小笠原空港は「父島・州崎案」で決着するか。2018年に飛行場建設に方向性

完成すれば本土まで2時間半

2018年は、小笠原諸島の飛行場建設問題に方向性が示されます。東京都は父島の州崎地区にプロペラ機用の滑走路を建設する案について、新年度予算で調査費を計上。返還50周年の節目に方向性を示すとしています。

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1200メートル飛行場を検討

小笠原諸島の父島は、本土から約1000km離れているにもかかわらず空港がなく、交通手段は片道24時間かかる定期船「おがさわら丸」に限られています。「おがさわら丸」は通常6日に1便の運航されているだけです。

このため、小笠原村では住民の救急搬送などのため航空路開設を求めてきました。2017年7月には、東京都と小笠原村による「小笠原航空路協議会」が開かれ、父島の州崎地区に1200メートル規模の飛行場を整備する案を軸に検討する方針が決定しています。

父島洲崎飛行場位置図
画像:第6回小笠原航空路協議会資料より

環境破壊の懸念も

州崎地区は世界遺産の範囲外になっていて開発が可能であり、旧海軍の飛行場跡地も残っています。そのため、新飛行場建設の候補地として浮上しました。

ただ、周辺に高さ規制に抵触する地形があるため、峠を切り崩す必要があります。また、滑走路長を確保するためには海を埋め立てなければなりません。環境破壊を懸念する立場からの慎重意見は根強くあります。

こうした声を受け、滑走路を縮小する案も浮上してきました。朝日新聞2017年12月28日付によりますと、「従来、約1200メートルの滑走路を検討してきたが、(中略)縮小に転換」し、「実現性の高さから縮小案で議論を急ぐ」としています。

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水上飛行艇は困難

いずれにしろ、地元でも救急搬送の観点などから、航空路を求める声は切実で、飛行場建設そのものに反対する声は小さいように感じられます。

水上飛行艇による航空路案もありましたが、湾内は船舶の通行区域と重なり着水帯の確保が困難、湾外は波の影響から飛行艇の就航自体が困難という結論が出ています。

航空路を作るには飛行場が必要で、作るとして、環境に配慮しどの程度の規模にするか、という議論に移っているとみてよさそうです。

小笠原父島
父島二見港

本土と2時間半

協議会の資料によりますと、1200メートル規模の滑走路が建設された場合、50人乗り規模のプロペラ機が本土と約2時間半で結ばれると想定しています。1日2往復して価格が35,400円となった場合で、飛行機と船の利用割合は8対2になる予測です。

1200メートル滑走路は、この規模のプロペラ機を運航するための最低条件で、もし滑走路が短くなれば、使用機材は20人乗り程度の小型機に限られます。

現在の小笠原村への流動は年間2万5000人程度。50人乗り飛行機でこれを運びきるには年間500往復で、1日2便で足ります。しかし、20人乗り小型機なら1,250往復、1日4便が必要という計算になります。

むろん、これは机上の計算であり、実際には運賃水準や観光客増や人口減などの変数も考慮する必要があるでしょう。

2018年度予算案に計上された調査費は約1億2,000万円。都では、小笠原返還50周年にあたる2018年に、飛行場建設の方向性を示すとしています。建設が決定すれば、2018年の大きなトピックスになるでしょう。(鎌倉淳)

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