JR四国社長が、将来の「路線存廃の検討」に言及。現時点で廃線計画はないけれど「維持するのがやっと」

JR四国の半井真司社長が、四国内の鉄道網の維持について、将来的にさまざまな検討をすることを示唆しました。全国的に鉄道の地方路線の輸送密度が低下するなか、JR四国も危機感を強めているようです。

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存続・廃止を含め検討

日本経済新聞2016年11月1日付によりますと、JR四国の半井社長は10月31日の記者会見で、四国内の既存鉄道網について「(将来は)存続・廃止を含め、幅広く検討しないといけない」と述べました。

最近のJR四国は、「伊予灘物語」「四国まんなか千年ものがたり」などの観光列車を開発し、需要創出に力を入れています。しかし、人口減少や高速バスや航空機との競争激化で「今の路線を維持するのがやっと」(半井社長)が実情と明かしており、将来の展望を描ききれていないことを示唆しました。

日経によりますと、現在、具体的な廃線計画はないものの、「現状のままで維持が難しい場合、維持する際の負担のあり方、廃線による交通ネットワークへの影響など関係機関での議論の場を設け、結論を出す必要性に言及した」そうです。

となると、遠くない将来、鉄道網の維持について、JR四国が地元自治体などと協議することになりそうです。

牟岐線

輸送密度2000人未満は6区間

JR四国は、近年、決算公表時に各区間の輸送密度(平均通過人員)を公表しています。それによりますと、2015年度の1日1キロあたりの輸送密度2000人未満の区間は以下の通りです。

牟岐線 牟岐~海部 262
予土線 北宇和島~若井 307
予讃線 向井原~伊予大洲 444
牟岐線 阿南~牟岐 741
土讃線 須崎~窪川 1162
鳴門線 池谷~鳴門 1944

輸送密度低下による鉄道廃止に明確な基準はありませんが、牟岐線の末端部や予土線は、いつ廃止協議が始まってもおかしくないくらいの水準です。

上記以外の輸送密度は、JR四国が公表している以下の地図をご覧ください。

JR四国の輸送密度

ドル箱路線はほとんどなし

この地図でわかるように、JR四国では、予讃線、瀬戸大橋線といった電化区間を除くと、輸送密度4000人未満か4000人を少し超える程度の路線がほとんどです。現時点では4000人を超えていても、人口減少が続けば、それを下回ることになりそうな区間も散見されます。

一方で、輸送密度が10000人を超える区間は、高松エリアと瀬戸大橋線近辺のみに限られます。JR四国にはドル箱といえる路線がほとんどなく、赤字区間に対する内部補助が難しいことをうかがわせます。

現時点の輸送密度を見る限り、土讃線や高徳線といった主要路線が廃止議論の俎上にのることは当面なさそうです。しかし、経営安定基金を考慮しても、ほとんどの区間で黒字運営をするのが困難なことも推察でき、「議論が必要」という社長の言葉が重く響きます。(鎌倉淳)

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