JR大船渡線気仙沼~盛間の廃止が事実上決定。沿線自治体がBRT継続を受け入れ。気仙沼線柳津~気仙沼も廃止の方向

JR大船渡線の気仙沼~盛間の廃止が事実上決まりました。同区間は、東日本大震災で被災し、現在はバス高速輸送システム(BRT)が暫定運行しています。これについて、JR東日本が鉄道路線の廃止とBRTの継続運行を提案していましたが、沿線自治体3市が受け入れたため、鉄路の復旧の可能性はなくなりました。

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復旧費用は1,100億円

JR大船渡線と気仙沼線は、2011年3月の東日本大震災で被災し、気仙沼線柳津~気仙沼の55.3kmと大船渡線気仙沼~盛43.7kmが現在も不通となっています。JRはこの区間にBRTを暫定運行し、仮復旧としています。

気仙沼線と大船渡線を合わせた復旧費用は1,100億円と見込まれています。このうち現状復旧費用は430億円で、残る670億円は線路の高台移設など、安全確保のための費用です。

JR東日本は復旧費用430億円の負担に前向きな姿勢を見せたものの、移設費用など670億円について国や地元自治体の負担を求めてきました。これに対し、国は負担に難色を示しています。

気仙沼駅

責任を持ってJRがBRTを継続運行

この問題について話し合う「沿線自治体首長会議」が2015年12月25日に国土交通省で開かれました。この会議で、JR東日本は、鉄路の復旧は難しいことをあらためて報告したうえで、JRが責任を持ってBRTを継続運行し、産業や観光振興による地域活性化にも取り組むことを約束しました。

ローカル路線バスが日本各地で次々と失われつつある現代においては、BRTであっても、JRが責任を持って運行するというのはそれなりに重い約束と言っていいでしょう。

沿線の岩手県大船渡市と陸前高田市、宮城県気仙沼市はJRの提案を受け入れ、大船渡線の鉄路復旧を断念し、BRT継続運行を容認しました。これにより、大船渡線気仙沼~盛間の廃止が事実上決まりました。

同じくBRTが暫定運行している気仙沼線の柳津~気仙沼間については、沿線の宮城県登米市と南三陸町が同意しましたが、気仙沼市が仙台へのアクセス手段などでJRと協議が必要だとして結論を持ち越しました。すでに2市町が同意しているため、最終的には鉄道廃止となる可能性が高そうです。

「三陸縦貫鉄道」時代の終わり

これらの区間が正式に廃止となれば、宮城県から青森県に至る、いわゆる「三陸縦貫鉄道」が、1984年の全通(三陸鉄道開業)以来、約31年ぶりに途切れることになります。

気仙沼線の柳津~本吉間の開業は1977年で、そのときの志津川町の熱狂ぶりは宮脇俊三「時刻表2万キロ」にも描かれ、ご存じの方も多いと思います。それが、わずか30数年で廃止になると聞くと、感慨を覚えずにはいられません。

旧志津川町を町域に含む南三陸町の佐藤仁町長は、「三陸自動車道の志津川インターチェンジが2016年度に完成すれば、1時間ほどで仙台に行くことができる」と述べ、鉄道廃止を受け入れる理由の一つに挙げました。議論となっている仙台へのアクセスは高速道路が完成すれば問題にならない、ということのようです。

震災を機に三陸縦貫鉄道の時代は終わり、三陸縦貫道路の時代が訪れる、ということなのでしょうか。(鎌倉淳)

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