JRの「往復割引乗車券」は、年末や、ゴールデンウィーク、お盆といった繁忙期でも使える割引きっぷです。往復利用で乗車券が1割引。距離によって往復の有効期間は異なります。買い方と有効期間の計算方法など、詳細をご紹介しましょう。
片道601km以上で適用
JRの「往復割引乗車券」は、「往復割引」や「往復乗車券」と呼ばれたりもします。片道601km以上の距離で、往復のきっぷをセットで買った場合、「ゆき」、「かえり」の運賃がそれぞれ1割引になります。
1割引になるのは乗車券(運賃部分)だけです。新幹線を利用する場合は、新幹線特急券が別途必要ですが、特急料金は往復割引の対象外です。
JR往復割引乗車券の買い方
JRの往復割引乗車券は、JR駅の窓口や、「えきねっと」「e5489」などのインターネット予約サイトで購入できます。
注意点として、往復の乗車券をセットで購入することが条件です。片道ずつを購入した場合は、割引になりません。
駅の窓口で購入する場合は、念のため「往復割引」と伝えるといいでしょう。往復割引には有効期限がありますので(後述)、行きと帰りの出発日も伝えます。窓口係員が、適用範囲かどうか確認してくれるでしょう。
インターネットでは、片道601km以上の乗車券を往復セットで購入すれば割引が自動適用となります。バラバラで買うと、往復割引は適用されません。
特急券は往復割引適用外なので、特急券を往復別々で購入しても影響はありません。乗車券を往復まとめて買うことが、往復割引の条件です。
往復割引運賃の計算方法
往復割引乗車券の値段を「往復割引運賃」といいます。計算方法をご紹介しましょう。以下のようになります。
片道運賃×0.9×2=往復割引運賃
たとえば、東京~岡山間は片道601km以上ありますので、往復割引の対象となります。「ゆき」、「かえり」とも732.9kmで、片道運賃は10,670円。1割引(×0.9)すると9,603円。は数は切り捨てて9,600円になります。往復なので2倍した19,200円が往復割引運賃となります。上記の式にあてはめると、以下のようになります。
10,670円×0.9×2=19,200円
この値段で、東京~岡山間を往復できます。
特急料金を加える
この値段に新幹線特急料金は含まれていません。東京~岡山間の新幹線「のぞみ」の指定席特急料金は、7,100円(通常期)。往復で14,200円です。
したがって、往復割引を利用して東京~岡山間を往復する場合の通常期価格は、以下のようになります。
往復割引運賃19,200円+新幹線特急料金往復14,200円=33,400円
割引なしだと35,400円ですので、往復割引を使うことで、乗車券+特急券の総額の約6%の割引となります。割引率としてはそれほど高くありませんので、他の割引きっぷが使える場合は、それと比較するとよいでしょう。
往復乗車券の有効期間
JRの往復乗車券には有効期間があり、その期間内に往復しなければなりません。
往復乗車券の有効期間は、片道乗車券の2倍と定められています。片道乗車券の有効期間は、距離により以下のようになっています。
乗車距離(営業キロ)÷200km+1日=有効期間(小数点以下切り上げ)
片道乗車券の有効期間の2倍が往復乗車券の有効期間です。表にすると以下の通りです。往復割引の適用されない600km以下も表示しています。
営業キロ | 片道有効期間 | 往復有効期間 |
---|---|---|
200kmまで | 2日 | 4日 |
400kmまで | 3日 | 6日 |
600kmまで | 4日 | 8日 |
800kmまで | 5日 | 10日 |
1000kmまで | 6日 | 12日 |
1200kmまで | 7日 | 14日 |
※1201km以上は200kmごとに片道1日、往復2日を加えます。
例に挙げた東京~岡山間の場合は、800kmまでの区間に該当しますので、往復割引乗車券の有効期間は10日間となります。12月28日に出発する場合、1月6日までに戻ってくれば、往復割引の適用を受けられます。
往復割引適用範囲(601km以上)でみると、東京発の場合、岡山、新青森、秋田往復が10日、広島、新函館北斗往復が12日、新山口、小倉、博多往復が14日です。
往復割引が適用される主な区間
東京駅、名古屋駅、新大阪駅起点で、往復割引が適用される主な区間は以下の通りです。
東京~西明石以遠、二戸以遠、大曲以遠
名古屋~徳山以遠、長岡以遠、郡山以遠
新大阪~博多以遠、熊谷以遠、小山以遠
東京~新大阪間では適用されませんが、東京~西明石間なら適用されます。そのため、東京~新大阪間の往復運賃よりも、東京~西明石間の往復割引運賃のほうが安い、というような逆転現象も起きます。東京~新大阪間を安く利用する裏ワザとして知られています。
往復割引乗車券の使い方
往復割引乗車券を購入すると、「ゆき」と「かえり」の2枚のきっぷを渡されます。文字通り、「ゆき」のきっぷを往路で使い、「かえり」のきっぷを復路で使います。
きっぷの使い方は、通常の片道きっぷと同じで、自動改札機を通すことができます。「ゆき」「かえり」それぞれの行程が終了すれば、きっぷは改札機で回収されます。
往復割引乗車券の長所と注意点
東海道・山陽新幹線は割引きっぷが少ないですし、年末年始、ゴールデンウィーク、お盆には利用できないものもあります。これに対し、往復割引乗車券は通年で利用できるのが特徴で、販売枚数の制限もないことから、混雑期には特に威力を発揮します。
また、JR各社をまたいで利用できるのも長所です。JR各社内だけで完結する割引きっぷが多いなか、往復割引はJR東海~JR東日本といった、会社を跨いでも適用されます。たとえば、名古屋~仙台といった区間でも有効です。
学生の場合は、学割との二重適用が可能なので、その点でもおトクです。(鎌倉淳)