山~伊予大洲・八幡浜間を結ぶ観光列車で、2014年7月より運行が開始されています。
「伊予灘ものがたり」が投入された後の2015年3月期決算で、予讃線海線の輸送密度は前年度比101.8%増と改善。さらに2015年9月期中間決算では 前年度比117.2%増と大幅に伸び、通期でも112%増と健闘しました。
2015年8月の日本経済新聞「おすすめの観光列車ベスト10」で第1位を獲得したことなどが好影響を及ぼし、利用者増につながったと見られます。乗車率は平均9割程度で全国の観光列車の中でも高く、観光列車の成功例といっていいでしょう。
画像:JR四国
予土線、土讃線も好調
観光列車関連では、予土線も105.5%増と健闘しています。もともとトロッコ列車が運行され観光列車が多い路線でしたが、2014年3月に0系新幹線をイメージした「鉄道ホビートレイン」が投入され、話題になりました。2015年度に輸送密度が改善したのは、この影響があるとみられます。
土讃線の琴平~高知間も、105.7%増となりました。特急も走る幹線区間ですが、ここでは2015年春より運行開始した「絶景!土讃線秘境トロッコ」の影響もありそうです。「大歩危秘境トロッコ」の運転区間を琴平~大歩危に拡大したもので、個人客とともに、旅行会社による平日貸切便の運行も増加したそうです。平均乗車率は76%を記録しました。
土讃線では2017年春より新型観光列車「四国まんなか千年ものがたり」の運行開始が予定されています。これが成功すれば、2017年度はさらなる輸送密度改善もあり得るでしょう。輸送密度3000回復も視野に入ってくるのではないでしょうか。
牟岐線のてこ入れにも期待
一方、ローカル線でも、観光列車の投入されていない牟岐線は振るいません。阿南以南は前年度割れで、牟岐~海部間の輸送密度262はJR四国で最下位です。接続する阿佐海岸鉄道も、2014年度の輸送密度が102と低迷しています。このエリアにも、新たな観光列車の投入などのてこ入れを期待したいところです。
最近のJR四国は、他社にはない一味変わった観光列車を生み出して、ローカル線の活性化を続けています。そのアイデアには改めて脱帽です。(鎌倉淳)