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屋久島「観光トロッコ」が実現へ前進中。安房森林軌道の海側1.5kmを観光路線化し、2018年にも開業へ

日本に現存する唯一の「森林鉄道」として知られる鹿児島県屋久島の安房森林軌道について、トロッコによる観光化が実現に向け前進しているようです。計画では、海側1.5kmを観光客向けに開放し、2018年を目標に「観光トロッコ列車」を走らせる予定です。

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日本最後の森林鉄道

安房森林軌道は、屋久杉の運搬を目的に1923年に開業した森林鉄道です。屋久島山間部の旧小杉谷集落と、港に近い山麓の安房地区を主に結んでいて、最盛期の軌道総延長は約26kmに及びました。

1970年以降、屋久杉の伐採は原則として禁止され、森林鉄道の本来の役割は失われました。しかし、地元発電会社の屋久島電工が、沿線にある水力発電所の保守点検や資材運搬などを目的に、海側の拠点である苗畑から中腹の荒川登山口までの約11kmの敷地を林野庁から借り、軌道施設を買い上げました。

この11kmに関しては、現在も線路が整備され、鉄道としての機能を維持しています。そのため、安房森林軌道は「日本最後の森林鉄道」とも表現されています。

屋久島森林鉄道森林鉄道でかつて使われていた機関車SAKAI-A5型。屋久島自然館にて

1.5km区間でトロッコを運行

この区間に観光用トロッコを走らせることはできないかという構想は昔からあり、2012年には地元有志が実際に視察会を行うなど調査を実施しています。当サイトでも、「屋久島の安房森林軌道が旅客化に向け調査される。縄文杉観光をトロッコ列車で行える時代は訪れるか?」との記事を掲載しました。

2014年にはNPO法人「屋久島森林トロッコ」が設立され、本格的な検討を開始。2015年9月には、観光化に向けた事業計画がまとまりまったそうです。

その事業計画はどんな内容なのでしょうか。「屋久島森林トロッコ」のホームページによりますと、「森林トロッコを、屋久島の新しい魅力を体験していただける観光事業として生まれ変わらせるために、軌道の整備、新規車両の導入、駅舎・観光施設の建設などを計画・検討しています」とあります。

具体的には、「軌道の1.5kmの区間でトロッコを運行し、観光施設として復活利用します。起点である『苗畑停車場』を出発し、終点の『トンゴ渕の上停車場』で折り返し往復運行」する計画です。軌道に沿う安房川の中流には「トンゴの滝」という名瀑がありますので、それをトロッコで観光できる、という形になるのかもしれません。

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屋久島電工との交渉は難航

2012年に森林軌道の旅客化が調査されたとき、筆者は苗畑~荒川登山口までの11km区間が対象になると考えていました。しかし、事業計画では、上記のように海側1.5kmのみが対象になるようです。

その理由はいろいろありそうですが、なによりも線路を保有する屋久島電工が、いまでも水力発電所の保守管理に森林軌道を使用しているという点がポイントのようです。朝日新聞鹿児島版2015年9月29日付によりますと、同社は、人身事故などの安全面や、発電所の保守管理に支障が出ることを懸念し、「観光との併用はできない」との立場をとってきたといいます。

屋久島電工との交渉は難航したようで、NPOのホームページでは、「屋久島森林トロッコは町民が守り続けてきた文化遺産です。屋久島の振興発展に多大な寄与をすると考えられるこのプロジェクトに、地元企業として積極的に協力をすることを望みますし、施設の独占は許されることではないと思料されます」と、やや強い調子で同社の協力を求めています。

屋久島森林鉄道

NPOが軌道を買い上げ

屋久島電工との交渉で、NPO側は、海側の起点である苗畑から1.5km上流の位置に屋久島電工のための新たな起点を設けることを提案しました。新起点までは取り付け道路を敷設します。屋久島電工の作業用の起点を上流に移すことで、苗畑~屋久島電工新起点(トンゴ渕の上)までの間を観光客向けに開放する、という構想です。

産経新聞2016年1月9日付によりますと、屋久島電工側は、この提案に対し2015年12月に「すみ分けできるなら協力する」という前向きな姿勢を示したとのこと。これにより、屋久島の森林鉄道観光化は大きく前進したといえそうです。

NPOは、観光化する1.5kmの区間の軌道を同社から買い上げ、機関車や客車を購入し、駅舎などを整備します。これには約1億円の事業費が必要となる見込みです。朝日新聞によりますと、全国の鉄道ファンらに募金を呼び掛け、協力者の名前を枕木に刻む企画なども考えているそうです。

屋久島森林鉄道

遊具の扱いで運行

観光化区間は、鉄道事業法に基づく旅客運送事業を行うわけではなく、遊園地などの「遊具施設」の扱いにするようです。となると、2地点間の輸送はできませんので、片道のみの利用は許されず、往復での利用が原則になると思われます。そのため、縄文杉観光などの登山客の利用はできないでしょう。速度も最大で10km/h程度に抑えられる模様です。

軌道自体はさらに上流へ15km以上残されていますので、できることなら全面的な開放・整備を行い、縄文杉観光への輸送にも活用してほしい、とも思います。ただ、それには難問山積なのは部外者にも容易に想像できます。1.5kmとはいえ、本物の森林軌道跡でトロッコ列車の運行が実現するだけでも素晴らしいといえるでしょう。

森林鉄道の観光化としては、長野県上松町にある赤沢森林鉄道が知られています。木曽森林鉄道の保存鉄道という位置づけで、赤沢自然休養林内に軌道を敷設して運行しています。ただ、これは保存鉄道のために新規敷設した軌道が使われています。安房森林軌道は、実際に森林鉄道として利用されてきた区間を観光化するので、より本格的といえるかもしれません。

NPO側は、2018年4月の運行開始を目指しているそうです。NPOの努力に敬意を表しつつ、おおいに期待したいところです。(鎌倉淳)

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