ホーム 鉄道 鉄道新線

なにわ筋線「事業費倍増」も衝撃小さく。2031年度開業は維持

想定の範囲内

大阪市中心部を南北に貫く「なにわ筋線」の総事業費が6,425億円に膨らむ見通しとなりました。当初計画の約3,300億円からほぼ倍増します。費用便益比(B/C)も1.05まで低下しましたが、昨今のインフレをみれば想定の範囲とも受け止められ、衝撃は大きくありません。大阪府市は事業継続を妥当と判断し、2031年度の開業目標を維持します。

広告

大阪駅と難波を結ぶ新線

なにわ筋線は、大阪駅からJR難波駅、南海新今宮駅方面を結ぶ全長約7.2kmの新線です。JR西日本と南海電鉄の列車が乗り入れる計画で、大阪都心と関西国際空港とのアクセス改善などを目的として、2021年に着工されました。

開業すれば、大阪駅から関西空港駅まで乗り換えなしで最速44分で結ばれる計画です。

なにわ筋線
画像:大阪市

 
広告

総事業費は6,425億円に

大阪府と大阪市は2026年8月18日、なにわ筋線の事業性を検証する会議をそれぞれ開催し、その結果を公表しました。

それによりますと、最新の総事業費は6,425億円となることが明らかにされました。

なにわ筋線の総事業費は、2017年時点の計画で3,291億円とされていました。今回の試算では3,134億円増加し、当初計画の約1.95倍に膨らみます。

事業費の上振れについては、2026年4月の段階で約6,500億円に達する見通しが示されていました。これを受け、大阪府・市が整備主体の第三セクター「関西高速鉄道」に対し、工法や費用の精査、コスト縮減策などの検討を求めていました。

関西高速鉄道が精査した結果、総事業費は6,425億円となりました。4月時点の概算からは若干圧縮したものの、当初計画からほぼ倍増することに変わりありません。

広告

資材価格高騰などが直撃

事業費増加の最大の要因は、物価上昇に伴う工事費の高騰です。

関西高速鉄道の試算では、工事費単価の上昇による増加額が1,645億円に達します。用地費単価の上昇でも459億円増加しました。このほか、地中障害物への対応なども事業費を押し上げています。

なにわ筋線は大阪市中心部を地下で縦断する大規模工事です。2021年に着工しましたが、その後の資材価格や人件費などの上昇が、当初想定を大きく上回る事業費につながっています。

さらに、今後の物価上昇によっては、追加費用が発生する可能性もあります。大阪市の試算では、物価上昇率によって330億~1,157億円程度が上乗せされるリスクがあります。

1日あたりの想定利用者数も見直され、従来の26万4000人から24万3000人へ、約2万1000人減少しました。将来人口予測の下振れを反映したようです。

広告

B/Cは1.49から1.05へ

事業費が大幅に増える一方、想定利用者数が減少したため、費用対効果(B/C)も悪化しました。費用便益比は、従来の1.49から1.05へ低下しています。

費用が倍増したにもかかわらず、便益が半減しなかったのは、便益算出の時間評価値を、2010年のパーソントリップ調査時点から、2021年時点の計測値に置き換えたことなどによるものだそうです。また、物価上昇は便益にも影響しますので、費用の増大がB/Cの低下に直結するわけでもありません。

B/Cは1を上回れば、計算上は費用を上回る便益が得られることを意味します。今回の再計算でも1を上回ったため、関西高速鉄道は事業継続を「妥当」と評価しました。大阪府市もこの評価を踏まえ、事業を継続する方針です。

ただ、1.05という数字は1をわずかに上回る水準です。今後さらに事業費が膨らめば、「1」を下回る可能性があります。

広告

大阪市の負担も最大594億円増

事業費の倍増に伴い、自治体の負担も増えます。

当初計画では、大阪府と大阪市がそれぞれ約550億円を負担することになっていました。大阪市は今回、追加負担額を最大594億円とし、市の負担総額の上限を1,146億円とする方針を示しました。

開業時期の変更はありません。大阪府市は、2030年度末までの工事完了を目指し、2031年度に開業する従来のスケジュールを維持する方針です。

広告

3年前の再評価は適切だったのか

なにわ筋線は、関西空港へのアクセス改善を担う重要路線です。工事も進捗していることから、事業費が大幅に膨らんでも、いまさら計画を中止するのは現実的ではなく、継続の判断は妥当というほかありません。

昨今の土木事業の激しいインフレをみれば、2017年時点の総事業費が倍増しても驚きは小さく、予見されていた範囲といえます。すでに4月に「6,500億円」という概算が示されていたこともあり、衝撃は大きくありません。

ただ、なにわ筋線は2023年度に事業再評価が行われていて、そのときに事業費の見直しがなされていません。そのため、わずか3年で事業費が倍増した形になってしまい、2023年度の再評価が適切だったのかという疑問は残ります。(鎌倉淳)

広告