JR西日本のインターネット予約サイト「e5489」で、JR東海の在来線特急の予約ときっぷの受け取りが可能になりました。これにより、e5489の利用エリアはJR東海管内まで拡大しました。
JR西日本の列車予約サイト
「e5489」は、JR西日本が運営するインターネット列車予約サイトです。JR西日本エリアのほか、JR四国、JR九州エリアでも列車予約やきっぷの受け取りが可能。また、JR東日本の北陸新幹線各駅と東京都区内でも、一部のきっぷの予約、受け取りが可能です。
ただ、JR東海エリアにおいては、e5489できっぷの予約は可能なものの、受け取りができません。このため、e5489でJR東海管内の特急列車の指定席券などを予約した場合、JR西日本・四国・九州管内の駅できっぷを受け取る必要があります。
したがって、東海エリアに住む利用者が、e5489を使って同社管内の列車予約をしても、きっぷの受け取りができません。そのため、東海エリアの利用者には、e5489は事実上使えませんでした。
「ひだ」「南紀」「しなの」で利用可能に
ところが、JR東海は、同社管内の主要駅の指定席券売機などにおいて、2019年4月1日から、「e5489」で予約した在来線特急のきっぷなどの受け取りが可能になると発表しました。
受け取りが可能になるのは、「ひだ」「南紀」「しなの」などの在来線特急のきっぷのほか、東海道新幹線と在来線の乗継割引を適用したきっぷなどです。
JR東海の列車予約サービス「エクスプレス予約」「スマートEX」は、新幹線以外の予約を取り扱っていません。
そのため、今回の措置により、JR東海は、自社管内の在来線特急の列車予約サービスを、事実上e5489に託した形になります。自前主義の印象が強いJR東海が、JR西日本のシステムを自社管内の列車向けに導入したことは、衝撃的かもしれません。
ただ、在来線特急予約に関しては、JR6社のうち5社がe5489かJR東日本の「えきねっと」でカバーされているなか、JR東海だけが立ち遅れていました。
同社の在来線特急は、独自システムを作るほどの規模でもないため、いずれかのシステムに依存するというのは合理的な判断でしょう。となると、東海道・山陽新幹線で密接な関係にあるJR西日本と組むのは、自然な流れだったのかもしれません。
関東から九州まで
これにより、e5489の列車予約、きっぷ受け取りエリアは、JR東日本の都区内エリアから、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州にまで広がったことになります。
東海エリアの住民にとっては、これまでネット予約が事実上できなかった「ひだ」「南紀」「しなの」の予約が可能になったのは、朗報でしょう。
ただし、JR東海エリアで、e5489のきっぷが受け取れるのは同社発着の在来線特急のみです。JR東日本エリアにおいても、e5489のJR東海エリアを含む予約や、一部のトクトクきっぷは受け取れないという制限があります。
受け取り場所制限の理由
JR各社が、インターネット予約のきっぷの受け取り場所を制限しているのは、それぞれの営業エリアでのチケット販売を守るという意味合いがあります。
e5489のチケットの受け取りを全面的に首都圏で認めたら、首都圏の住民もe5489でJRのきっぷを予約するようになるでしょう。そうなると、JR東日本のインターネット予約サイト「えきねっと」と競合します。
逆も同じで、えきねっとのチケット受け取りを、全面的に関西圏で認めたら、e5489と競合します。JRではきっぷ販売した会社が手数料を得られる仕組みがあり、自社管内のチケット販売をJR他社にされたら、手数料をとられてしまいます。
事業者の理屈はそうなのですが、副作用として、乗車駅でその列車のチケットが受け取れないという状況が生じます。
たとえばe5489で東海道新幹線のきっぷの予約をした場合、「帰りのチケットを東京駅で受け取ろうとしたら受け取れない」わけです。事業者の理屈を知らない利用者からみれば不可思議で、やっぱり使いにくいというほかありません。
訪日客向け新サービス
ところで、JR西日本は、訪日外国人向けの新サービスとして、「JR WEST ONLINE TRAIN RESERVATION(ジェイアールウエスト トレイン リザベーション)」を、2019年春にスタートさせます。
このサイトでは、新幹線、在来線特急ともに、関東甲信越から九州まで広いエリアの列車予約が可能です。新幹線は、北陸新幹線、東海道・山陽新幹線、九州新幹線、上越新幹線、東北新幹線(一部区間)。在来線特急は、JR西日本、四国、九州、東海エリアと東日本一部エリアの列車が対象です。
東海道新幹線のきっぷも受け取り可能で、JR東海の5489サービスの表示のある指定席券売機や、きっぷうりばで受け取れます。JR西日本のサービスで、これは画期的なことではないでしょうか。
JR東日本エリアでは、訪日旅行センター(東京駅、新宿駅、池袋駅、渋谷駅、上野駅、浜松町駅、東京モノレール羽田空港国際線ビル駅、成田空港駅、空港第2ビル駅)での受け取りが可能です。
これにより、少なくとも訪日外国人に対しては、「乗車駅できっぷが受け取れない」という不可思議な制限が解消しそうです。日本人も利用できるようにしてくれればいいのですが。(鎌倉淳)