航空会社の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)が大幅に値下がりします。JALが12月分より一気に3段階引き下げることを明らかにしました。円高と燃油安の恩恵ですが、今後の見通しとあわせて見てみましょう。
12-1月分を発表
国際線旅客が航空券購入時に支払う燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)について、JALは2024年12~2025年1月発券分で、価格を引き下げることを発表しました。
燃油サーチャージは、燃油市況価格の直近2か月間の平均に基づき算定されます。
JALによりますと、12-1月発券分の基準となるシンガポールケロシンは、2024年8月から9月の市況価格が88.69米ドルでした。また、同期間の為替平均は1ドル144.88円でした。これを乗じた1バレルあたりの基準金額は12,849円となりました。
欧米往復50,000円
10-11月発券分は、市況価格97.89米ドル、為替157.95円、基準価格15,462円でした。この2ヵ月で燃料価格は9.4%値下がりし、為替は8%も円高に振れています。燃料の値下がりに円高が加わって、基準価格は大幅に下落しました。
これにより、JALでは12月1日発券分から燃油サーチャージの価格を値下げします。12-1月発券分のひとり1区間片道あたりの燃油サーチャージは、日本から北米・欧州・オセアニアなどが25,000円に、ハワイ・インドなどが16,000円に、タイ・シンガポールなどが13,000円になります。
これは片道の金額なので、往復の場合、北米・欧州・オセアニアなどが50,000円に、ハワイ・インドなどが32,000円に、タイ・シンガポールなどが26,000円となります。価格水準としては、コロナ禍が明けてから最安値です。
6ヶ月連続で据え置き
過去1年間の燃油サーチャージは、2023-24年12-1月分で高値を付けたあと調整し、4-5月分で底を打ち、6月から11月まで6ヶ月連続で据え置かれました。国際燃油価格は下落基調でしたが、為替が緩やかに円安に進んでいたためです。
しかし、世界的な景気減速懸念から国際燃油価格の下げ足が強まり、7月末の日銀利上げをきっかけに為替は大幅に円高に振れました。燃油価格の下落と円高があわさって、サーチャージも大幅に引き下げられることになったわけです。
過去1年の燃油サーチャージの変化は下表の通りです。
路線 | 23年 10-11月 |
23-24年 12-1月 |
24年 2-3月 |
24年 4-5月 |
24年 6-11月 |
24-25年 12-1月 |
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北米・欧州・中東・オセアニア | 33,400 | 47,000 | 43,600 | 33,000 | 35,000 | 25,000 |
ハワイ・インドネシア・インド・スリランカ | 21,300 | 30,500 | 28,200 | 21,000 | 22,500 | 16,000 |
タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ | 17,900 | 24,700 | 23,000 | 18,000 | 18,500 | 13,000 |
グアム・パラオ・フィリピン・ベトナム・モンゴル | 11,000 | 17,800 | 16,100 | 11,000 | 12,000 | 8,000 |
東アジア(韓国、モンゴルを除く) | 8,400 | 11,400 | 10,300 | 8,500 | 9,200 | 6,200 |
韓国 | 3,500 | 5,900 | 5,300 | 3,500 | 4,000 | 2,500 |
※片道あたり、発券日基準。
適用条件「ゾーンJ」に
今回の燃油サーチャージ額は、JALが公表している適用価格表の「ゾーンG」に該当します。直近の最高値だった1年前(2023-24年12-1月)の「N」の7ランク下となっています。
ゾーン | 基準価格 | サーチャージ額 |
---|---|---|
A | 6,000円~7,000円 | 4,500円 |
B | 7,000円~8,000円 | 8,900円 |
C | 8,000円~9,000円 | 13,400円 |
D | 9,000円~10,000円 | 16,000円 |
E | 10,000円~11,000円 | 18,500円 |
F | 11,000円~12,000円 | 21,000円 |
G | 12,000円~13,000円 | 25,000円 |
H | 13,000円~14,000円 | 29,000円 |
I | 14,000円~15,000円 | 33,000円 |
J | 15,000円~16,000円 | 35,000円 |
K | 16,000円~17,000円 | 38,000円 |
L | 17,000円~18,000円 | 41,000円 |
M | 18,000円~19,000円 | 44,000円 |
N | 19,000円~20,000円 | 47,000円 |
O | 20,000円~21,000円 | 50,000円 |
今後の見通しは?
基準価格は、6-7月が15,373円、8-9月が15,387円、10-11月が15,462円と、3期(6ヶ月)連続で15,000円台だったところ、今回、12,000円台に急落しました。
最近の燃油価格は、9月を底としてやや持ち直しています。直近の数字を見ると、基準となるシンガポールケロシンの市況価格は93米ドル程度で、今回の基準価格88.69から5%程度値上がりしています。
為替相場では円安が進んでいて、150円近辺での値動きが続いています。今回の基準価格の144.88円に比べると3%ほど円安です。となると、次回の燃油サーチャージは値上がりしそうです。
このままの状況で推移すれば、燃油価格の上昇と円安の影響で、次回の基準価格は13,000円台に上昇する可能性があります。その場合、燃油サーチャージのゾーンは1段階上の「H」になるでしょう。欧米往復は58,000円に上がります。
ただ、これから日本で総選挙、アメリカで大統領選挙を控えます。中東の戦争は拡大の兆しがあり、国際情勢は予断を許しません。世界的な景気減速懸念もあります。
2月以降のサーチャージは多少値上がりするかもしれませんが、その後については見通せません。とりあえず、12月から1月にかけては海外航空券購入のチャンスと言えそうです。(鎌倉淳)