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京王相模原線「加算運賃引き下げ」の効果は? 小田急複々線に対抗できるか

20円値下げの訴求効果

京王電鉄は、2018年3月に、相模原線に設定している加算運賃を最大20円引き下げると発表しました。2018年春に控えた小田急線の複々線工事完成に対抗する施策にもみえますが、効果はあるのでしょうか。

最大80円の加算運賃

京王電鉄相模原線は、調布駅から京王多摩センターを経て、橋本駅に至る22.6kmの路線です。多摩川の砂利を運搬する目的で1916年に調布~京王多摩川間が開業。戦後、多摩ニュータウンの開発とともに西へ延伸され、1974年から1990年にかけて京王多摩川~橋本間が順次開業しました。

高度成長期に事業化された京王多摩川~橋本間には、建設費に充当するための加算運賃が設定されており、京王電鉄の他区間より距離あたりの運賃が高くなっています。京王多摩川以東の各駅から若葉台駅までは10円、京王多摩センター駅までは20円、京王堀之内駅までは40円、多摩境駅までは60円、橋本駅までは80円などの加算です。

京王橋本駅

20円の引き下げ

京王電鉄は、「相模原線建設事業費の回収が進捗してきている」として、2018年3月に加算運賃を引下げることを決めました。

普通運賃では、1~8km(加算額10円)と9~13km(同20円)の距離帯で加算運賃を廃止。新宿方面からの場合、京王多摩センター駅までの加算運賃がなくなります。それ以外の距離帯でもすべて20円引き下げます。

定期運賃も同様に引き下げ、1~8km(1ヶ月定期で加算額380円)と9~13km(同750円)は廃止し、14km以上の距離帯で750円引き下げます。

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回収率90.6%

加算運賃が全額廃止になったわけではなく、新宿方面の場合、普通運賃で京王堀之内駅まで20円、南大沢駅と多摩境駅まで40円、橋本駅まで60円の加算が残ります。

日本経済新聞8月31日付によりますと、建設費用の回収率は2016年度末現在で90.6%で、数年以内には回収を終えるとのこと。そのため、残された加算運賃も、数年以内に撤廃される見通しです。

建設費回収が数年後となっているなら、回収が終わった段階で一斉に全額撤廃してもいいのでは、という気もします。そうではなく、2018年春に一部撤廃に踏み切ったのは、同じ時期に予定されている小田急小田原線の複々線化完成に対抗する意味合いがあるのでしょう。

10分余計にかかる

小田急は、東北沢~和泉多摩川間で複々線化工事を実施しており、2018年春に完成する予定です。完成後は列車増発が可能になるほか、ラッシュ時の所要時間が短縮される見通しです。

京王相模原線は、多摩ニュータウンのアクセスで、小田急多摩線と直接競合します。小田急線の新宿~小田急多摩センター間の運賃は370円。これに対し、京王相模原線の新宿~京王多摩センター間の現在の運賃は339円です。今回、20円値下げしたことで、京王は運賃面での優位性を高めることができます。

しかし、所要時間で京王は劣勢になるかもしれません。小田急の資料によりますと、複々線化により小田急多摩センター~新宿間は、ラッシュピーク時(新宿8時30分頃着)の所要時間が45分から40分になるとされてます。

これに対し、京王多摩センター~新宿間は、ラッシュピーク時に直通の急行で52分かかっています。混雑時間帯の12分の所要時間差は大きく、京王が運賃値下げでどれだけ客をつなぎ止められるかはわかりません。

ただ、多摩ニュータウンエリアの路線は、京王も小田急も「本線系統」ではありません。そのため都心直通優等列車の運転本数の設定などによって、状況は変わってくるでしょう。

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横浜線利用者は?

横浜線沿線の利用者も意識しているかもしれません。横浜線古淵~相模原間の利用者が新宿へ向かう場合、橋本駅経由で京王相模原線を使うか、町田駅経由で小田急線を使うかの選択肢があります。

小田急線新宿~町田間の運賃は370円。これに対し、現在の京王相模原線の新宿~橋本間の運賃は440円です。

横浜線沿線から新宿に向かう場合、現時点では町田から小田急線を利用するほうが安く、橋本駅の隣にある相模原駅から新宿駅へ向かう場合でも小田急535円、京王573円となっています。

京王は今回の20円の値下げでこの差を逆転することはできませんが、加算運賃が全面撤廃されれば、淵野辺駅以北で運賃面で京王が優位に立てます。

しかし、ラッシュ時を中心とした所要時間では、複々線化した小田急に対抗するのは容易ではなさそう。町田駅は小田急の本線系統が通り速達列車も豊富です。そのため、京王の運賃値下げによる誘客効果は限られたものになりそうです。

そう考えると、今回、まずは多摩センターまでの加算運賃撤廃を先行させたのは、まだ競争力がある多摩ニュータウンエリアで小田急に対抗するためとみられます。その効果がどれほどなのか、注目したいところです。(鎌倉淳)