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東京メトロ豊住線、品川地下鉄に事業性あり。国交省が調査結果公表

実現に向け前進

東京メトロ豊住線(有楽町線延伸)と、品川地下鉄の事業採算性の調査結果が公表されました。費用便益比はいずれも高く、実現に向け検討が進められそうです。

交通政策審議会の調査

この調査は、国土交通省交通政策審議会第198号答申に示された「東京圏における国際競争力強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」について、今後の議論に資するデータ等の提供を目的として行われました。

有楽町線の豊洲~住吉間延伸(以下、豊住線)と、都心部・品川地下鉄構想(白金高輪~品川、以下、品川地下鉄)について、最新の人口推計等に基づく需要推計、費用便益分析、収支採算性などを検討したものです。

調査結果は2019年3月1日に開催された「東京圏における国際競争力強化に資する鉄道ネットワークに関する検討会」の第2回検討会において議論され、このほど、その内容が公表されました。

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毎時4本の直通を想定

まず、豊住線については、路線延長5.2kmで、途中3駅を設けます。2駅は新駅で、1駅は東西線と接続する東陽町駅です。

所要時間は約10分で、運行本数は朝ピークが毎時12本、夕ピークが毎時10本、日中が毎時8本を想定しています。有楽町線の月島方面への直通運転は、各時間帯で毎時4本とし、その他は豊洲折り返しとします。有楽町線本線の運行本数が変わらない場合、新木場発着が毎時4本、住吉方面へ割り振られることになります。

豊住線
画像:東京圏における国際競争力強化に資する鉄道ネットワークに関する調査

東西線の混雑緩和に貢献

豊住線の事業費は1,560億円と見積もられました。需要推計や事業性を検討したところ、輸送人員は1日27.3万~31.6万人、費用便益比は2.6~3.0、収支採算性(累積資金収支)は19~29年目に黒字転換します。ただし、メトロの既存線の減収の影響を考慮すると、単年度資金収支は黒字転換せず、開業後40年以内で累積資金収支は黒字になりません。

つまり、東京メトロの既存線区間における減収を考慮した場合、豊住線の収支採算性は発散することになります。ただし、減収となるのは主に東西線で、日本屈指の混雑路線です。そのため、既存路線の輸送人員減少は混雑緩和に資するものであり、調査結果では「社会的な便益を高める効果」があるとしています。

豊住線の開業により、他路線の混雑率がどう変わるかの試算も明らかにされています。メトロ東西線(木場→門前仲町)は20ポイント、メトロ有楽町線(豊洲→月島)は16ポイント、京葉線(葛西臨海公園→新木場)は15ポイントの混雑緩和が見込まれています。

また、有楽町線豊洲駅、東西線東陽町駅での乗降客が増加し、駅構内の混雑が予想されることも指摘されました。

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南北・三田両線直通を想定

品川地下鉄については、路線延長2.5km、途中駅なし、運行本数は全時間帯で毎時12本とし、所要時間は約4分、事業費は800億円と見積もられました。

全ての列車で東京メトロ南北線(麻布十番方面)と都営地下鉄三田線(三田方面)との直通運転を想定し、直通方向は両線に半数ずつを基本としています。ただし、日中のみ南北線方面毎時8本、三田線方面毎時4本として、南北線優先と想定しました。

運賃体系は東京メトロと同等とし、東京メトロの既存線とは通算運賃としています。つまり、営業主体は東京メトロを想定していることになります。

品川地下鉄
画像:東京圏における国際競争力強化に資する鉄道ネットワークに関する調査

銀座線利用者も遷移

品川地下鉄の需要推計や事業性については、輸送人員が1日13.4万~14.3万人、費用便益比が2.5~3.1、収支採算性(累積資金収支)は16~19年目に黒字転換します。メトロの既存線の減収の影響を考慮した場合、24~28年目の黒字転換です。

品川地下鉄の整備により、南北線(目黒→白金台)の混雑率は17ポイント緩和し、銀座線(新橋→虎ノ門)は7ポイント緩和します。新橋駅で銀座線に乗り換えて溜池山王方面に向かっていた旅客が、品川地下鉄経由で南北線に流れるという見通しで、これらの減収を考慮しても、24~28年目には黒字転換するということです。

品川駅は並行接続が有力

品川地下鉄は、品川駅の位置について2案を想定しました。Aルートは国道15号線に平行して接し、Bルートは直交します。

品川地下鉄駅位置
画像:東京圏における国際競争力強化に資する鉄道ネットワークに関する調査

輸送人員は、Aルートが1日13.4万人、Bルートが7.8万人となり、他路線との乗換移動距離が比較的短いAルートの方が多くなることが示されました。

このため、品川地下鉄は国道15号線直下に、JR・京急線に並行する形で建設される可能性が高くなりました。つまり南向きで建設される可能性が高まったわけで、将来の延伸可能性を考慮しても、大きなポイントです。

資料のAルートを見ると、品川地下鉄は、国道1号から整備中の環状4号の地下を通って、国道15号に入る形になりそうです。

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「事業性が認められる」

これら検討結果から、豊住線と品川地下鉄は、いずれも費用便益比で良好な結果となりました。社会経済的に有益な路線であることが示されたわけです。

収支採算性についても、地下高速鉄道整備事業費補助の適用を前提とした場合、累積資金収支、累積損益収支は、開業後40年以内に黒字転換する結果となりました。

調査結果には、「両路線はそれぞれ事業性が認められる路線である」と明記されました。

課題もあり

課題としては、豊住線では、上述したように東陽町駅、豊洲駅での駅構内混雑が増大する可能性が指摘されています。そのため、事業推進をする場合、「両駅の混雑対策を含めた、技術的検討の更なる精査が必要」とされました。

品川地下鉄では乗り換え条件が路線の輸送需要に大きな影響を及ぼすことが示されました。そのため、駅位置・事業費などについて、「技術的検討を踏まえ、改めて事業性を検討する必要がある」としています。

品川駅周辺は再開発が行われているさなかでもあり、「それらの開発と整合し、利便性の高い乗換を確保しつつ、街づくりに寄与できるように、速やかな取組が望まれる」との指摘もありました。

前向きな表現

調査結果は、「両路線の有効性が確認される一方で、課題も明らかになったため、今後、
各路線の関係者間で事業化に向けたより具体的な検討が進められるべきである」と、前向きな表現でまとめられています。

このため、両路線は建設に向けて大きく前進したといっていいでしょう。建設期間は、両線とも約10年間を見込んでいます。今後、事業化に向けて検討が進められた場合、早ければ2030年代にも両地下鉄が実現する可能性が出てきたといえそうです。(鎌倉淳)