東京都は、上野動物園内を走るモノレールの運行を、2019年11月1日から休止すると発表しました。西園で建設中の新パンダ舎の横をモノレールが走り抜ける光景は、見られないのでしょうか。
日本最短のモノレール
上野動物園のモノレールは1957年12月に開業。日本最古のモノレールとして知られています。2両編成の車両が東園駅と西園駅の間約300mを、約1分半で結んでいます。
運営は東京都交通局。遊園地のアトラクションなどと異なり、鉄道事業法に基づく交通機関であり、日本最短のモノレールとしても知られています。
現在の車両は2001年に導入された40形で、2両編成1本だけが運用されています。この車両は、日本宝くじ協会の助成金を基に製造されており、「宝くじ号」とも呼ばれています。
車両が老朽化
東京都によると、40形は導入17年を経て経年劣化が進んでおり、次回の定期検査前を以て運行休止することを決めたとのことです。
新車導入についても検討したものの、同モノレールは線路に車両がぶら下がる「片腕懸垂式」という特殊な方式です。同方式で運行しているモノレールが国内にないため、車両更新が高額になってしまうという事情があります。新造には18億円もかかるとのことです。
電気設備についても、今後、大規模な更新が必要になると見込まれています。東京都では、「動物園の魅力向上に向けた取組」もあわせて考えていく必要があるとし、2019年11月1日からの運行休止を決めました。休止中は、電気自動車など、東園と西園を往復する車両を無料運行するとのことです。
黒字事業だが
上野動物園のモノレールは、その距離の短さからみても、必要不可欠な交通機関ではありません。一方で、園を訪れる子どもたちにとっては人気の乗りものになっていて、上野動物園の魅力を高めている側面もあります。
東京都交通局の2017年度決算では、上野動物園モノレールの乗車人員は年間108万7000人(一日平均4,000人)です。乗車料収入は1億2800万円で、経常損益は、2400万円の黒字となっています。
週末には行列ができる大混雑で、現状でも十分な利用者はいるわけです。しかし、設備更新をまかなえるだけの利益が出ているわけでもありません。
「パンダのふるさとゾーン」
モノレール西園駅の北東側では、現在、「パンダのふるさとゾーン」(仮称)と題する新しい展示施設を建設中です。完成予定は2020年度です。
完成すれば、モノレールがパンダのふるさとゾーンに沿って走る光景がみられたはずです。しかし、運休が決まったことで、その光景は、ひとまず幻になりそうです。
ただ、廃止が決まったわけではなく、東京都では「今後の車両更新またはそれに替わる方策については、都民等のご意見を伺いながら、検討していきます」としています。
このまま車両更新をしないまま、事実上の廃止になるのか。それとも、議論が巻き起こり、新車導入に踏み切るのか。現在の車両での最終運行は、2019年10月31日です。(鎌倉淳)