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根室線・富良野~新得間は復旧できるか。赤字ローカル線の復旧スキームから考える

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台風で寸断されたJR北海道各線の被害状況が、徐々に明らかになってきました。石勝・根室線、石北線、釧網線、日高線で路盤流出や橋梁流出、土砂流入、通信ケーブル損傷などの深刻な被害が判明しています。

JR北海道は復旧工事に着手しており、特急運転区間については復旧見通しが示されました。一方、特急が運転していない根室線の富良野~新得間、釧網線釧路~知床斜里間については、復旧の見通しは不透明です。

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被害箇所は21カ所

JR北海道によりますと、2016年夏の一連の台風による被害箇所は、現在把握している限りで21カ所。これにより、石勝・根室線、石北線、釧網線、日高線の各線が運休しています。

特急「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」は全区間運休していますが、9月8日より札幌~トマム間で特急列車の運転を再開しています。とはいえ、根室線では橋梁を流出しており、全線復旧には時間がかかりそう。JRでは、トマム~芽室間について、「11月末までの運転は困難」としています。

特急「オホーツク」が運休している石北線は上川~白滝間が不通で、復旧見通しは10月中旬。日高線苫小牧~鵡川間は、9月14日に復旧のメドを提示するとしています。

根室線
写真:JR北海道(新得駅構内)

富良野~新得間は見通し示されず

復旧見通しが示されてないのは、根室線の富良野~新得間(正確には富良野~上落合信号場間)と、釧網線の釧路~知床斜里間です。

根室線富良野~新得間では、幾寅~新得間の被害がとくに大きく、斜面の崩壊で土砂がトンネルに流入するなどの被害が生じているそうです。

富良野~新得間の1日あたり輸送密度は152人キロ。JR北海道は輸送密度500人キロ未満の線区について、「単独で維持することが困難な線区」と分類しており、今秋から沿線自治体と存廃に関する議論をする見通しです。そのため、富良野~新得間は災害がなくても存続が危ぶまれていました。

富良野~新得間の復旧費用は示されていませんが、少なくとも数億円はかかりそうです。JRが路線維持が困難と表明している線区に関して多額の復旧費用を投じるかは疑問で、復旧工事に着手するのか気がかりです。

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釧網線は冠水被害

釧網線は、塘路~茅沼間で線路が冠水しました。水が引けば数日から数週間で運転再開かと思っていましたが、運転再開のメドはいまのところ示されていません。想像より被害が深刻なのか、あるいは人手不足なだけなのか。

釧網線の輸送密度は513人キロ。かろうじて500を上回っています。被害が線路冠水だけなら復旧される可能性が高そうですが、現在のJR北海道の状況をみると、何ともいえません。

ちなみに、石北線の上川~網走間の輸送密度は1061。この数字も「単独で維持」するのは容易でないとみられますが、JR北海道は早急な路線復旧の意思を示しました。やはり特急運転区間は別格なのでしょうか。

災害復旧事業補助金

今回の台風被害で、JR北海道の復旧費用は有珠山噴火の20億円を軽く上回るとのこと。現在のJR北海道にそれを自力で負担する余力はなさそうです。

国土交通省では鉄道助成制度で「災害復旧事業費補助金」を定めています。補助対象になるにはいくつか要件がありますが、鉄軌道事業の損益が過去3年間赤字であること、復旧費用が年間の当該区間の運輸収入の1割以上であること、輸送密度が8000人未満であることなどが定められています。

JR北海道の今回の被災区間は、これらの要件を全てクリアしそうです。とはいえ、災害復旧事業補助金は国と地方自治体をあわせても補助率は5割にすぎません。今回の被害規模の大きさからみて、5割であってもJR北海道には負担が大きい気もします。

まして、輸送密度が500人キロ以下の区間について、JR北海道が半額とはいえ数億円以上を負担して復旧する余力があるのでしょうか。現在の鉄道補助の枠組みでは、赤字ローカル線復旧は容易ではありません。

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東日本大震災時は特例

東日本大震災時には、鉄道復旧に関して特例が設けられ、「地方公共団体がその復旧事業費を負担し、復旧した鉄道施設を地方公共団体で保有することとした場合」には、補助率を100%としました。三陸鉄道は、この特例でよみがえっています。

ただ、東日本大震災には復興特別税という別枠予算がありましたので、今回の台風被害とは同列に扱えません。そもそも、曲がりなりにもJRグループの一角を占めるJR北海道に、三陸鉄道並みの措置を与えるのは難しいでしょう。

日高線の例からみると

JR北海道は、2015年に不通となった日高線鵡川以南の復旧について、巨費がかかるとして否定的な姿勢を示し続けています。その背景には、日高線の輸送密度の低さがありました。

現時点で、富良野~新得間のみの復旧費用は示されていませんが、前述したとおり、億円単位の費用がかかるのは間違いありません。日高線の例をみると、JR北海道が過疎区間でそれだけの費用を負担するかは疑問です。

国が鉄道復旧補助の新たな枠組みを示せば別ですが、そうでなければ、5割の補助金で復旧するのは容易ではありません。

想像したくありませんが、不通のまま廃止となれば、根室線は「滝川~富良野」と「新得~根室」に分断されることになります。そうならないことを願いたいのですが。(鎌倉淳)


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