地方航路が苦戦。宿毛フェリーは運休、寺泊・赤泊航路は廃止へ

駿河湾フェリーは当面継続

地方航路が苦戦しています。高知県と大分県を結ぶ宿毛フェリーが突然の運休。静岡県の駿河湾フェリーも、運営会社が撤退を表明しました。佐渡へ向かう寺泊・赤泊航路は、2019年春の廃止が決まりました。

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燃料高騰で突然運休

高知県宿毛市と大分県佐伯市を結ぶ宿毛フェリーが、突然、運休を決めたのは、2018年10月18日夜のこと。燃料の重油の値上がりにより資金繰りが悪化し、翌19日午前0時30分の宿毛発便からの運休を四国運輸局に届け出ました。

同社はウェブサイトで「燃料高騰の為、当分の間、全便運航休止となります」と告知。突然の運休に、驚きが広がりました。

四国運輸局高知運輸支局と高知県、宿毛市が、10月22日に高知市の運輸支局で会合を開き、情報を交換。会社側が「燃料高騰が改善すれば運航再開を検討する」との姿勢を示していることもあり、現段階では、航路廃止の考えはないようです。

ニューあしずり
画像:宿毛フェリー

2度目の運休

宿毛・佐伯航路は1971年に宿毛観光汽船が開設したのが最初です。しかし、高速道路整備で先行し利便性が高くなった八幡浜航路へ利用者が転移。宿毛観光汽船は2004年1月に破産、運航を停止しました。つまり、今回は2度目の運休劇となります。

2004年の宿毛観光汽船破産時は、地元自治体などの支援により、新たに宿毛フェリーが設立され、同年12月に運航再開に漕ぎ着けました。宿毛観光汽船時代は2隻体制でしたが、運航再開時に1隻体制の1日3往復に縮小しています。

船舶の更新問題も

しかし、宿毛フェリーとして再出発後も旅客は減り続け、2017年度の利用実績はトラックが5,486台、乗用車は12,580台。1日あたりトラック15台、乗用車34台の計49台しか運んでおらず、1便あたり8.1台にすぎません。

運航する船は999トンの「ニューあしずり」。乗用車60台、またはトラック12台を運べます。利用実績から計算すると、自動車の積載率は平均で25%程度です。

利用者がこれだけ少なければ、航路の維持は容易ではありません。「ニューあしずり」は1985年竣工で老朽化が進んでおり、更新問題も浮上してくるでしょう。今後、再開に向けて減便や運賃改定も検討するとのことですが、先行きは見通せません。

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駿河湾フェリーは、当面運航継続

静岡県の清水港と土肥港を結ぶ駿河湾フェリーも、2018年5月に、運航するエスパルスドリームフェリーが2019年3月末での撤退を発表しました。2005年8月期以降赤字が続いており、2017年8月期は約1億円の損失を計上。黒字転換の見通しがなく、今後の事業継続は困難と判断したものです。

その後、静岡県と運航会社側の話し合いにより、運航会社がフェリー1隻と施設一式を静岡県に無償譲渡することが決定。静岡県と関係6市町が「当面の措置」として協力しながら運航を続けることで合意しました。

運営の新たな枠組みについては検討中です。2019年4月以降の当面は、現在の運営者であるエスパルスドリームフェリーに運航を委託する形になることが決まっています。

駿河湾フェリー
画像:駿河湾フェリーウェブサイトより

寺泊・赤泊航路は廃止へ

新潟県の佐渡汽船は、10月23日に新潟県の寺泊・赤泊航路を廃止する方針を決めました。同航路は高速船「あいびす」1隻で運航されていますが、利用者の減少や船員不足により、2017年に佐渡汽船が撤退を表明していました。

寺泊・赤泊航路が開設されたのは1973年。開設以来、赤字体質で、2016年度の損失は年間約1億4000万円にのぼっていました。同社の主力の新潟・両津航路の黒字で維持してきましたが、それも限界に達したとして、寺泊・赤泊航路の撤退を表明したものです。

その後、自治体などとの協議により、2018年度は1億1,000万円の公的支援をうけながら、4月28日~10月1日の週末を中心に限定運航。10月2日以降は運休となっています。

このほど明らかになった2018年度の利用者数は1万794人。割引やツアー誘致などの振興策を実施したものの、目標としていた2万6,300人に届きませんでした。船員不足もあり、2019年度の運航は難しいと判断。廃止が確定ました。

高速船あいびす
画像:佐渡汽船ウェブサイトより

寺泊・小木航路を開設

ただし、2019年度は寺泊・小木航路を開設し、公的支援を受けながら年間20日程度運航する方針も決まりました。年20日程度なら、船員を確保できるそうです。

小木からは直江津航路が出ています。佐渡汽船としては、佐渡側の発着地として、赤泊を廃止し小木へ集約するわけです。小木から寺泊への高速船を、繁忙期を中心に設定するようです。

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幹線航路への集約進む

3つの例を見てみましたが、地方航路の不振の理由は複合的です。利用者減、船員不足、燃料費高騰などが主たる要因でしょうか。

利用者減については、そもそも地方の人口減少や高齢化が背景にあるでしょう。地方航路の場合は、インバウンドの恩恵も及ばず、人口減少・高齢化がそのまま利用者減につながってしまいます。船員不足も、背景には人口減少と高齢化の問題があります。

フェリーの場合、高速道路網の整備も影響しています。駿河湾フェリーの苦戦の理由は、伊豆半島へ高速道路が整備されてきたことによる部分が大きいでしょう。宿毛フェリーの場合は、宿毛市付近に高速道路が到達していないことが、八幡浜航路に対して不利に働いています。

利用者としても、便数が多くて利便性の高い航路を好みます。結果として、地方航路は優劣がはっきりしてきて、四国・九州間は三崎、八幡浜発着航路が強く、佐渡へは新潟・両津航路が圧倒的です。

この傾向が続くならば、今後も規模の小さな地方航路の苦戦は続き、利便性の高い航路への集約が進んでしまいそうです。(鎌倉淳)

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