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「超電導リニア」に体験乗車してみた。月並みだけれど速さに驚嘆

耳ツンはするけれど

JR東海が開催している「超電導リニア体験乗車」。改良型試験車の投入のため、体験会は2019年10月でいったん休止しますが、その前に参加してみました。

有料の体験乗車会

「超電導リニア体験乗車」は、JR東海が中央新幹線山梨リニア実験線で開催しているものです。現在の形の体験乗車は2014年11月に開始され、年数回、有料で開催されています。

2019年第2回の体験乗車は、8月に10日間の日程が組まれました。各回150座席で、1日6回実施されています。抽選制ですが、筆者は幸運にも8月下旬のある日の体験乗車に当選し、3便目となる13時30分発にお邪魔しました。

リニア体験乗車

「搭乗券」を受け取って

超電導リニア体験乗車は、JR東海の山梨リニア実験センターで実施されています。送付されている案内ハガキを受付で提示し、荷物検査を受けて、金属探知機をくぐります。飛行機と同じくらいの厳しさのセキュリティチェックです。

ロビーには、搭乗券発券機が置いてあり、予約番号などを入力すると「搭乗券」が発券されます。「乗車券」ではなく「搭乗券」です。

搭乗券には座席指定がされていて、QRコードが印刷されています。「改札口」では搭乗券のQRコードをタッチして通過。広い会議室が待合室となっていて、車内の座席順に着席。夏休みとあってファミリーが多いですが、リタイア組とおぼしき夫婦も目立ちます。

リニア体験乗車

5分ほどのVTRを見た後に、座席順に車両に向かいます。よく整理されたスムーズなオペレーションで、頑丈そうな搭乗口を抜けて搭乗しました。

リニア体験乗車

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荷物スペースはどうする?

現在、体験乗車できるのは、「L0系」という車両です。営業線仕様の第一世代の車両とされ、白地の車体にブルーのラインが入った5両編成。体験乗車に割り当てられたのは、中間車両の2、3、4号車の3両です。筆者は一番奥の4号車に座りました。

新幹線に較べると車体が小さいので、座席は左右2席ずつ。シートピッチは新幹線普通席に較べると狭いですが、座ってみれば快適でストレスは感じません。東京~大阪間で1時間程度の乗車なら十分でしょう。

気になったのは、座席の上の荷物棚が狭いこと。体験乗車では大きな荷物は持ち込まないので問題ありませんが、営業車両ではスーツケースを引きずった観光客も想定しなければなりません。そのため、荷物スペースを車両端などに設ける必要がありそうです。

リニア体験乗車

体験したことのない加速感

体験乗車では、最初に車両が東京方へ後ろ向きに動きます。その後、実験線の東端で折り返し、今度は名古屋方面へ全力で走ります。

150km/hまではタイヤ走行、浮上走行に移行してからはぐんぐん加速して、あっという間に500km/h。体験したことのない加速感です。一瞬現れる車窓は、速いなんてものではない速さで飛んでいきます。この速度には感激します。

リニア体験乗車

体験乗車は30分足らず。42.8kmの実験線のおおむね全線を、前向きと後ろ向きで1往復の全力走行をおこない、最初と最後に回送するような形です。リニアの醍醐味をダイジェストで味わえるような走行プランとなっています。

リニア体験乗車

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乗り心地は今ひとつ

乗り心地は、正直なところ、今ひとつです。トンネルばかりで車窓はほとんど楽しめませんし、浮上走行中は小さな揺れが続きます。

そして何よりも、耳ツンが頻繁に起こります。長大トンネルに出入りするうえに、高速で勾配を登ったり降りたりするので、車内気圧の変化が激しいようです。

飛行機に乗ると感じることですが、気圧の変化は、耳だけでなく身体に負担をかけます。そのせいか、30分の乗車を終えて駅に戻ったときは、飛行機から降りたときのような微妙なけだるさがありました。営業線はもっと標高差がありますので、現状の設備で実際の営業運転に入ったら、降車時に疲労感を覚えるかもしれません。

「耳ツン」をどう減らすか

「耳ツン」は、リニアを体験した人が一様に感じている現象で、JR東海も問題点として認識しています。同社が2017年にまとめた「超電導リニアに関する今後の技術開発について」という資料にも、重点開発課題の一つとして「車内環境圧力変化の改善(耳ツン対策)を図る」と記されています。

リニア資料
画像:JR東海「超電導リニアに関する今後の技術開発について」

この資料を見ると、路線の高低差にともない車内で気圧の変化が起きていることがわかります。比較的高低差の少ない実験線ですら、この圧力変化なので、南アルプスを超える急勾配ではどうなるのだろうと心配になります。リニアには最大40パーミルの急勾配があるので、そんなところを高速で上り下りしたら、激しい耳痛が起きかねません。

JR東海としては、制御目標となる圧力変動を設定し、給気と排気の流量調整弁の開閉で制御しようとしているようです。それでも多少の圧力変動は残りそうで、乗客としては一番心配なポイントでしょうか。

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「鉄道」ではない

乗り終えて再認識したことは、JR東海の超電導リニアはこれまでの「鉄道」とは違う乗りものである、ということでしょうか。

厳しめのセキュリティチェック、小さめの車内、狭い座席、気圧変化のある環境、変化に乏しい車窓。今更ではありますが、これは「飛行機」に近い乗りものです。なにより、浮上しますし。

そうした意味で、JR東海が、体験乗車のチケットを「乗車券」と呼ばず「搭乗券」と名付けていることにも、納得できました。「超電導リニア」は「車」ではないので、「乗車券」ではない、ということなのでしょう。

「乗車券」は、JRの運賃制度におけるチケットの名称です。JR東海は、リニア中央新幹線について、国鉄時代から引き継ぐJRの運賃・料金制度を採用しない方針を示唆しています。「搭乗券」いう鉄道会社らしからぬ名称からは、そうした含意も読み取れます。

当面、最後の体験乗車

いろいろ書きましたが、リニアの価値は、なんと言ってもその速さでしょう。実験線の区間である上野原から甲府盆地まで、ほとんど「一瞬」で着いてしまったことには、月並みですが驚嘆しました。

これが東京~大阪間を走ったら、さぞ便利でしょう。荒っぽく言えば、1時間程度の搭乗時間なら、乗り心地など二の次でいいのです。

JR東海では、2020年春にリニアの改良型試験車として先頭車1両と中間車1両を、新たに導入します。先頭形状の最適化が主な改良ポイントで、既存のL0系車両と連結して走行するとのこと。進化した超電導リニアがどういう姿を見せるのか、楽しみです。

改良型試験車の準備や走行試験に専念するため、JR東海では、10月15日、16日に2019年第3回を実施後、当面、体験乗車を休止します。いずれ体験乗車が再開される可能性はありそうですが、現編成での実施は10月が最後になる模様です。

10月の体験乗車の応募期間は9月3日まで。ご興味のある方はラストチャンスにかけてみてはいかがでしょうか。(鎌倉淳)