『瑞風』にライバル? 小型豪華客船『ガンツウ』が瀬戸内海に登場

1泊100万円の豪華客室も

「浮かぶ高級旅館」ともいえる小型豪華客船がデビューします。広島県尾道市のマリーナを母港に、瀬戸内海を1泊~2泊で周遊する『ガンツウ』です。1泊1室40万~100万円というスイート専用クルーズ船で、利用者のターゲットがJR西日本の『瑞風』と重なりそうです。

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「せとうちに浮かぶ小さな宿」

小型豪華客船をデビューさせるのは、常石造船系列のせとうちホールディングス(広島県尾道市)。『guntû(ガンツウ)』という船を、2017年10月17日に就航させます。

『ガンツウ』は「せとうちに浮かぶ小さな宿」をコンセプトにした宿泊型の客船です。「瀬戸内海クルーズツアー」と題し、尾道を拠点に2泊3日や3泊4日のツアーを組んで、広島、山口、愛媛、香川、岡山の瀬戸内5県を回ります。

途中では寄港せず、沖合で錨泊をしながら運航します。宮島や直島といった島には立ち寄ることもありますが、その場合は搭載したテンダーボートを利用して、乗客を陸へと案内します。各島の催事を訪問したり、無人島に上陸するなどのイベントもあるそうです。

ガンツウ
画像:せとうちホールディングスプレスリリース

180度展望のスイートルーム

『ガンツウ』の設計・デザインは、建築家・堀部安嗣氏が担当しました。木材を多用した客室と、切妻の屋根や縁側といった、客船では珍しい和風のつくりが特徴です。総トン数は3,200t。客室は全てスイートルームでわずか19室、50~90平米の4タイプで構成されています。

最も豪華なのは、約90平米の「ザ ガンツウスイート」。船首からの眺望を180度独り占めできる景観が売り物です。鉄道でいえば展望車でしょう。

「グランドスイート」(約80平米)は広々としたテラスを有し、「テラススイート」(約50平米)は、露天風呂付きの部屋もあります。いずれの客室も海に面しており、「瀬戸内の景色と一体となって寛げる空間」を作り上げたそうです。

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オールインクルーシブ

共用スペースとしては、展望デッキ、ダイニング、縁側、カフェ/バー、鮨カウンター、炭焼き台、ラウンジジム、トリートメントルーム(エステ)、サウナ付き大浴場などがあります。

食事はオールインクルーシブで、メインダイニングは東京原宿の老舗割烹「重よし」が監修。地元産の食材を調理し、天候や客の好みにあわせて提供します。

寿司は兵庫県「淡路島 亙」、和菓子は奈良県「樫舎」が監修しています。和菓子は、船内で目の前で作ってくれるとのことです。

ガンツウ船内
画像:せとうちホールディングスプレスリリース

ガンツウ船内
画像:せとうちホールディングスプレスリリース

広島空港からのチャーター機も用意

『ガンツウ』のコースは、宮島や音戸の瀬戸などを巡る「西回り」と、直島や犬島、豊島の周辺を巡る「東回り」があります。代表的な「宮島沖・大三島沖錨泊 3日間」を見てみましょう。

1日目に尾道港を16時30分に出て、宮島沖で錨泊します。2日目は宮島で朝の散歩をした後、江田島、倉橋島、中島、大島、伯方島を経て、大三島沖で錨泊。3日目は大三島で朝の散歩をした後、11時に尾道港に戻ります。

ガンツウルート図
画像:株式会社せとうちクリエイティブ&トラベル

室料は1泊、40万円~100万円(1室を2名利用の場合)です。遠方からの利用者への配慮か、広島空港から尾道(オノミチフローティングポート)までの、水陸両用機によるフライトチャーターも用意するということです。

『ガンツウ』の旅の申し込みは、東京・日比谷の帝国ホテル本館内の「ガンツウ ギャラリー」で受け付けています。

ガンツウチャーター機
画像:せとうちホールディングスプレスリリース

海と陸で競い合い

エリアを限定して、途中に立ち寄りながらゆっくり旅を楽しむ、という点では、『ななつ星in九州』をはじめとする、JR各社のクルーズトレインに似ています。というより、船の「クルーズ」を参考して登場したのが「クルーズトレイン」ですから、1周回って戻ってきた、という印象でしょうか。

1泊100万円レベルの豪華客船が、瀬戸内のような広いとはいえない水域だけをクルーズする、というのは、日本では初めてのことでしょう。こうした「地域限定豪華クルーズ船」が、どの程度成功するかは未知数ですが、新しい旅の形を提供するのは間違いありません。

地域的には、JR西日本の『トワイライトエクスプレス瑞風』と重なります。ターゲットとなるのは富裕層でしょうから、客層も重なります。そういう視点でみれば、『ガンツウ』と『瑞風』はライバル関係になるかもしれません。

とはいえ、共存できる関係でしょうし、海と陸で競い合いながら、より質の高い旅を提供してほしいところ。どちらも「一度は乗ってみたい夢のクルーズ」になるのでしょうか。(鎌倉淳)

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