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JR九州がフリーゲージトレインの導入断念へ。九州新幹線長崎ルートはどうなる?「全線フル規格」なら財源論

JR九州が、九州新幹線長崎ルートでのフリーゲージトレイン(FGT、軌間可変車両)の導入を断念する方針を固めました。日本経済新聞が報じています。導入断念が決まれば、フル規格での建設を求める声が強まりそうです。

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「リレー方式」で開業予定

九州新幹線長崎ルートは新鳥栖~長崎間を結ぶ整備新幹線です。現在、フル規格の新幹線として建設が進められているのは武雄温泉~長崎間だけで、新鳥栖~武雄温泉間は在来線の線路を活用することが決まっています。

長崎ルートは2022年度に「リレー方式」で開業予定となっています。博多~新鳥栖~武雄温泉間は在来線を特急列車が走り、武雄温泉駅で在来線と新幹線がホームで対面接続し、新幹線列車は武雄温泉~長崎間だけを走る形です。

着工時は、在来線と新幹線を直通できるFGTを導入する予定でしたが、開発が間に合わず、こうした「リレー方式」となりました。国土交通省は、2022年度に1編成のみFGTを導入し、2025年度にFGTによる全面開業を目指すとしています。

フリーゲージトレイン

記者会見で消極姿勢示す

とはいえ現時点でも、FGT開発のメドが立ったとはいえません。FGTは2016年12月から2017年3月まで検証走行試験が実施されており、近く開かれる専門家による技術評価委員会が試験結果を判断し、今後の方針が示される予定です。

2022年度の「1編成」や2025年度の「全面開業」が実現できるかはなんともいえませんが、仮に実現したとしても車両価格やメンテナンスのコストが高すぎるという問題点が指摘されています。

JR九州の青柳俊彦社長は、2017年5月29日の記者会見で、FGTについて「技術的なレベルでは現在のところ問題はない」と述べたものの、維持管理コストについて「既存の新幹線システムより2.5~3倍の費用がかかる」と述べました。経済性の観点から導入に消極的な姿勢を示しているわけです。

7月にも正式表明へ

日本経済新聞2017年6月13日付は、「JR九州は2022年度に開業予定の九州新幹線長崎ルートで、新型車両のフリーゲージトレインの導入を断念する方針を固めた」と報じました。「7月にも政府・与党などに正式に伝える。実用化のメドが立たず、安全性や車両コストに課題があると判断した」としています。

また同紙6月14日付では「車体価格などコストが通常よりも約3倍になるうえ、長崎と新大阪を直通運転することもできない。昨秋に上場し、実質赤字の鉄道事業に株主から厳しい視線を向けられるなか、十分な収益を得られないと判断した」とし、上場したことで、運行採算性で問題のあるFGT方式を受け入れられなくなったことを理由に挙げています。

さらにFGTの安全性も課題として挙げ、「社内では『万が一事故が起きた際に責任を取るのは我々だ』という意見も根強い」としています。

開発が難航していることにくわえ、安全性と経済性の両面の問題点が存在することから、JR九州としては、技術評価委員会が出す結論の内容にかかわらず、FGTを前提とした九州新幹線長崎ルートの運行計画そのものを拒否する姿勢を明確にしたといえそうです。

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FGTに変わる運行形態は?

仮に、JR九州がFGTの導入を断念したとすると、九州新幹線長崎ルートの運行形態の見直しが行われることになります。その場合、選択肢として考えられるのは、次の3つでしょう。

1 全線狭軌での開業
2 リレー方式の恒久化
3 全線フル規格での建設

1は、武雄温泉~長崎間を狭軌鉄道とする方法で、「スーパー特急方式」とも言われます。博多~長崎を乗り換えなしで結ぶことができるので旅客の利便性は良いですし、追加の建設費用も少なくて済みます。

しかし、長崎県が「新幹線」という名称の高速鉄道を断念することになりますので、「新幹線」と叫び続けてきた地元政治家には受け入れられない話でしょう。新幹線建設が政治家によって決められる以上、1の可能性は低そうです。

佐賀県が同意するか

2は、「全線フル規格」を目指しながらも、実際はリレー方式が恒久化するという形です。現在の整備新幹線建設スキームを変更しないなら、財源負担を嫌う佐賀県がフル規格新幹線の建設に同意する見込みはなく、2になる可能性が高そうです。

3の「全線フル規格」での建設を目指すなら、佐賀県の財政負担を減らした上で、長崎線の三セク移管をしない形に持ち込むしかなさそうです。

JR九州が長崎線を運行し続けることは可能としても、佐賀県の財政負担を減らすことは容易ではありません。佐賀県を「整備新幹線建設スキーム」の例外扱いにすることを意味しますから、実現には強い政治力が必要になりそうです。

「全線フル規格」の声が強いが

これらの可能性のうち、どれになるのかはまだ見えませんが、地元政治家には「全線フル規格」を求める声が強いようで、最終的には3に落ち着きそうな印象を受けます。

そうなると、今度は財源論が浮上します。整備新幹線の財源は、北海道新幹線札幌開業の2030年度まで余分はありません。さらに、2兆円強の巨費がかかる、北陸新幹線敦賀以西も控えています。

新幹線建設財源が有限である以上、新鳥栖~武雄温泉間に新たなフル規格新幹線を作る予算をひねり出すのは、一筋縄ではいきません。九州新幹線長崎ルートの完成形が見えるのは、もう少し先の話になりそうです。(鎌倉淳)

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