JR北海道「札幌~旭川60分」は実現できるのか? 在来線高速化、新千歳空港は25分!

北の大地に「スーパー特急」?

JR北海道が、札幌~旭川間を60分、札幌~千歳空港間を25分で結ぶ在来線高速化構想を打ち出しました。実現は可能なのでしょうか。

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中期経営計画

JR北海道が2026年までの中期経営計画を発表しました。そのなかで注目を集めているのが、在来線の高速化計画です。

北海道新幹線札幌延伸開業後の構想として、「特に利用の多い在来線区間の輸送品質向上」に取り組みます。具体的には函館線札幌~旭川間と、千歳線札幌~新千歳空港間で、所要時間の大幅短縮を目指すことを明らかにしました。

札幌~旭川間は現在1時間25分の所要時間を最速60分に。札幌~新千歳空港間は現在33分を最速25分にすることを目指します。また、新千歳空港駅を途中駅構造にする「新千歳空港スルー化」についての検討もおこないます。

特急カムイ789系

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160km/h運転に挑戦

札幌~旭川間は136.8kmあり、現在は特急「カムイ」「ライラック」が、120km/h運転で1時間25分かかっています。

これを60分で結ぶとなれば、表定速度137km/hが必要です。となると、最高速度160km/h以上で運転することが求められるでしょう。

狭軌在来線の160km/h運転は北越急行時代の特急「はくたか」で例がありますし、札幌~旭川間は直線区間が長いので、技術的には160km/h運行をすることは不可能ではないかもしれません。

ただし、現在のルールでは、在来線で131km/h以上の運行をするには踏切を除却する必要があります。北越急行も全線が立体化されていて、踏切がありませんでした。つまり、函館線札幌~旭川間でも、160km/h運転をするなら、全線の立体化が求められます。

しかし、札幌~旭川間で立体化されているのは、札幌や旭川近郊などわずかな区間にとどまります。全線立体化となれば、新幹線を作るのに匹敵するくらいの予算と時間がかかるに違いありません。

札幌~旭川60分計画
画像:JR北海道グループ中期経営計画2026

 
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札幌~新千歳空港間は?

札幌~新千歳空港間は46.6kmで、25分で結ぶなら表定速度112km/hが必要です。比較として、特急「サンダーバード」が湖西線区間(堅田~近江今津間)で、最高速度130km/hの表定速度118km/hを実現しています。

そのため、千歳線でも、札幌駅~新千歳空港間を全力疾走でノンストップなら、最高速度130km/hで25分の所要時間を実現できるかもしれません。

とはいえ、札幌近郊の全区間を全力疾走というわけにはいかないでしょうし、「25分」というのは、最高速度のさらなるアップを前提としているように思えます。となると、こちらも千歳線の全面的な立体化が必要になりそうです。

札幌~新千歳空港25分
画像:JR北海道グループ中期経営計画2026

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新千歳空港スルー化と関連

この区間は、新千歳空港駅のスルー化とも関連しています。

新千歳空港スルー化は、現在行き止まりになっている新千歳空港駅を、室蘭線方面や石勝線方面にも抜けられる構造にするものです。実現すれば、室蘭方面の特急も新千歳空港駅を経由することができるようになります。

特急が新千歳空港駅に乗り入れれば、札幌からの途中停車駅を絞った列車を空港アクセスに使えます。そうすれば、快速「エアポート」より表定速度の高い列車を設定することが可能になり、時間短縮に大きな効果を発揮します。

したがって、新千歳空港スルー化と最高速度向上を組み合わせれば、「25分」を実現できるかもしれません。

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路線の全面的な作り直し

こう検討してみると、JR北海道が打ち上げた「在来線高速化構想」とは、在来線の立体化推進と同じ意味と捉えることができます。

実際、JR北海道も実現へのプロセスとして「軌道強化」「線形改良」「最高速度の向上」「高架化による踏切解消」の4点を挙げています。これは、路線の全面的な作り直しを意味します。

見方をかえれば、札幌~旭川間と札幌~千歳空港間に「狭軌新幹線」を求めたとも解釈できます。古い表現なら「スーパー特急」です。両区間とも新幹線の基本計画区間に含まれていますので、その狭軌での実現を求める姿勢を明らかにした、と受け取ることもできるでしょう。

JRとしては、新幹線計画とリンクさせる意図はなく、たんなる在来線の改良計画として進めたいのかもしれません。とはいえ、JR北海道単独でできる事業ではありませんので、国や道の全面的な支援で作るほかなく、JR北海道は「受益の範囲」で負担する、という形になるでしょう。

新幹線計画でないのなら、新たなスキーム作りから始めなければならない話に思えます。

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企業としての「次の目標」

正直なところ、JR北海道の在来線高速化計画が、近い将来に実現するとは思えません。実際、JR北海道も「北海道新幹線開業後」の取り組みと位置づけています。

北海道新幹線開業後、従業員のモチベーションを高める意味でも、企業の次なる目標として、夢のあるプランを打ち上げたい、という趣旨もあるようです。

遠い将来の実現性については何ともいえませんが、在来線の高速化が全国のJRに共通するテーマであることは確かです。直線的な北海道の鉄路は、高速化のモデルケースとして適していそうですし、先進事例として検討の価値はありそうです。(鎌倉淳)

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