「8.10ペーパー」が2017年春にやっと失効。JALが羽田・ニューヨーク線を開設へ。

「8.10ペーパー」で新規路線の開設を制限されてきたJALですが、それが予定通り2016年度末で失効、終了する見通しとなりました。ペーパー失効を受け、JALは、2017年4月にも羽田・ニューヨーク線を開設するようです。

広告

「8.10ペーパー」の期限は2016年度末

JALは2010年の経営破綻後、民主党政権下で企業再生支援機構から3500億円の出資を受けるなどして再建されました。経営破綻からわずか2年後の2012年には、株式を再上場しています。

これに対し、代わった自民党政権は「当時の政府の公的支援が厚すぎた」などと問題視し、「8.10ペーパー」という行政指導をおこないました。これにより、JALは新規事業を制限され、新路線の開設ができなくなっています。

「8.10ペーパー」の期限は2016年度末。つまり、2017年3月です。ライバルのANAはペーパーの延長を政府に働きかけてきたようで、これが予定通り失効するかが、ひとつの焦点となってきました。

羽田空港JAL

国土交通省は認可するか

各社報道によりますと、JALは、2017年4月から羽田・ニューヨーク線を開設する準備に入ったようです。この新路線が実現するとなれば、「8.10ペーパー」の期限延長はなく、予定通り2017年4月からJALは新路線の開設が可能となることを意味します。

国土交通省が、JALの羽田・ニューヨーク線を認可するかはわかりません。経営再建の過程でのJAL支援はたしかに「過剰」と言われても仕方ないくらいでしたし、その結果、JALとANAの財務体質には大きな差がついてしまい、今も解消していません。

しかし、JALはすでに法人税を納めていますし、再上場から時間も経過しています。これ以上、上場企業の新規事業を制限するのはさすがに無理がありますし、おそらく、羽田・ニューヨーク線は認可されるでしょう。そのメドが立ってきたから、情報が漏れて各社報道に至ったと思われます。

広告

ホノルル線の枠を振り向け

JALは、2016年春に行われた羽田発着の米国枠新規配分を受けられず、深夜・早朝枠から昼間枠への移設しか認められませんでした。

増枠分を独占したANAは2016年10月より羽田からニューヨーク、シカゴ線を新設する一方、JALは既存の深夜・早朝枠のホノルル線、サンフランシスコ線を昼間時間帯に移すだけにとどめています。

今回のニューヨーク線は、このうちのホノルル線に使っている枠を振り向けるようで、新路線といってもホノルル線の減便のうえに成り立つわけです。

39年ぶりの「復活」

「8.10ペーパー」失効後の新路線第一弾が「羽田・ニューヨーク線」というのは、どこか象徴的です。成田開港以来39年ぶりの路線「復活」でもあり、JALとしては、「8.10ペーパー」終了をPRするのに、うってつけ、とみているのかもしれません。

とはいえ、ペーパーが終わったからといって、航空行政において国土交通省の裁量の余地が大きいという状況は変わりません。

ようやく解けた「8.10ペーパー」の呪縛。ただ、これでJALが自由に空へ飛び立てるようになるかは、もう少し様子を見た方がよさそうです。(鎌倉淳)

広告
前の記事JR北海道の島田社長が根室線東鹿越~新得間の復旧を明言せず。札沼北線も廃止打診か
次の記事新幹線の札幌駅ホーム位置は「認可案」と「東側案」に絞り込み。年内にも最終決定へ