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北陸新幹線延伸「ルール変更」の衝撃。再検討でも小浜・京都ルートが優位に

「一体評価」を導入

北陸新幹線新大阪延伸計画について、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)が実施したルート再検証の結果、小浜・京都ルートが費用便益比(B/C)で最も高い評価となったことがわかりました。ただ、費用便益比の試算では、これまでに使われていない「路線全体の一体評価」という新ルールを持ち出しており、今後の論点となりそうです。

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9ルートを比較

再試算は与党PTの指示で国交省がおこないました。現在の整備方針となっている小浜・京都ルートを含む9ルートを比較しています。試算結果は正式発表されていませんが、6月11日に報道各社が報じました。

各社報道によると、東京~新大阪間を一体の路線として評価した「一体評価」では、小浜・京都ルートの2案の費用便益比が、ともに1.1となり、他の6ルートを上回りました。

一方、延伸区間である敦賀~新大阪間のみを対象とした「個別評価」では、米原ルートの乗り換え案が1.0で最高となり、評価方法によって順位が異なる結果となりました。

北陸新幹線E7系

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再試算の結果

北國新聞2026年6月12日付によると、再試算の結果は以下の通りです。

ルート/一体評価/個別評価/概算建設費(物価上昇反映後)/工期
小浜(南北) 1.1/0.5/4.2兆(5.8兆)/25年
小浜(桂川) 1.1/0.5/3.9兆(5.5兆)/26年
亀岡     1.0/0.6/3.3兆(4.6兆)/25年
米原(乗入) 1.0/0.7/2.1兆以上(2.7兆以上)/18年
米原(乗換) 1.0/1.0/1.3兆(1.7兆)/18年
湖西(新設) 1.0/0.5/4.7兆(6.7兆)/28年
湖西(在来) 1.0/0.3/5.1兆(7.4兆)/28年以上
舞鶴(京都) 1.0/0.3/5.7兆(7.9兆)/25年
舞鶴(亀岡) 1.0/0.4/4.1兆(5.8兆)/25年

※工期については、小浜・京都ルート以外は、別途、整備計画変更や環境アセスなどに5~7年以上が必要。
※小浜・京都ルート、亀岡ルート、湖西ルート、舞鶴ルートは新大阪まで建設した場合の試算。米原ルートは米原まで建設した場合の試算。

北陸新幹線延伸ルート案
画像:国土地理院地図を加工
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異なる結果

ご覧のとおり、一体評価の費用便益比では、小浜・京都ルートの両案が1.1で、残る7ルートはいずれも1.0となり、大きな差はつきませんでした。

一方、敦賀~新大阪間のみを対象とした個別評価では結果が異なりました。

最も費用便益比が高かったのは米原ルート乗り換え案の1.0で、米原ルートの東海道新幹線乗り入れ案が0.7、亀岡ルートが0.6で続きました。

小浜・京都ルートは0.5にとどまり、湖西ルートや舞鶴ルートは0.3~0.5となりました。

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建設費は最大で7兆円超

建設費の比較では、最も安い米原ルート乗り換え案の建設費が1.3兆円で、小浜・京都ルートの3.9~4.2兆円の約3分の1にとどまります。

一方、湖西ルート新設案は4.7兆円で、小浜・京都ルート南北案より5,000億円も高くなっています。ルート詳細は定かではありませんが、おそらくは京都駅を経由するルートで、京都市内の通過に費用が嵩むと見積もったのでしょう。

湖西ルートでは、改軌案が5.1兆円と高額です。工事に手がかかるため、新設した方が早くて安い、ということでしょうか。

新大阪直通ルートのなかでは、亀岡ルートが3.3兆円と安くなっています。京都市内を通らないことで、費用が大きく削減できることが示されています。

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工期は米原ルートが最短

工期では、米原ルート乗り換え案が18年で最短でした。ただし、これから環境アセスメントをおこなうため、それを含めると25年以上とされました。米原ルート乗り入れ案の場合は、さらに時間がかかる見通しです。

湖西ルート新設案は28年で、環境アセスを含めると35年以上を要する可能性があるとされます。いっぽう、環境アセスに着手している小浜・京都ルートは25~26年とされました。

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従来基準なら米原一択

今回の再試算では、個別評価の費用便益比で基準となる1.0を超えるのは、米原ルートだけという結果でした。

小浜・京都ルートは、2016年のルート決定時には1.0を超えていましたが、今回の試算では0.5にとどまり、整備新幹線の着工5原則の一つである投資基準(B/C>1)を満たしません。

個別評価は、従来の新幹線建設の評価基準です。したがって、従来基準でみれば、小浜・京都ルートは着工基準を満たさず、着工見送りになる結果です。

採用可能なのは、米原ルートの乗り換え案だけです。つまり、今回の試算結果は、「米原一択」ということになります。

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新たな基準

ところが、今回、国交省は「路線全体の一体評価」という新たな基準を持ち出しました。東京~新大阪間が全線開業した場合の効果を一体的に評価した試算です。

北陸新幹線は高崎~新大阪間ですが、「一体評価」には東北・上越新幹線である東京~高崎間も含んでいるため、路線全体にとどまらず直通先全体を含んだ評価といえます。

費用便益比を直通先全体で評価する場合に、費用と便益をどこまで含めているのかは、現時点では定かではありません。

ただ、東京~新大阪間という長大な区間を全体としてみれば、どのルートでも費用や便益に大差がないため、結果の数字も差が小さくなるのでしょう。そのため、各ルートとも1.0~1.1の横並びになったとみられます。

そのなかで、1.1となった小浜・京都ルートが、もっとも優れた案であるように解釈できる結果となっています。ただ、どういう要因で差が付いたかなどは不明です。

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政治的に優れたルート

以上が、今回明らかになった、北陸新幹線新大阪延伸の再試算の結果です。

小浜・京都ルートは、「小浜経由」という閣議決定を遵守でき、「京都経由」というJR西日本の要望を満たし、過度な負担を嫌う滋賀県を経由しないという点で、政治的に優れたルートです。

だからこそ、2016年に小浜・京都ルートに決定したわけで、国交省としても、与党の多くの議員も、いまさらそれを変更する結果にはしたくないのでしょう。それが「一体評価」という新ルールを持ち出した理由とみられます。

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考え方は理解できるが

鉄道新線を建設する場合、建設区間だけを評価すると、末端部では費用便益比が小さくなりがちで、終点からの延伸が難しくなります。そのため、全体をみて評価するという新ルールの考え方自体は理解できますし、間違っているともいえません。

ただ、個別プロジェクトの議論のなかで別の基準を持ち出し、新ルールに据えてしまうと、結論を誘導しているように感じられるのも確かでしょう。

その点で、今回の試算が「恣意的」と批判される余地はあります。「B/Cなんて、どうにでも操作できる」と主張する人もいますが、その主張を裏付けるような手法にも感じられます。

新ルールを導入するのであれば、先に基準を改定したうえで、今回の事例に適用すべきだったと思いますが、その時間的な余裕がなかったのでしょうか。

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影響大きく

今回のルール変更が与える影響は大きそうです。「一体評価」を北陸新幹線だけに適用するわけにはいかないでしょうから、他の路線にも適用されうるでしょう。

当然、国交省もそれを承知のうえで、新基準を示したのでしょう。すなわち、今後の鉄道プロジェクトの評価基準が変わることを意味します。

たとえば四国新幹線は、直通先の山陽新幹線新大阪~岡山間を評価に加えうるでしょうし、東九州新幹線の大分方面は、九州新幹線博多~小倉間を加えうるでしょう。

奥羽新幹線は、東北新幹線の東京~福島間の評価を加えられるかもしれません。北海道新幹線の旭川延伸に至っては、東京~札幌間が評価対象になりうるということです。

大都市圏の近郊路線の延伸もしやすくなります。都営大江戸線の東所沢延伸や、つくばエクスプレスの土浦延伸、小田急多摩線の相模原延伸などで、事業化に弾みが付く可能性があります。

事業費負担にも新ルールか

北陸新幹線新大阪延伸に話を戻せば、今回の再試算の妥当性に批判はあれど、小浜・京都ルートに再決定する可能性は高いでしょう。

ただ、費用便益比とは別に、事業費の負担という問題が残されています。京都府市をはじめとした沿線自治体が、巨額の事業費を負担できるのか、という点です。

ただ、これについても「新ルール」を策定して、自治体の負担を軽減するのかもしれません。費用便益比のルールも変えたのですから、財政負担のルールを変えても不思議ではありません。

もし、費用負担のルールも変更するのであれば、これも他の新線計画に影響します。

とくに、西九州新幹線の未開業区間は、佐賀県の財政負担が問題となっています。その解決も視野に、北陸・西九州の両方に適用できるような、整備新幹線に関する自治体の負担のあり方が、次の論点として検討されていく可能性はありそうです。(鎌倉淳)

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旅行総合研究所タビリス代表。旅行ブロガー。旅に関するテーマ全般を、事業者側ではなく旅行者側の視点で取材。著書に『鉄道未来年表』(河出書房新社)、『大人のための 青春18きっぷ 観光列車の旅』(河出書房新社)、『死ぬまでに一度は行きたい世界の遺跡』(洋泉社)など。雑誌寄稿多数。連載に「テツ旅、バス旅」(観光経済新聞)。テレビ東京「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」ルート検証動画にも出演。