川口駅に上野東京ライン停車へ。ホーム増設、2037年以降に開業

羽田空港へも直結

JR川口駅に、上野東京ラインが停車する方向になりました。ホームを増設し、駅舎を建て替えます。

広告

駅西側にホーム増設

川口市は、JR川口駅に中距離電車(上野東京ライン)を停車するホームを増設する方針を明らかにしました。

公表した計画案によりますと、駅の西側の市有地を活用してホームを新設。京浜東北線ホームとの間に改札口を設置します。JRホーム間に改札口を設けるのは異例ですが、乗り換え客を赤羽駅に誘導し、川口駅を混雑させないための措置とみられます。

駅舎も建て替えます。検討案は3つあり、既存の歩行者デッキをそのまま使う案が389億円、歩行者デッキを拡幅して屋根を付ける案が420億円、さらに東西自由通路を設ける案が431億円です。

川口市では、歩行者デッキを拡幅して屋根を付ける420億円の案を基本に検討していて、費用の内訳は、ホーム新設に127億円、駅舎コンコース新設に224億円、現コンコースの撤去に31億円、共通工事費に18億円、システム改修費に20億円などとなっています。費用負担については今後の協議に委ねられますが、大半は同市が負担することになるようです。

川口駅

広告

永年の悲願

中距離電車の停車は、川口市の永年の悲願でした。1985年に駅周辺の都市計画を決定した際に、駅西口に1700平米のスペースを確保して、中距離電車用のホーム増設に備えています。応分の費用負担も受け入れるとして、市長らが繰り返しJR東日本に要望してきました。お金もスペースも用意して、JRに「停めてくれ」と訴えてきたわけです。

しかし、中距離電車は遠近分離で「遠」を担当しており、「近」にあたる大宮以南の輸送は主目的ではありません。大宮以南では「快速」の役割も担っていますが、川口に停車すると所要時間が伸びてしまいます。赤羽との連続停車になることもあり、JRは要望を拒否してきました。

風向きが変わったのは2018年12月。市長らがJR副社長を訪れ要望したところ、「検討する」旨の回答がありました。その検討結果が、2019年11月にJRから市長らに伝えられています。その内容は、湘南新宿ラインは混雑が激しいので無理だが、上野東京ラインなら可能である、というものでした。このときに、約400億円という建設費用の概算も示されました。

広告

駅舎の建て替えと絡め

当時、川口市はホーム増設費用を200億円程度と考えていたので、想定の倍額の提示を受け仰天しました。

ポイントは駅舎の建て替えです。同駅は1968年に改築されたもので、老朽化が進んでいます。そのため、JRはホームの増設に絡めて駅舎を建て替える案を考え、その費用を一括で市に請求してきたのです。

中距離電車の停車で利用者が増えれば、現状の駅舎では捌けない、というのがその理屈ですが、要は、ホーム増設の見返りとして駅舎建設費用の負担を求めた形です。

広告

千載一遇のチャンス

川口市の一般会計予算は約2100億円。400億円はその2割に相当する金額です。同市は費用削減を求めてJRと交渉し、JRも費用削減を検討したようですが、最終的には、川口市が大枠でJRの要求を呑むようです。

JRが駅舎の建て替えをするタイミングは、数十年に一度だけです。JRが「カネさえ払えば停めてやる」と言っているのであれば、千載一遇のチャンスですので、川口市としてはこれを逃すわけにいかなかったのでしょう。

広告

停車は2037年以降

今後、川口市は、市議会の承認を経た後、JRと基本協定を締結する方向です。協定締結後、2~4年かけて測量と設計をおこない、工事に着手します。工期は10~12年程度を要するとのことで、上野東京ラインが川口駅に停車するようになるのは、2037年以降になりそうです。

上野東京ラインの停車により、川口駅から東京駅は、京浜東北線を使う現状の25分から20分に短縮します。その時期には、JR羽田空港アクセス線が開通して、上野東京ラインへの乗り入れも始まっていることから、羽田空港とも直結します。東京駅から羽田空港まで18分と想定されていますので、川口からは38分乗り換えなしで結ばれます。

負担する費用は大きいですが、東京駅20分、羽田空港38分となれば、やはり便利です。上野東京ライン停車の価値は大きく、市としては見合う投資と言えるかも知れません。

広告

既存利用者は所要時間増

一方、既存の上野東京ライン利用者にとっては、停車駅が一つ増えることになります。所要時間の増加は避けられませんし、ラッシュ時の混雑増も懸念されますから、川口市に用事のない方には、特にいいことはありません。

ただ、上述したように、ホーム開設は2037年以降です。これからの日本は急激な人口減少時代を迎え、その頃には団塊ジュニアも定年退職を終えています。つまり、通勤ラッシュはだいぶ緩和されていることでしょう。

おそらくは、JRもそこを織り込んだ上で、停車駅増を受け入れたと考えられます。したがって、混雑増加はそこまで心配する必要はないかもしれません。(鎌倉淳)

広告
前の記事阿佐海岸鉄道、由利高原鉄道が健闘。ローカル私鉄輸送密度ランキング最新版
次の記事京都の「フリーきっぷ」のおすすめは?【2024年版】バス、地下鉄、JR、私鉄を上手に乗り放題!