日田彦山線添田~夜明間の鉄道復旧は厳しく。BRT転換の流れ強まる

東峰村は猛反対

不通が続くJR日田彦山線の添田~夜明間について、BRT転換の流れが強くなってきました。沿線自治体で容認姿勢が広まり、方向性が固まりつつあるようです。

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新たな復旧案

JR日田彦山線の添田~夜明間は、2017年7月の豪雨で被災し、現在も不通が続いています。JR九州と、福岡、大分両県をはじめとする沿線自治体は、「日田彦山線復旧会議」を設けて協議を続けてきました。

2020年2月12日に開かれた第5回会議では、JR九州が新たな復旧案を提示。BRTでの運行について、停留所や車両、運行体系の具体案を示しました。

それによりますと、添田~彦山間が一般道、彦山~筑前岩屋間がBRT専用道、筑前岩屋~日田間が一般道を通ります。一般道区間ではこれまでの鉄道駅以外の停留所を増やし、利便性を高めるとしています。

日田彦山線BRT案
画像:JR九州

添田駅で対面乗り換え

BRTは、添田駅~日田駅を直通運行。添田駅、夜明駅、日田駅でJR線と接続します。添田駅では、鉄道とホームを挟んで対面で乗り換えられるようにします。

日田彦山線BRT案
画像:JR九州

また、BRTを軸として、駅や停留所において、バス・タクシーなど他の交通機関との結節を強化する方針も示しました。

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車両はバリアフリー対応

車両はバリアフリーに対応。乗降時に車両を傾け、地面からバスの入り口までの高さを25センチ程度とします。駅など可能な箇所は、乗り場をかさ上げし、バスの入り口までの高さをさらに軽減する方針も示しました。

日田彦山線BRT案
画像:JR九州

定時性が気になるバスですが、BRTでは待合室に運行情報モニタを設置し、バス位置や接近表示、遅延情報などを表示します。

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広がる容認論

こうしたJR九州のBRT案について、沿線自治体では容認論が広がってきました。

第5回の会議後に、広瀬勝貞大分県知事が「BRTは速達性や利便性がある程度確保されている」と受け入れ姿勢をにじませると、添田町の寺西明男町長は2月25日の地元説明会後の会見で「BRTでの復旧に住民の理解が得られた」と発言。日田市の原田啓介市長も、3月1日の地元説明会の後に、「鉄道の復旧が筋だが、断念せざるを得ない状況」と続きました。

地元首長がBRT容認に傾いてきた背景として、JR九州がBRT復旧に地元の費用負担を求めていない点があげられます。

JR九州の前田勇人副社長は、日田市での説明会で、「BRTは赤字が続いてもJR九州が責任を持って運営する」と説明しています。自治体としては費用負担がなく、将来にわたり赤字が見込まれる地域交通をJRが維持してくれるBRT案は魅力的です。

鉄道復旧の場合、JR九州は復旧費用に加えて年間1億6000万円の運行維持費支援を求めていて、自治体は容易に受け入れられません。小川洋・福岡県知事も「継続的な負担は県民の理解を得られない」と否定的です。

東峰村は容認せず

受け入れのカギを握るのは基礎自治体である添田町、東峰村、日田市の沿線3市町村です。

このうち添田町は添田以北で日田彦山線が存続し、日田市には久大線があります。両市町では中心部の鉄道が残るので、巨費を負担してまで不通区間を復旧させることに住民の支持は得られないようです。

一方で、不通区間が廃止されれば鉄道がなくなる東峰村は、BRT転換を容認していません。渋谷博昭村長はBRT案に猛反対していて、鉄道復旧を強く主張しています。

とはいえ、県を含め沿線自治体の多くがBRT容認姿勢を示すなか、全体の流れは決まりつつあるようです。日田彦山線復旧会議は、3月末までに次回の会合を開き、最終結論を出す見通しです。(鎌倉淳)

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