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大糸線南小谷~糸魚川、「静かなる存廃協議」が大詰めに。鉄道高度化のハードル高く

「存廃」掲げず、6方式を比較

JR大糸線の糸魚川~南小谷間、いわゆる「大糸北線」の将来をめぐる議論が大詰めを迎えています。「存廃」を前提としない形で始まった検討会議ですが、鉄道高度化、バスなど6つの交通モードを比較する段階まで進んでいて、「静かなる存廃協議」が大詰めを迎えつつあるようです。

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「存廃」を前提とせず

大糸線の糸魚川~南小谷間は、「大糸北線」とも呼ばれ、JR西日本が運営する35.3kmの線区です。2024年度の輸送密度は1日150人で、1987年度の987人から約85%減少しています。

沿線自治体とJR西日本は利用促進策を施し、2024年度からは増便バスも運行しています。そのうえで、2026年4月に「大糸線(糸魚川・南小谷間)沿線地域公共交通検討会議」を設け、将来の地域交通体系について本格的な検討を始めました。

第1回会議で板谷和也会長(流通経済大学教授)は、会議の位置づけについて、「存続か廃止かということを前提として議論を行うことではない」と説明しました。大糸線を残すか廃止するかを議論するのではなく、地域に必要な交通機能を考える会議という前提を置いた形です。

大糸線

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必要な機能を整理

会議ではまず、沿線地域にどのような交通機能が必要なのかを整理しました。生活交通では糸魚川市と小谷村・白馬方面を結ぶ幹線交通、観光交通では北陸新幹線から白馬方面へのアクセスなどが必要とされました。

そのうえで8月の会議では、こうした機能を「どのような交通体系で実現するのか」を検討する段階に進みました。オブザーバーとして参加した国土交通省北陸信越運輸局の担当者は、「大糸線の再構築を進めていくにあたり、鉄道を継続するのか、あるいは別の交通モードにするのかという議論になっていく」と説明しています。

形式上は「存廃」や「あり方」を議題としていませんが、実際の議論は、鉄道を維持する場合と別の交通モードに転換する場合の双方を検討する段階に入っているわけです。「静かなる存廃協議」が進みつつある、といえそうです。

大糸線協議
画像:第1回大糸線(糸魚川・南小谷間)沿線地域公共交通検討会議資料

 

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鉄道高度化に20億円以上

2026年9月25日の会議から地域交通法に基づく法定協議会に移行し、鉄道高度化、観光列車、LRT、バス交通、BRT、DMVの6方式について具体的な比較を始めました。

鉄道の利便性を高めて維持する「鉄道高度化」では、新型車両導入、IC導入、運行本数増、パターンダイヤなどが検討点として挙げられました。実施する場合、行き違い設備などの改良に1か所約20億円、新型車両の導入に1両約5億円が必要と試算しています。運行経費は現在年間約6.4億円ですが、設備や要員を増やせば、それも増加します。

鉄道は専用軌道のため定時性が高い一方、大糸線では大雪などによる冬季の運休が課題です。また、白馬方面へのアクセスについても、大糸線は南小谷より北がJR西日本の非電化区間、南がJR東日本の電化区間と分かれているため、「相互乗り入れは難しい」としています。

大糸北線を「高度化」して、白馬への北陸新幹線アクセスに活用するハードルは高い、と受け止められます。

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観光鉄道化は?

大きな設備投資をせずに観光鉄道として活かす方法も、選択肢に挙げられました。

ただ、「生活交通機能の担保に課題」「車両が高価格帯」「設備保守が引き続き必要」「アテンダントの配置による人件費増」などと、課題が列挙されています。

車両さえ導入すれば実現のハードルは高くはなさそうですが、議論のテーマである「地域に必要な交通機能」については提供が難しい、ということです。

また、LRT化には、電化設備だけで少なくとも数百億円の投資が必要で、BRT化する場合も、鉄道敷を全線専用道とするならば、数百億円がかかるとしています。

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バスは「比較的安価」

一方、バスは国道148号など既存道路を利用するため、新たな走行空間の整備が不要です。車両や待合所などへの投資は必要ですが、初期費用、運行経費とも他の方式に比べて「比較的安価」と整理されています。

バスであれば停留所やダイヤを比較的柔軟に設定でき、糸魚川から白馬方面への直通も可能です。ただし、一般道路を走るため、鉄道に比べて定時性では劣ります。

現時点で、どの交通モードを採用するかは決まっていませんが、資料を見る限り、バスに優位性があるように読み取れます。

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バス運転士は誰が確保するのか

ただ、最近は、バス運転士の不足が全国的な問題になっています。にもかかわらず、今回の検討会資料では、バス運転士の確保策について明示されていません。

「実現可能性 持続可能性」という検討項目があるのですが、「運行可能」「安価」と記されているだけで、運行に不可欠な運転士をどう確保するのかについては触れられていないのです。

DMVについては、「鉄道および大型2種の2種類の免許を持つ運転士が必要」とあり、課題として明記しています。この対比を見ると、大型二種免許保持者を確保するだけなら、問題は小さいという前提に立っているように感じられます。

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JR西日本の責任

背景には、2023年に改正された地域交通法がありそうです。

改正地域交通法の基本方針では、JR線をバスなど別の交通モードに転換する場合、JR各社が持続的な運行と利便性の確保に十分協力するよう求めています。具体的には、JRのグループ会社による運行、地元企業への運行委託、代替交通の運行会社への共同出資などを例示しています。

つまり、大糸北線をバスに転換する場合でも、JR西日本が運行に責任を持つということです。直営とは限りませんが、バスの持続的な運行にJR西日本が協力するわけです。そのため、JR西日本が必要な運転士を確保できる前提になっているのかもしれません。

この点は、交通モードを絞り込んだ後に検討する事業主体や運行経費の議論で具体化するとみられます。

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年度末に方向性

大糸線の検討会議では、今後、交通モードを数案に絞り、それぞれについて運行本数やダイヤ、ルート、停留所、設備、初期費用、運行経費、事業主体、運行主体などを具体化していきます。鉄道高度化や、バス転換のより具体的な内容も、この段階で示されることでしょう。

その後、住民説明会やタウンミーティングなどで意見を聞き、2026年度末を目標に交通体系の方向性を示す予定です。つまり、半年後には、大糸北線を鉄道として存続するのか、廃止してバス転換するのか、方向性が示される、ということです。

ただし、板谷会長は、議論が十分に尽くされていない場合には、年度末に無理に結論を出さない考えも示しています。「廃止」が現実味を帯びてきた場合の、地域の反応を考慮してのことでしょう。

最終的にどのような方向性になるのかはわかりませんが、正直なところ、これまでの資料からは、鉄道維持に向けた熱意が感じられません。大糸北線の「静かなる存廃協議」は、大詰めにさしかかり始めているようです。(鎌倉淳)

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