日本発着の国際旅客航路について、運賃・料金、所要時間、格安利用術などを比較しながら、2025年の最新情報でまとめてみました。釜山、上海航路に新造船が投入されたほか、石垣島から台湾への新航路の開設も予定されています。
7社7航路
まずは、日本に発着する、民間旅客が乗船できる国際航路を一覧表にしてみました。開設予定の石垣・基隆航路を含め、7社7航路があります。
旅客運賃はオフシーズンの最低運賃です。車両運賃は4m~5mクラスの乗用車を示しています。いずれも時期により価格が変わります。燃油サーチャージや、諸手数料などが別途かかる場合があります。
運航本数は1週間あたりの標準的なスケジュールを示していて、路線により休航日があったり、時期や曜日により減便や増便がおこなわれることもあります。
(配信先で表が崩れて読みづらい場合は、こちらで画像をご覧いただけます)
航路 | 運航会社 | 所要時間 | 運航本数 (週) | 旅客運賃 (片道) | 車両運賃 (片道) |
---|---|---|---|---|---|
下関 釜山 | 関釜フェリー | 12時間 | 7往復 | 9,000円 | 35,000円 |
博多 釜山 | カメリアライン | 6時間 | 6往復 | 12,000円 | 40,000円 |
大阪 釜山 | サンスターライン | 17時間 | 3往復 | 20,000円 | — |
比田勝 釜山 | サンスターライン | 1時間10分 | 7往復 | 9,500円 | — |
比田勝 釜山 | 大亜高速海運 | 1時間30分 | 5往復 | 9,000円 | — |
厳原 釜山 | サンスターライン | 2時間10分 | 2往復 | 11,500円 | — |
厳原 釜山 | 大亜高速海運 | 2時間30分 | 2往復 | 11,000円 | — |
厳原 釜山 | スターライン | 1時間30分 | 未確認 | 未確認 | — |
大阪 神戸 上海 | 日中国際フェリー | 50時間 | 1往復 | 25,000円 | — |
石垣 基隆 | やいまライン | 7時間 | 未定 | 未定 | — |
※旅客運賃は大人1人の最安クラスの最低片道価格を表示。クラスや季節により変動する。車両運賃は4m~5mの乗用車。いずれも燃油サーチャージ、諸手数料が別途かかることがある。
※運航本数は週あたりの標準的な数字。路線により休航日あり。
※スターラインはウェブサイトを表示できず、運航情報は未確認。
※石垣・基隆航路は2025年9月就航予定。
釜山、上海、基隆へ
現在運航している日本発着の国際航路は、韓国・釜山と中国・上海を目的地とする6航路です。9月に石垣~基隆(台湾)航路が開設される予定なので、7航路となります。
かつてはロシアへの航路もありましたし、中国では天津や青島などの発着便もありました。しかし、航空運賃の下落と新型コロナの影響で淘汰され、近年は需要の大きい区間に絞られてきています。
順にみていきましょう。
下関~釜山
日本発着の国際航路の代表格が、下関~釜山間の関釜フェリーです。戦前、日本が朝鮮半島を統治していた時代は「関釜連絡船」という鉄道連絡船が設定されていた区間です。
戦後、1970年に関釜フェリーが運航を開始。コロナ禍で旅客取扱いを休止していましたが、2022年12月に再開しました。
毎日運航で、所要時間は下関発が12時間15分、釜山発が10時間45分です。いずれも夜行便です。
使用船舶は国際トン数16,000トン級(国内トン数8,000トン級)の大型フェリーで、日本船「はまゆう」と韓国船「星希」が交互運航します。
客室設備は2等からスイートまで4クラスに分かれ、2等は大部屋です。船内設備は両船で多少異なりますが、レストラン、浴場、免税売店、コンビニ、カラオケルームなどを備えます。
旅客運賃は2等で片道9,000円。車両運賃は片道35,000円で、別途、通関手数料や保険料がかかります。2025年10月1日から値上げが予定されていて、旅客運賃は12,000円になります(車両運賃は変更なし)。
割引運賃は、往復割引(復路10%)、学生割引(20%)などがありますが、2025年10月1日に廃止されます。かわりにインターネット予約割引(30%)が導入されます。
下関国際ターミナルは、JR下関駅東口から人口地盤を通って徒歩で約7分です。釜山港国際旅客ターミナルは、KTX釜山駅まで徒歩で約20分です。
博多~釜山
釜山へは、博多(福岡市)からもフェリー航路があります。「カメリアライン」です。
毎日運航で、所要時間は6時間。博多発が昼行便(12時30分発)で、釜山発が夜行便(20時00分発)です。釜山発便は、出入国審査の実施時間の影響で、釜山20時発、福岡7時30分着という、所要時間の長いスケジュールになっています。
使用船舶は20,000トン級(国際トン数)の大型フェリー「ニューかめりあ」です。国内トン数では10,000トン級です。
2等から特別室まで4クラスの客室を備えます。2等室は大部屋です。船内設備として、レストラン、浴場、免税売店、カラオケルーム、ゲームコーナーなどを備えます。
旅客運賃は2等で片道12,000円。車両運賃は片道40,000円、往復50,000円(~1,500kg)で、別途、通関手数料などがかかります。
割引運賃は、往復割引(復路10%)、学生割引(20%)などがあります。学割は写真付き学生証の呈示で適用されます。ただし、30歳未満のみが対象です。
博多港国際ターミナルは、博多駅からバスで約20分です。
大阪~釜山
大阪~釜山間にも航路があります。サンスターラインが「パンスタークルーズ」という名称で週3往復運航しています。大阪を17時に出発し、翌10時に到着します。釜山発は16時発で翌9時に到着します。所要時間は17時間です。
使用船舶は「パンスターミラクル」で、2025年4月に就航した新鋭船です。22,000トン級(国際トン数)の大型フェリーです。国内では11,000トン級です。
客室は、ロイヤルスイート、バルコニースイート、オーシャンビュー、インサイドなどがあり、オーシャンビューとインサイドはカプセル式です。大部屋はありません。
船内設備としては、屋外プール、ジョギングトラック、VIPラウンジ、マッサージルーム、セラピールーム、サウナ、フィットネス、免税店などを備えます。
旅客運賃は、インサイドの最安値で片道20,000円、往復40,000円です。シニア割引や学生割引はなくなりましたが、9月19日まで、期間限定で学生割引キャンペーン(30%割引)を実施中です。
大阪港国際フェリーターミナルは、地下鉄コスモスクエア駅から無料シャトルバスで約5分です。大阪南港フェリーターミナルからは離れています。

対馬~釜山
対馬~釜山間にも高速船が運航しています。対馬の比田勝港・厳原港と釜山港を結んでいます。
大阪・釜山航路と同じサンスターラインが「パンスター対馬リンク」(457トン)で2路線を運航しています。比田勝港・厳原港と釜山港を結ぶ路線が週7便の運航です。うち、厳原発着は週2便で、比田勝港を経由します。所要時間は、比田勝~釜山が1時間10分、厳原~釜山が2時間10分です。比田勝経由便は3時間です。
運賃は比田勝~釜山が9,500円(平日)~11,500円(週末)。厳原~釜山が11,500円(平日)~13,500円(週末)です。

比田勝・厳原~釜山間には、大亜高速海運の「SEA FLOWER」も運航しています。比田勝が週5便、厳原が週2便です。所要時間は、比田勝~釜山が1時間30分、厳原~釜山が2時間30分です。
運賃は比田勝~釜山が9,000円、厳原~釜山が11,000円です。学割もあります(20%)。
そのほか、比田勝・釜山航路にはスターラインの「NINA」も運航しているようですが、ウェブサイトにアクセスできない状況になっていて、詳細は定かではありません。
大阪・神戸~上海
つづいて中国航路です。現在運航しているのは大阪・神戸~上海間のみで、日中国際フェリーが手がけています。週1便で、大阪発と神戸発の交互運航です。両港合わせて週1便です。
新型コロナ禍以降、上海の旅客ターミナルの改装工事もあって、旅客輸送が中断していましたが、2025年6月に旅客取扱いを再開しました。
日中間フェリーの先駆けといえる航路で、1985年に開設されました。2024年に新造船の「鑑真號」が投入されました。20,000トンクラスの大型フェリーで、金陵船舶(威海)の建造です。
客室は、デラックススイートルーム、デラックスルーム(洋室)、和室などがあります。和室は8名で、かつての大部屋ではなくなりましたが、雑魚寝の雰囲気は残しています。
客室設備は、レストラン、免税店、バー・ダンスホール、スポーツジム、キッズランド、多目的ホール、カードルーム(麻雀)、ゲームルームなどを備えます。大浴場はありません。
旅客運賃は、和室で片道25,000円、往復42,000円です。学生は片道22,000円、往復38,000円です。「フェリー」ですが、自家用車の航送はおこなっていません。
所要時間は揚子江の潮の状況により異なりますが、約50時間です。2泊3日の行程です。
大阪港はパンスタークルーズと同じ大阪港国際ターミナルで、地下鉄コスモスクエア駅からシャトルバスがあります。神戸港はポートライナーのポートターミナル駅と直結しています。上海港は地下鉄12号線国際客運中心駅から徒歩約5分です。

石垣~基隆
最後、台湾航路をご紹介します。2025年9月に、石垣港と台湾の基隆港を結ぶ航路が開設されます。商船やいまが運航する「YamimaLine(やいまライン)」です。
所要時間は約7時間です。詳細なスケジュールや運賃などは未発表です。
就航する船舶は「YAIMAMARU(やいま丸)」です。大阪~釜山航路で使われていた「パンスタードリーム」を購入し、転用します。
総トン数は21,535トン、旅客定員数は545名の大型フェリーです。大阪・釜山航路ではレストラン、ラウンジ、大浴場などを備える豪華フェリーとして知られてきました。さかのぼれば、かつて東京~那智勝浦~高知航路に使われていたフェリー「さんふらわあくろしお」をリニューアルしたものです。
石垣市では、大きな船内改装をせずに使う方針を明らかにしています。そのため、基本的な船内設備は、釜山航路のままになるとみられます。
「クイーンビートル」は廃止
以上が、現在日本を発着している国際旅客航路の全てです。
このほか、鳥取県の境港と韓国・東海を結ぶ「イースタンドリーム号」が、2024年8月に運航を開始したようですが、現在、同社のウェブサイトを見ると、定期航路としては表示されません。
また、博多~釜山を結んでいたJR九州の高速船「クイーンビートル」は、浸水隠蔽問題を受けて運航再開を断念し、廃止となっています。
国際航路の利用術
かつては、海外格安旅行の手段としてバックパッカーに愛用された国際航路ですが、航空運賃の自由化により価格競争力を失い、旅行者の利用が激減。近年は、大きな荷物を運ぶ利用者向けの性格が濃くなっています。
そのため、残っているのは、距離的に近く往来の多い航路がほとんどです。LCCが充実しているいま、価格面に着目すると、船で海外旅行をする意味は見出しにくいでしょう。
ただ、船旅ならではの楽しみもあります。たとえば、瀬戸内海を通る国内航路は夜行便がほとんどですが、大阪~釜山航路は日中に航行します。瀬戸内海の景色を楽しむクルーズ船として利用することもできます。
中国大陸と直結する大阪・神戸~上海航路は、瀬戸内海を経て東シナ海を横断する魅力的な旅を楽しめます。かつてはバックパッカーに人気の航路で、上海を起点にアジア各地へ多くの旅行者が利用していました。
船で日本を離れるのには独特の情感がありますし、時間に余裕のある旅行者にはぜひおすすめしたいところです。(鎌倉淳)