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「北海道&東日本パス」はどう分配されているのか。JR北海道の値上げから試算してみた

JR北海道の取り分は27%?

北海道&東日本パスが、2025年夏季から値上げされます。JR北海道の運賃値上げ分を反映させたそうですが、ここから、分配ルールや、JR北海道への分配率が透けて見えます。試算してみました。

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値上げから試算したJR北海道の取り分

「北海道&東日本パス」の2025年夏季の設定が発表されました。価格は大人11,530円となっていて、春季の11,330円から200円値上げされています。

これは、2025年4月1日に実施された、JR北海道の運賃値上げを反映したものです。

JR北海道の普通運賃の値上げ率は平均約6.6%でした。一方、北海道&東日本パスの値上げ率は約1.8%です。この値上げ率から、JR北海道への分配額を試算してみましょう。

H100形JR北海道

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JR北海道の取り分は27%?

JR北海道の運賃値上げ率が6.6%で、パスの値上げ率が1.8%ならば、単純に計算すると、北海道&東日本パスのうち、JR北海道への分配率は約27%と推定できます。

分配率を27%と仮定した場合の試算は以下の通りです。

【JR北海道への分配率を27%と仮定した場合の計算】
11,330円(旧価格)×27%≑3,060円(JR北海道の旧取り分)
3,060円×6.6%≑200円(JR北海道の値上げ分)
11,330円+200円=11,530円(新価格)

念のために書きますが、これは単純な試算に過ぎません。実際に、JR北海道の取り分が全体の27%かどうかは、定かではありません。

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2019年の値上げからの試算

JR北海道は2019年にも13.6%の運賃値上げをしており、そのとき、北海道&東日本パスは10,850円から11,330円に、4.4%も値上がりしています。

ただし、2019年の値上げは、消費税増税(8%→10%)と同時に実施されています。それを勘案して計算すると、JR北海道への分配率は約19%と推定できます。

【2019年の値上げ時にJR北海道の分配率を19%と仮定した場合の計算】
10,850円÷1.08×1.10=11,050円(消費税による値上げ)
10,850円×19%≑2,060円(JR北海道の旧取り分)
2,060円×13.6%≑280円(JR北海道の値上げ分)
11,050円+280円=11,330円(新価格)

これも単純な試算なので、実際に、全体の19%がJR北海道への分配率だったかは、定かではありません。

ただ、北海道&東日本パスにおける、JR北海道の推定分配率が20~30%である、という仮説は成り立つでしょう。

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推定分配率は営業キロの割合に近い

北海道&東日本パスは、JR東日本とJR北海道のほか、青い森鉄道、いわて銀河鉄道、北越急行の各線でも利用できます。

現時点での在来線営業キロは、JR東日本が6,224.5km、JR北海道が2,106.1kmで、JR合計が8,330.6kmです。

青い森鉄道が121.9km、いわて銀河鉄道が82.0km、北越急行が84.2kmで、三セク合計が262.1kmです。全路線合計で8592.7kmとなります。

割合で見ると、JR東日本が72.4%、JR北海道が24.5%、青い森鉄道が1.4%、いわて銀河鉄道と北越急行が1.0%です(四捨五入により合計は100%となりません)。

JR北海道の営業キロは、JRの25.2%、全体の24.5%という割合です。試算した推定分配率の27%や19%という数字とは一致しませんが、営業キロの比率に近い数字となっています。

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北海道&東日本パスの歴史

北海道&東日本パスの歴史を振り返ると、2002年冬、東北新幹線八戸開業のタイミングに、10,000円で登場しました。2009年春に富士急行がフリーエリアに加わり、2014年夏に消費税増税(5%→8%)を反映して10,290円に値上げしました。

2016年春に富士急行が離脱し、北海道新幹線開業にあわせて10,850円に値上げ。2019年には消費税増税とJR北海道の運賃改定により11,330円に値上げしました。そして、2025年春に、JR北海道の運賃改定により11,530円となっています。

この間、東北新幹線新青森延伸により、並行在来線(青い森鉄道)区間がフリーエリアに組み込まれた一方、北陸新幹線延伸時には並行在来線(しなの鉄道)は組み込まれませんでした。いずれの場合も、北海道&東日本パスの価格に変更はありません。

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実質値上げは2回だけ

北海道&東日本パスが設定されてから、消費税増税を除く値上げは、「北海道新幹線開業」と「JR北海道の運賃値上げ」のときだけです。いずれもJR北海道にかかわる局面です。

これらから推測できることは、パスの分配金は、営業キロの増減に比例して変動するわけではない、ということです。

おそらく、当初の分配ルールで各社への分配額が定められ、その後、JR北海道が自社分に関して値上げすると、パスの全体の価格が値上げされる、という形になっているのでしょう。

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初期設定は営業キロに比例した?

では、当初の分配ルールにおけるJR北海道の取り分は、どのくらいでしょうか。上記の試算から推定すると、20%前後であることがうかがえます。

これは、全体の営業キロの比率に近い割合ですので、北海道&東日本パスの当初分配率は、ある程度、営業キロに沿う形で定められたことが推測できます。

営業キロに完全に比例させたとはいえませんが、少なくとも、列車の運行本数や、鉄道運輸収入、利用者数などに比例させたわけではなさそうです。

北海道&東日本パスの実際の利用動向からすれば、北海道よりも首都圏での利用者が多いことでしょう。にもかかわらず、営業キロに近い割合にしたのであれば、JR北海道には有利な分配ルールに感じられます。

一方、JR北海道とJR東日本での取り分が同じ(等分)ではないようです。

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20%スタートと仮定すると

ここからは、2002年に、北海道&東日本パスのJR北海道への分配率が20%でスタートした、と仮定して試算してみます。

JR北海道の1枚あたりの分配金は、定価10,000円のとき2,000円。そこから、2014年の消費税増税(8%)で2,050円となり、2016年の北海道新幹線開業で560円を丸ごと上乗せしたとして、2,610円になります。2019年の消費税増税(10%)と運賃値上げ(13.6%)で390円を上乗せし、3,000円となっていました。

そこへ、2025年の運賃値上げ(6.6%)を乗ずると198円になります。実際の値上げ額が200円ですので、近似値になります。これにより、現在のJR北海道の1枚あたりの分配金は3,200円と試算できます。

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JR北海道の占める割合が高くなっている?

この仮定に基づくと、「北海道&東日本パス」のJR北海道の1枚あたり分配金は2,000円(全体の20%)でスタートし、消費税増税や、同社関連の値上げを経て、現在は3,200円(全体の27.7%)になっているということです。

つまり、JR北海道の運賃の値上げを経て、パスに占める同社の分配金の割合が高くなってきている、ということを意味します。

何度も書きますが、これは、単なる試算に過ぎません。それでも、ひとつの仮説にはなり得るでしょう。はじき出された数字は、こんなものじゃないか、と思える程度ではないでしょうか。(鎌倉淳)

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