航空会社の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)に下落の兆しが見えてきました。10月からの価格は、6か月連続で据え置きます。今後の見通しとあわせて見てみましょう。
24年10-11月分を発表
国際線旅客が航空券購入時に支払う燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)について、JALは2024年10-11月発券分で、価格を据え置くことを発表しました。
燃油サーチャージは、燃油市況価格の直近2か月間の平均に基づき算定されます。
JALによりますと、10-11月発券分の基準となるシンガポールケロシンは、2024年6月から7月の市況価格が97.89米ドルでした。また、同期間の為替平均は1ドル157.95円でした。これを乗じた1バレルあたりの基準金額は15,462円となりました。
欧米往復70,000円
8-9月発券分は、市況価格99.41米ドル、為替154.78円、基準価格15,387円でした。この2ヵ月で燃料価格は1.5%値下がりし、為替は2%円安に振れています。燃料の値下がりを円安が打ち消して、結果として、基準価格はほとんど変わらない水準となりました。
これにより、JALでは10月1日発券分から燃油サーチャージの価格を据え置きます。10-11月発券分のひとり1区間片道あたりの燃油サーチャージは、日本から北米・欧州・オセアニアなどが35,000円に、ハワイ・インドなどが22,500円に、タイ・シンガポールなどが18,500円になります。
これは片道の金額なので、往復の場合、北米・欧州・オセアニアなどが70,000円に、ハワイ・インドなどが45,000円に、タイ・シンガポールなどが37,000円となります。
6ヶ月連続で据え置き
燃油サーチャージは、2022年10-11月発券分がピークで、その後いったん値下がりし、2023年8-9月分を底として上昇に転じました。23-24年12-1月分で過去2番目の高値を付けたあと調整し、4-5月分を底に再上昇に転じました。
6-7月に1段階上がり、8-9月、10-11月と6ヶ月連続で据え置かれることになります。燃油価格は落ち着いているといっていいでしょう。
過去1年の燃油サーチャージの変化は下表の通りです。
路線 | 23年 8-9月 |
23年 10-11月 |
23-24年 12-1月 |
24年 2-3月 |
24年 4-5月 |
24年 6-11月 |
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北米・欧州・中東・オセアニア | 28,800 | 33,400 | 47,000 | 43,600 | 33,000 | 35,000 |
ハワイ・インドネシア・インド・スリランカ | 18,400 | 21,300 | 30,500 | 28,200 | 21,000 | 22,500 |
タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ | 15,000 | 17,900 | 24,700 | 23,000 | 18,000 | 18,500 |
グアム・パラオ・フィリピン・ベトナム・モンゴル | 9,200 | 11,000 | 17,800 | 16,100 | 11,000 | 12,000 |
東アジア(韓国、モンゴルを除く) | 7,100 | 8,400 | 11,400 | 10,300 | 8,500 | 9,200 |
韓国 | 2,900 | 3,500 | 5,900 | 5,300 | 3,500 | 4,000 |
※片道あたり、発券日基準。
適用条件「ゾーンJ」に
今回の燃油サーチャージ額は、JALが公表している適用価格表の「ゾーンJ」に該当します。最高値だった2022年10-11月の「O」の5ランク下となっています。
ゾーン | 基準価格 | サーチャージ額 (23年度) |
サーチャージ額 (24年度) |
---|---|---|---|
A | 6,000円~7,000円 | 4,500円 | 4,500円 |
B | 7,000円~8,000円 | 8,900円 | 8,900円 |
C | 8,000円~9,000円 | 13,400円 | 13,400円 |
D | 9,000円~10,000円 | 17,800円 | 16,000円 |
E | 10,000円~11,000円 | 20,200円 | 18,500円 |
F | 11,000円~12,000円 | 24,200円 | 21,000円 |
G | 12,000円~13,000円 | 28,800円 | 25,000円 |
H | 13,000円~14,000円 | 33,400円 | 29,000円 |
I | 14,000円~15,000円 | 36,800円 | 33,000円 |
J | 15,000円~16,000円 | 40,200円 | 35,000円 |
K | 16,000円~17,000円 | 43,600円 | 38,000円 |
L | 17,000円~18,000円 | 47,000円 | 41,000円 |
M | 18,000円~19,000円 | 50,400円 | 44,000円 |
N | 19,000円~20,000円 | 53,800円 | 47,000円 |
O | 20,000円~21,000円 | 57,200円 | 50,000円 |
今後の見通しは?
基準価格は、6-7月が15,373円、8-9月が15,387円、10-11月が15,462円と、同水準が続いています。したがって、燃油価格は3期6ヶ月連続で横ばいとなっています。
最近の燃油価格は、比較的落ち着いています。直近の数字を見ると、基準となるシンガポールケロシンの市況価格は95米ドル程度で、今回の基準価格97.89から大きくは動いていません。
一方、為替相場では円高が進んでいて、145円前後での値動きが続いています。今回の基準価格の157.95円に比べると9%ほど円安です。となると、今後の燃油サーチャージには下落の兆しが出てきます。
このままの状況で推移すれば、円高の影響で、次回の基準価格は13,000円台に低下する可能性があります。その場合、燃油サーチャージのゾーンは2段階下の「H」になるでしょう。欧米往復は58,000円に下がります。
日銀の利上げ姿勢を受けて、為替は8月に入って大きく水準を変え140円台に定着しています。一方、米国は利下げを開始する見通しで、当面は円高基調となりそうです。原油価格は落ち着いていますので、12月の燃油サーチャージは、いまより下がる可能性が高そうです。(鎌倉淳)