富山地方鉄道本線のあり方をめぐり、新魚津~宇奈月温泉間と、あいの風とやま鉄道の富山方面とを直通運転する場合に、200億円以上の初期費用がかかることが明らかになりました。直通運転を実施して、両線が並行する滑川~新魚津間を廃止する案は、ハードルが高そうです。
あり方検討会
富山地方鉄道は、富山県内に108.3kmの路線網を有する地方私鉄です。厳しい経営状況が続いていて、沿線自治体が「富山地方鉄道鉄道線のあり方検討会」を設けて支援を検討しています。このうち、本線について話し合う分科会が2026年3月24日に開催されました。
分科会には新田八朗知事と沿線4市町の首長、地鉄の中田邦彦社長らが出席。あいの風とやま鉄道と並行する滑川~新魚津間の扱いについて、調査結果が報告されました。

3パターンの試算
あい鉄並行区間(滑川~新魚津)の扱いについては、これまでの議論で、①現行路線維持、②並行区間の廃止(回送は継続)、③並行区間の廃止(線路撤去)、の3つの方向性が検討されてきました。調査報告では、それぞれのパターンについて、必要な費用や営業収支の試算が示されました。
試算は、2026年度からの10年間でおこなわれました。ベースとなる①現行路線維持の場合、線路や車両の維持管理に80億6000万円、レールや枕木の更新など安全・快適性向上に27億5000万円、定期券の値下げや全国交通系ICカード対応など、利用促進の取り組みに27億8000万円かかります。
10年間のすべての費用の合計は135億9000万円と試算されました。
並行区間廃止の場合
並行区間の旅客営業を廃止する場合、②線路を維持して回送線化すると、維持管理費は75億円程度になるものの、滑川、新魚津両駅で、あい鉄と乗り換えるための跨線橋を設置する必要が生じ、その費用として26億円がかかります。
また、代替交通としてバスを1日4台運行するのに5億3000万円かかります。10年間のすべての費用の合計は159億3000万円と試算されました。
③線路撤去の場合、跨線橋や代替バスの費用に加え、維持する新魚津~宇奈月温泉間が孤立した路線となるため、新たに沿線に車庫を整備する必要が生じます。その費用が32億5000万~34億8000万円にのぼります。
それらを含めた10年間の費用の合計は、177億9000万円~180億2000万円と試算されました。

営業収支の差は小さく
営業収支は、10年後(2035年度)に、①現行路線維持が8億8000万円、②回送線化が8億4000万円、③線路撤去が7億4000万円と試算されました。
2024年度は5億5000万円の営業赤字でしたが、人口減少の影響などで、赤字がさらに膨らむという見通しです。ただ、3パターンの差は大きくありません。
直通のための初期投資
並行区間を廃止する場合、富山地鉄の新魚津駅とあい鉄の魚津駅で線路をつなぎ、両線を直通する形で富山~宇奈月温泉の列車を運行するという構想もあります。実現すれば、富山~宇奈月温泉間の所要時間が短くなり、利便性が高まります。
これについては、初期投資費用として、同一ホームによる乗り換えに向けた費用で204億2000万円かかることが明らかにされました。
実際に直通する場合には、初期投資のほか、車両の増備や、交通系ICカード対応改札機の設置などで、必要となる費用はさらに上振れします。

まとめると
ざっくりまとめると、以下のようになります。
①現行路線維持
10年間費用 135億円
営業赤字 8.8億円
②回送線化
10年間費用 159億円
営業赤字 8.4億円
③線路撤去
10年間費用 最大180億円
営業赤字 7.4億円
※直通化
初期投資 204億円
巨額負担に大差なく
富山地方鉄道のあり方については、本線のほか、立山線、不二越上滝線で分科会が設置され、検討が続けられています。立山線、不二越・上滝線については、みなし上下分離による再構築事業をおこない、鉄道を存続する方針が固まっています。
残る本線についても、電鉄富山~上市~滑川間は地鉄が単独で維持することが決まっていて、新魚津~宇奈月温泉間についても、沿線自治体の支援で存続する方向性が固まっています。
論点となっているのは、あい鉄並行区間の滑川~新魚津間の扱いですが、今回の試算では、3パターンのいずれの形でも、発生する営業赤字は大差ないことが明らかになりました。設備関連費用については、10年間というスパンで見ると、現行路線維持のほうが安いこともわかりました。
並行区間維持に?
また、あい鉄の富山駅から宇奈月温泉駅へ直通運転をする場合、200億円以上の初期投資が必要となることも明らかになりました。
直通すれば、富山~宇奈月温泉間の所要時間が短縮され、並行区間を整理できることから、合理的にも感じられます。しかし、試算の結果としては、200億円規模の費用がかかるわりに、並行区間の整理による費用削減効果が小さいことが明らかになりました。
直通運転をせずに並行区間を廃止すれば、維持費を節約できるものの、新魚津~宇奈月温泉間に車庫を整備しなければならなくなり、30億円程度の費用がかかります。
並行区間を回送線として維持する場合は、直通運転の初期投資も車庫費用も不要ですが、線路の最低限の維持費はかかり、現行路線の維持と大差ありません。
こうしたことから、最終的には、並行区間を現状と同じ体制で維持したほうがいいという判断になる可能性が高いのではないでしょうか。
難しい判断に
ただ、その場合でも、設備の維持・更新などに年平均10億円規模の費用がかかり、さらに営業赤字の補填も必要になります。すべてを沿線自治体が負担するわけではありませんが、一定割合での負担を求められることになり、自治体としては難しい判断となります。
今回の会合で最終結論は出ず、決定は2026年度に先送りとなりました。これまでの検討会は沿線自治体が主導していましたが、2026年度からは有識者を招き、県主導での検討会に切り替える予定です。(鎌倉淳)





















