つくばエクスプレスの東京駅延伸が、正念場を迎えています。沿線自治体では、高市内閣の「日本成長戦略」に位置づけることを求める決議を採択し、国策化により事業を推進しようとする動きを強めています。ただ、延伸区間の東京都と千代田区は冷淡で、実現は見通せません。
期成同盟が決議
つくばエクスプレス(TX)の東京駅延伸計画は、秋葉原~東京間の約2kmを建設するものです。計画中の都心部・臨海地域地下鉄に乗り入れて、有明・東京ビックサイトまで直通運転する構想もあります。
東京駅までの延伸計画はTX開業当初からありますが、現在まで実現していません。そこで、TXの沿線自治体は東京駅延伸へ向けた期成同盟会を結成し、2026年4月6日、発足後初となる決起集会を東京都内で開きました。
集会では、TXの東京駅延伸と、臨海地下鉄への接続を求めるよう決議しました。決議文は3項目で、①国の成長戦略への位置づけ、②財政支援を含めた国による新たなスキームの策定、③沿線全自治体の連携強化と合意形成への働きかけ、を求めました。

「成長戦略」狙う
ポイントは、TX東京駅延伸を「成長戦略」に位置づけることを求めた点です。「日本成長戦略」は、高市内閣が策定を進めている大方針で、いわば「国策」です。
決議文では、TX東京駅延伸を①「成長戦略に位置づけ」たうえで、②「財政支援を含めた国による新たなスキームの策定」を求めています。①②は一体的な要望といえ、成長戦略に紐付く補助金の獲得を狙っていることがうかがえます。
つくばエクスプレス東京駅延伸の事業費は、2025年の茨城県の試算で約1750億円とされています。通常の鉄道建設の枠組みでは沿線自治体の負担が重くなりすぎるため、「国策」として新たな枠組みを求めた形です。

異質な要望
決議文の①②が国に対する財政支援の要望であるのに対し、「③沿線全自治体の連携強化と合意形成」は異質です。沿線自治体の期成同盟が、沿線自治体に対して連携と合意を求める内容になっています。
期成同盟には、沿線の基礎自治体11市区のうち10市区が参加し、延伸先の中央区も加わっています。しかし、唯一、千代田区は参加を見送りました。また、広域自治体として東京都、埼玉県が参加していません。
延伸区間はすべて東京都内です。また、秋葉原駅から神田駅付近までは千代田区で、延伸区間の半分以上を占めます。都と千代田区が期成同盟に参加していないことは、事業を推進するうえで、大きな問題となります。
つまり、決議文③の要望は、「沿線全自治体」の「全」がポイントで、東京都と千代田区に対し、事業への協力を求めていることがうかがえます。
都知事に要望も
じつは、決議に先立つ1月29日に、期成同盟の沿線11市区と茨城・千葉両県の首長は、連名で東京都の小池百合子都知事に宛てて、TXの東京駅延伸に協力するよう要望書を提出しています。
今回の決議文の3項目めは、要望書につづく、東京都への働きかけといえます。1月に要望書を渡しても手応えがなく、名指しを避けたものの「決議」に至った形です。
期成同盟参加の自治体が、東京都の協力を得ることに四苦八苦していることが読み取れます。それだけ東京都がTX延伸に冷淡ということでしょう。
千代田区にメリットなく
東京都も千代田区も、つくばエクスプレスが東京駅まで延伸することによるメリットは限られています。
千代田区の場合、TXが延伸しても、区内に新駅ができるわけでもなく、秋葉原駅の乗降客が減るだけです。しかし、延伸となれば事業費の一部を負担しなければなりません。
事業費は沿線自治体で分担する想定なので、千代田区だけが重い負担をするわけではなさそうです。しかし、同区も財政負担を求められるでしょうし、事業地が自区内である以上、実務的な負担がのしかかります。
となると、区として、建設を推進する理由はなく、期成同盟に参加する意味もない、ということでしょう。
中央区参加の理由
いっぽう、沿線外からは、中央区が期成同盟に参加し、決議文にも署名しました。延伸の終点となる東京駅は日本橋の再開発地域に建設されますので、沿線から利用者が集まれば、同区にとってメリットがあります。
また、TXが東京駅に延伸した場合、有明方面を結ぶ臨海地下鉄に乗り入れる予定です。途中、銀座や築地といった同区の繁華街を経由しますので、TX沿線からの集客が期待できます。こうしたことから、中央区は延伸に協力する意味がありそうです。
東京都の立場
では、東京都の立場はどうでしょうか。
TX東京駅延伸で、東京都側のメリットとして指摘されてきたのが、都が推進する臨海地下鉄の採算性の改善です。東京駅をTXと共用することで事業費を分担でき、直通運転により利用者増も期待できます。
また、TXとの直通により、茨城県などTX沿線に車両基地を建設できるというメリットもあります。
しかし、臨海地下鉄沿線では人口が急増していて、単独で採算性を確保できる程度の利用者は見込めるようです。また、車庫問題についても、りんかい線との間に連絡線を設置し、品川区の八潮車両基地を活用することで解決が可能となりました。
つまり、臨海地下鉄の建設に関し、TX延伸によるメリットは限られているということです。
扱いが違う
実際、東京都議会で、都側はTX東京駅延伸について、「関係自治体や運営会社の勉強会で、社会経済的な意義や効果等を検討中と聞いている」と冷めた答弁をしています(2026年2月26日定例会)。
いっぽう、臨海地下鉄については、「将来的なつくばエクスプレス東京延伸との接続も見据えつつ、臨海地下鉄の早期事業化に向け、着実に取り組む」と答弁しています(同)。
TX延伸は「将来的」という時間軸で、「聞いている」という「他人ごと」です。臨海地下鉄は、「早期事業化」という時間軸で、「着実に取り組む」という「自分ごと」です。両者の扱いが全く異なるのです。
この答弁からも、東京都はTX延伸と臨海地下鉄とを切り分けていて、TX延伸について消極的であることがうかがえます。TX延伸はあくまで将来的な構想であり、臨海地下鉄との同時開業を目指していないことは明らかです。
そもそも秋葉原~東京間には他の鉄道路線があり、臨海地下鉄に比べ、TX延伸は都民にとって切実に必要な路線とはいえません。その点で、都の優先順位の判断は妥当といえば妥当です。
突破口になるか
とはいえ、東京都と千代田区は日本の首都を構成する自治体です。地方自治体といっても別格の存在ですから、国策として予算をつければ協力するでしょう。つまり、「成長戦略」への位置づけは、東京都と千代田区の協力を得るための突破口になり得ます。
4月6日の決起集会には、片山さつき財務相も姿を見せ、「TX延伸でGDPが増える好循環になる可能性が極めて高い」と持ち上げました。
現役財務相が出席して前向きな発言をした以上、TX東京駅延伸が、成長戦略に盛り込まれる可能性は高そうです。
臨海地下鉄では、事業化に向けた調査が2年後の2028年3月まで続けられます。臨海地下鉄に対する都の本気度は高く、調査が終われば、着工が見えてきます。期成同盟としては、臨海地下鉄の着工前に、TX延伸のメドをつけておきたいところでしょう。
一気呵成にスキームを策定し、都と千代田区の協力を得られるのか。この2年が正念場になりそうです。(鎌倉淳)






















