京急「11/26ダイヤ大改正」を読み解く。快特、特急交互運行で、23年前の運行パターンに

空港アクセスはちょっと不便に

京浜急行電鉄は、2022年11月26日にダイヤ改正を実施します。日中の運行パターンについて、「快特」と「特急」をそれぞれ20分間隔で交互運行する形に変更します。23年前の運行パターンに先祖返りする形です。

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「快特」「特急」が10分間隔に

京急の2022年11月26日ダイヤ改正の最大のポイントは、本線における「快特」「特急」の運転パターンの変更です。日中時間帯の品川~久里浜間で、現在は快特が10分間隔で運行していますが、改正後は快特と特急がそれぞれ20分間隔で運行し、両種別あわせて約10分間隔で交互運行する形となります。

特急になるのは、都営線直通の三崎口発着列車です。特急は快特より停車駅が増えて、青物横丁、平和島、神奈川新町、追浜、汐入が停車駅に加わります。品川~三崎口間の所要時間は、現行の1時間17分から1時間20分となります。

京急2022年11月ダイヤ改正
画像:京急プレスリリース
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空港線快特も20分間隔に

羽田方面の空港線についても、現行の品川~羽田空港間について快特10分間隔をあらため、半分を特急にします。これにより、快特と特急をそれぞれ20分ごとに交互運行する形となります。「エアポート快特」は従来どおり40分間隔で運転します。

品川~羽田空港間において、特急は快特より停車駅が増えて、青物横丁、平和島、糀谷、大鳥居、穴守稲荷、天空橋に停まります。品川~羽田空港第1・第2ターミナル間の所要時間は、快特が15分のところ、特急は21分に増えます。

要するに、品川から羽田空港へは、所要18分の快特と所要24分の特急が20分間隔で運行する形になります。羽田到着時刻は10分間隔にならないとみられ、飛行機利用者は注意が必要になるでしょう。

京急停車駅
京急の停車駅。画像:京急電鉄
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特急停車駅利用者に恩恵

ダイヤ改正で恩恵を受けるのは、快特通過の特急停車駅です。とくに、青物横丁と平和島は日中時間帯に特急が毎時6本停まることになります。

京急2022年11月ダイヤ改正
画像:京急プレスリリース

追浜や汐入といった横須賀市内の快特通過の特急停車駅利用者も使いやすくなるでしょう。

平和島で特急と普通の緩急接続をおこなうため、大森町や梅屋敷駅の利用者にもメリットがあります。

京急2022年11月ダイヤ改正
画像:京急プレスリリース
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「エアポート急行」半減

逗子・葉山~羽田空港間を結ぶ「エアポート急行」については、現行の10分間隔を20分間隔とします。かわりに、金沢文庫~逗子・葉山間に普通列車を設定します。これにより、逗子線内の運行本数は変わりませんが、羽田空港~金沢文庫間は毎時3本の純減となります。

鶴見、東神奈川、日ノ出町、井土ヶ谷、弘明寺、杉田、能見台といった特急通過の急行停車駅では、これまで10分間隔だった急行サービスが20分間隔となります。京急によれば「途中駅へは接続を改善し利便性を維持」する方向とのことで、待避駅変更による緩急接続で多少の救済を図るようです。

逗子線は毎時6本が維持されるものの、横浜への直通列車が2本に1本となってしまうので、利便性は低下します。

ラッシュ時も特急シフト

平日朝の通勤時間帯に運転している「モーニング・ウィング5号」の運行時刻を約30分繰り上げ、品川駅到着時間を8時53分とします。ラッシュのピーク時に品川駅に到着するので、着席サービスとしては価値向上といえるでしょう。

京急2022年11月ダイヤ改正
画像:京急プレスリリース

また、平日朝の通勤時間帯の快特5本を特急に変更します。朝ラッシュ時も特急にシフトするわけです。ただ、多くの列車で所要時間は変わりません。ラッシュ時で速度を出せない快特の停車駅を増やして特急とし、乗客増を図る施策のようです。

また、京急久里浜および逗子・葉山始発の特急羽田空港行2本は運行を取りやめます。金沢文庫~神奈川新町・品川駅間での12両運転は、上り6本、下り2本で取りやめます。品川始発21時以降の特急三崎口行のうち2本を、特急・浦賀行に変更します。

これらは当該線区の輸送力を削減する施策のようです。

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羽田発の終電繰り上げ

土休日ダイヤでは、日中時間帯の京急久里浜~三崎口間での10分間隔運転を維持します。観光需要に対応するためです。

一方で、19時以降の京急久里浜~三崎口駅間で毎時3本の運転取りやめ,おおむね20分間隔とします。泉岳寺~三崎口駅間運転の快特を特急に変更します。

土休日19時以降の都営線~空港線への下りエアポート急行7本については、快特に変更します。

終電関係では、空港線から品川方面の終列車を繰り上げます。羽田空港発品川行き終列車は、現行の23時59分発が23時48分発(エアポート急行)になります。

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「乗車機会の創出」目指す

以上が、京急の2022年11月26日ダイヤ改正の概要です。京急では「アフターコロナの沿線を、より便利に、より快適に」と謳っていますが、運用数を縮小することでコスト削減を目指す改正内容と言えます。

目を引くポイントは、やはり、日中時間帯に本線快特の半分を特急化することと、エアポート急行の半分の運行を取りやめることでしょう。

京急では、このダイヤ改正の狙いを「三浦半島から都心方面、特に都内区間における乗車機会の創出で、速達性を維持しつつ利便性向上をはかる」こととしています。

本線快特の特急化は、この狙いを実現するための施策といえ、停車駅を増やすことで沿線利用者の掘り起こしを目指す施策といえます。プレスリリースでは青物横丁駅と平和島駅の停車本数増を大きく打ち出していて、「都内区間における乗車機会の創出」に力を入れていることがうかがえます。

京急快特

品川~羽田空港は不便に

京急は、ダイヤ改正のもう一つの狙いとして「需要にあわせた適正化」を図ることとしています。その具体策として、「運転の取りやめや時刻および編成両数の変更」をあげています。

エアポート急行の半減は、まさに「需要にあわせた適正化」です。日中時間帯の京急蒲田以南の輸送力が過剰とみて、削減する目的でしょう。

エアポート急行を単に半減しただけでは、空港線の快特通過駅の停車本数が毎時3本になってしまいます。それを避けるため、空港線で各駅停車を増やす必要があり、品川方面からの快特を特急化したようです。

結果として、品川~羽田空港間の快特が20分間隔に半減します。この区間の快特と特急の所要時間差は大きいため、都心方面からの空港利用者にとってはサービス低下の観は免れません。ライバルの東京モノレールは空港快速が10分間隔で運転していますので、今後はモノレールの存在感が高まりそうです。

一方、空港線内の快特通過駅は、現在日中時間帯の列車は全て横浜方面ですが、改正後は半分が品川方面への列車となります。こうした駅の利用者は便利になる場合もありそうです。

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23年前へ「先祖返り」

京急では、今回のダイヤ改正を「23年ぶりの大幅ダイヤ改正」と銘打っています。その23年前のダイヤ改正で、都営直通特急を快特に格上げして、「本線快特10分間隔」が実現しました。いうなれば、2022年11月改正は、23年前の快特・特急交互運行に先祖返りするわけです。

振り返れば、逗子線急行も、かつては20分間隔で運転されていて、金沢文庫~新逗子間の普通列車と交互運行でした。それも含めて、昔の運行パターンに逆戻りするようなダイヤ改正に感じられます。

三浦半島は、神奈川県で屈指の人口減少エリアで、鉄道利用者数は先細りが見込まれています。近年の京急の屋台骨を支えてきた空港輸送も、JR羽田空港アクセス線の開業を7年後に控え、楽観できない状況になってきました。

そうした将来の利用者減少を見据えれば、京急にとって、輸送規模のスリム化は避けられないのでしょう。新型コロナの影響もあり、今回は、不可避の課題に手を付け始めたダイヤ改正といえるのかもしれません。(鎌倉淳)

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