関西私鉄、2023年新運賃の比較研究。南海も値上げで全社が改定へ

値上げの季節がやってくる

南海電鉄が2023年10月の運賃値上げを発表しました。関西の大手私鉄5社とJR西日本が2023年に相次いで値上げすることになります。各社の新運賃を比較してみましょう。

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南海は10月値上げへ

南海は2023年10月1日に運賃改定を実施すると発表し、国土交通省に申請しました。関西の大手鉄道会社では、これまでに阪急、阪神、京阪、近鉄とJR西日本が2023年4月1日の値上げを発表しており、大手私鉄とJRの6社が2023年に相次いで値上げすることになります。

これら6社のうち、阪急、阪神、京阪、JR西日本は、鉄道駅バリアフリー料金制度を導入するもので、値上げ額は区間にかかわらず10円となっています。

一方、近鉄と南海は同料金制度を活用しない運賃改定です。近鉄は区間により20円~580円を値上げし、普通運賃の改定率は17%です。南海は20円~40円を値上げし、普通運賃の改定率は9%です。

南海和歌山市駅

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関西6社の新運賃比較

新型コロナ禍の乗客減少などを受け、鉄道各社が値上げを実施するわけですが、これにより運賃水準はどう変わるのでしょうか。

阪急、阪神、京阪、南海、近鉄、JR西日本の新運賃を、キロ程ごとに比較してみたのが下表です。JR西日本は60kmまでは電車特定区間、65~100kmまでは幹線の運賃表を用いています。JRの値上げは電車特定区間のみで、幹線区間は据え置きです。

以下の運賃は、南海以外は2023年4月1日から適用、南海は2023年10月1日から適用予定です。

関西鉄道会社運賃比較2023年版(円)
距離
(km)
阪急 阪神 京阪 南海 近鉄 JR西
1 170 160 170 180 180 140
2 170 160 170 180 180 140
3 170 160 170 180 180 140
4 170 160 220 240 240 170
5 200 200 220 240 240 170
6 200 200 220 240 240 170
7 200 200 220 240 300 190
8 200 200 280 290 300 190
9 200 250 280 290 300 190
10 240 250 280 290 300 190
11 240 250 280 290 360 230
12 240 250 280 370 360 230
13 240 250 320 370 360 230
14 240 280 320 370 360 230
15 280 280 320 370 430 230
16 280 280 320 420 430 320
17 280 280 320 420 430 320
18 280 280 350 420 430 320
19 280 300 350 420 490 320
20 290 300 350 490 490 320
21 290 300 350 490 490 410
22 290 300 350 490 490 410
23 290 300 370 490 530 410
24 290 300 370 540 530 410
25 290 320 370 540 530 410
26 290 320 370 540 530 480
27 330 320 370 540 590 480
28 330 320 370 610 590 480
29 330 320 390 610 590 480
30 330 320 390 610 590 480
31 330 330 390 610 680 570
32 330 330 390 650 680 570
33 330 330 390 650 680 570
34 390 330 390 650 680 570
35 390 410 650 680 570
36 390 410 690 760 660
37 390 410 690 760 660
38 390 410 690 760 660
39 390 410 690 760 660
40 390 410 740 760 660
41 390 410 740 830 740
42 390 420 740 830 740
43 410 420 740 830 740
44 410 420 740 830 740
45 410 420 790 830 740
46 410 420 790 910 820
47 410 430 790 910 820
48 410 430 790 910 820
49 410 430 790 910 820
50 410 430 850 910 820
55 480 880 1,000 950
60 480 930 1,070 950
65 540 970 1,140 1170
70 540 1,010 1,210 1,170
75 640 1,060 1,290 1,340
80 1,060 1,370 1,340
90 1,140 1,530 1,520
100 1,230 1,670 1,690
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近距離でJRが安く

近距離では、JR西日本の電車特定区間が安く、4km区間以外では15kmまで最安値です。値上げ後も10kmまで100円台で利用できるという低水準を維持します。

JRを除く私鉄は、初乗り運賃こそ各社間での差が小さいですが、4km以上で差が広がり始めます。

阪急と阪神が安定的に安く、近鉄と南海が全体に高めです。京阪はその中間でしょうか。50km区間では、阪急が410円、京阪が430円に対し、南海が850円、近鉄が910円となっていて、倍以上も値段が違います。

阪急・阪神は中距離が安く

各社別に見て行くと、阪急は10km(240円)から26kmに(290円)かけて運賃の上がり方が小さく、16kmで50円しか上がりません。梅田から塚口(10.2km)や正雀(11.8km)は240円しますが、御影(25.6km)や高槻市(23.0km)まで乗っても290円です。中距離帯でJRと激しく競合するため、価格を低く設定しているのでしょう。

阪神は阪急とほぼ同じ価格ですが、近距離で若干安く、中距離で若干高くなっています。阪急と比べて9kmと14kmが高めです。梅田を起点とすれば、8.9kmの尼崎、13.9kmの鳴尾が該当します。

中距離帯以降の上がり幅は小さく、梅田起点で甲子園(280円、14.1km)と三宮(330円、31.2km)の運賃差は50円にとどまります。

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京阪は中距離が高く

京阪は、阪急・阪神とは対照的に中距離が高くなっていて、近距離と長距離は低めです。大阪市内の近距離で大阪メトロと競合し、京阪間の長距離でJR・阪急と競合するためでしょうか。独占エリアの淀川左岸エリアを利用すると、運賃が高くなる設定です。

淀屋橋を起点とすると、守口市(8.3km)は280円で、三条(49.3km)が430円となっています。三条は守口市より40km以上も遠いのに、運賃差は150円に過ぎません。

南海・近鉄は満遍なく

南海や近鉄はこうした極端な運賃傾斜をとっておらず、おおむね距離に比例して価格が上がっていきます。

それでも両社とも、沿線状況にあわせた運賃施策の違いはあります。南海は30km以上の運賃上昇がややなだらかで、JRと同水準の運賃にとどめています。近鉄はおおむねJRよりも運賃水準が高く、JRに追いつかれるのは100kmになってからです。

南海は大阪~和歌山間でJRを意識し、近鉄は大阪~名古屋間でJRを意識している、ということでしょうか。

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準大手、西鉄との比較

近鉄・南海は関西大手私鉄のなかで運賃が高めですが、準大手や他エリアと比べるとどうでしょうか。関西の準大手私鉄の神戸電鉄、山陽電鉄と、九州の大手私鉄の西日本鉄道と比べてみます。

神戸電鉄、山陽電鉄は2023年4月1日に、西鉄は2023年に3月27日に、それぞれバリアフリー料金制度を導入する予定で、下表はその新運賃と近鉄、南海の新運賃を比較しています。

準大手・西鉄運賃比較2023年版(円)
距離
(km)
神鉄 山陽 西鉄 南海 近鉄
1 190 170 170 180 180
2 190 170 170 180 180
3 250 200 170 180 180
4 250 200 220 240 240
5 310 250 220 240 240
6 310 250 220 240 240
7 360 250 270 240 300
8 360 320 270 290 300
9 410 320 270 290 300
10 410 320 320 290 300
11 430 390 320 290 360
12 430 390 320 370 360
13 470 390 320 370 360
14 470 470 370 370 360
15 510 470 370 370 430
16 510 470 370 420 430
17 510 470 370 420 430
18 540 540 420 420 430
19 540 540 420 420 490
20 540 540 420 490 490
21 580 540 420 490 490
22 580 600 470 490 490
23 580 600 470 490 530
24 600 470 540 530
25 600 470 540 530
26 660 470 540 530
27 660 530 540 590
28 660 530 610 590
29 660 530 610 590
30 700 530 610 590
31 700 530 610 680
32 700 580 650 680
33 700 580 650 680
34 700 580 650 680
35 740 580 650 680
36 740 580 690 760
37 740 640 690 760
38 740 640 690 760
39 740 640 690 760
40 780 640 740 760
41 780 640 740 830
42 780 690 740 830
43 780 690 740 830
44 780 690 740 830
45 800 690 790 830
46 800 690 790 910
47 800 740 790 910
48 800 740 790 910
49 800 740 790 910
50 830 740 850 910
55 860 810 880 1,000
60 870 930 1,070
65 930 970 1,140
70 1,000 1,010 1,210
75 1,040 1,060 1,290
80 1,060 1,370
90 1,140 1,530
100 1,230 1,670
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神鉄が高く、西鉄は安め

神戸市北部へ延びる神鉄は、バスとの競合が激しいですが、経営難もあり、運賃水準は高めです。1kmから23kmの全区間で、他社よりも高い運賃であることがわかります。

山電は近距離こそ安いですが、8km以上の中距離で価格がぐんと上がり、南海・近鉄より高めです。ただ、30km以降では近鉄との差が小さくなり、41km以上で近鉄より安くなります。JRとの競合を意識した運賃設定のようです。

西鉄は南海、近鉄と比べて全体的に安く、この5社では最安値です。ただ、阪急・阪神や京阪と比べれば高いです。

全体としては、値上げ後も近鉄、南海と山電の運賃水準に大きな差はなく、西鉄はそれよりやや安く、神鉄は高い、という状況でしょうか。

他社も追随か

関西の鉄道各社が運賃値上げをするとはいえ、バリアフリー料金制度以外の値上げは近鉄と南海だけです。

そして、近鉄の値上げ率が大きいため、結果として、2023年度以降の運賃水準は、近鉄が他の大手私鉄より高くなります。南海はそれに次ぐ水準です。

ただ、今回はバリアフリー料金の導入にとどめた他社も、インフレを受けて今後、本格的な運賃改定に踏み切る可能性もあります。その場合、いずれ近鉄・南海との価格差が縮まっていくかもしれません。(鎌倉淳)

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