ユナイテッド、成田空港を再ハブ化へ。以遠権フライト3路線を追加。2025年夏ダイヤで

ウランバートル、高雄、コロール

ユナイテッド航空が成田~ウランバートル、高雄、コロール線を開設します。以遠権を用いて、成田空港を再びハブ化していくようです。

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ウランバートル、高雄、コロール

ユナイテッド航空は、2025年夏ダイヤで、成田からウランバートル(モンゴル)、高雄(台湾)、コロール(パラオ)の各路線を開設すると発表しました。

就航日はウランバートルが5月1日、高雄が7月11日です。コロールは未発表です。また、現時点で詳細なスケジュールなどは発表されておらず、予約もできないようです。

ユナイテッド航空
画像:ユナイテッド航空の737-8。グアム線のプレスリリースより。

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米本土便を延伸

いうまでもありませんが、アメリカの航空会社が成田から第三国への航空路線を単独で開設することはできません。したがって、これらの路線はアメリカ諸都市と成田を結ぶ路線を、以遠権を使って延伸する形になるのでしょう。

以遠権とは、外国航空機が当該国に到着した後、さらに第三国へ運航ができる権利です。

すでに、ユナイテッドは、2024年7月から成田~セブ線を以遠権路線として開設しています。この路線は、成田~ロサンゼルス線と同便名で設定されていて、便名上はロサンゼルス~成田~セブとなっています。

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成田をハブとして活用

ユナイテッド航空は、成田空港発着のアメリカ路線として、ニューアーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ヒューストン、デンバー、グアム、サイパンを有しています。

このうち、上述のようにロサンゼルス線はセブへの以遠権を行使しているので、新設3路線は、それ以外の米本土路線の便を延伸する形になりそうです。

ユナイテッド航空はプレスリリースで、「新設便は、東京でユナイテッド航空の太平洋横断便とアメリカ本土の5つのハブ空港にシームレスに接続します」と謳っており、成田空港をユナイテッド航空のハブとして活用する方針を明確に示しています。

成田空港に同社便を同時間帯に発着させることで、アメリカ各地からの旅客を成田で乗り換えさせ、アジア各地に旅行できるようにするのでしょう。

成田空港

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一度は姿を消したはずが

中高年の旅行者ならご記憶でしょうが、国際線が首都圏で成田空港のみに発着していた時代は、アメリカ系航空会社が以遠権を行使して、成田~東南アジア間のフライトを多数運航していました。成田空港をハブとして、東南アジアへのネットワークを構築していたのです。

一時期はアメリカ系航空会社が成田空港のスロットを3割近くも占有しており、日本の航空会社に対する権益侵害と批判されることもありました。

しかし、2009年の日米航空自由化協定で「成田空港における米国既得権の是正」が盛り込まれ、羽田空港の国際化も進んだことで、成田空港の以遠権フライトは減っていきます。2020年3月に廃止されたデルタ航空の成田~マニラ線を最後に、アメリカ系航空会社による成田空港の以遠権フライトは姿を消しました。

ところが、2024年にユナイテッド航空が成田~セブ線で復活させ、さらにウランバートル、高雄、コロールと路線を増やすことを明らかにしたわけです。外国航空会社による「成田の再ハブ化」がおこなわれるとなれば、穏やかに受け取れない方もいるのではないでしょうか。

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2000年代との違いも

ただ、2000年代までの以遠権フライトとの違いもあります。何より、就航先が大きく異なります。当時は台北やバンコク、シンガポールといったアジアの主要都市へのフライトが設定されていて、日本の航空会社の主力路線と重なっていました。

これに対し、新たな設定先は、それほど需要の多くない路線です。アメリカ本土直行便では需要が足らない路線に、日本からの客も集めて飛ばそう、というユナイテッドの狙いが見て取れます。

また、成田~セブ、ウランバートル、高雄、コロールのいずれも、日系航空会社が単独で定期便を設定している区間ではありません。その点で、日本への権益侵害と批判されにくい路線を選んでいるともいえます。

とはいえ、2010年代に終わったとみられていた「以遠権を使った成田ハブ」が、まさか2025年に復活するとは驚きを禁じ得ません。(鎌倉淳)


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