只見線の不通区間は復旧かバス転換かBRTか。JR東日本が「被災線区の復旧」で4パターンの事例を提示

2011年7月の新潟・福島豪雨で被災したJR只見線は、現在も一部区間が不通となっています。その復旧について話し合う「只見線復興推進会議」がこのほど開かれ、JR東日本は「被災線区の復旧事例」として4つのパターンを提示しました。

JR東日本は代替バスの運行を望ましい形としている様子ですが、地元は鉄道復旧への望みを捨てていません。復旧の場合は、総額85億円がかかるとされます。どうなるのでしょうか。

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第2回只見線復興推進会議検討会

JR只見線は、2011年7月の新潟・福島豪雨で被災し、会津川口~只見27.6kmが現在も不通となっています。福島県と沿線自治体は全線復旧を目指しており、「只見線復興推進会議検討会」を2016年3月から開催しています。その2回目の検討会が、2016年5月19日に福島市で開かれました。

福島民友5月20日付によりますと、検討会では、沿線自治体はあらためて全線復旧を求め、約85億円とされる復旧費用の地元負担額分を増額する考えを示しました。一方、JR東日本側はコスト面や利用者減少から、地元バス事業者に委託し、バス高速輸送システム(BRT)などを想定した代替バスの運行案が望ましいとする考えを示したとのことです。

只見線写真:福島県

被災5路線の復旧事例

JR東日本は検討会にオブザーバーとして参加し、「被災線区の復旧等事例について」という資料を公表しました。それによりますと、JRは、仙石線高城町~陸前小野間11.7km、山田線宮古~釜石間55.4km、気仙沼線柳津~気仙沼間55.3km、大船渡線気仙沼~盛間 43.7km、岩泉線茂市~岩泉38.4kmの計5路線を被災線区の例として上げ、復旧形態を説明しています。

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同資料によりますと、仙石線は不通区間の平均通過人員(輸送密度、以下同)が9,270人/日であり、復旧費をJR東日本が負担し、復旧後の運休もJRが担っています。

仙石線

山田線は713人/日であり、復旧費をJR東日本が負担した上で、三陸鉄道に移管する予定です。

山田線

気仙沼線は898人/日、大船渡線は453人/日であり、BRTによる復旧費をJR東日本が負担した上で、BRT転換し、運行もJRが担います。

気仙沼線

岩泉線は46人/日であり、JR東日本が支援する地元バス会社に移管してのバス転換でした。

岩泉線

不通区間の輸送密度は岩泉線と同水準

JR東日本が3月24日の1回目会議で公表した資料では、只見線の不通区間の輸送密度が49人/日であることが記されています。つまり、輸送密度は岩泉線とほぼ同水準です。

今回発表した資料では、岩泉線に関する部分だけ「利便性」を特記して、「代替バスのサービス内容(運行本数、運賃)は鉄道水準」「地元要望により途中集落、市街地では路線延伸」「地元要望により停留所の増設、フリー乗降区間を設定」などとメリットを強調しています。

この資料を読むまでもなく、JR東日本としての方向性は「バス転換」であることがうかがえます。気仙沼、大船渡線で採用したBRTも、資料を見る限りは前向きには思えません。気仙沼、大船渡線とは輸送密度が1桁違うからでしょうか。

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復旧の場合、JR東日本も補助対象に

JRは、この日の検討会で、不通区間となっている会津川口~只見間の2015年度の代行バスの平均通過人員が35人/日になったことを説明しました。2014年度が43人/日でしたので、2割ほど減ったことになります。

それでも沿線自治体は、あらためて鉄道復旧を求め、復旧費用85億円のうち、3分の1を超える金額を負担する姿勢を示したそうです。

大規模災害で被害を受けたローカル線に対する国などによる現行の復旧補助は、原則として赤字の鉄道会社に限られていて、東日本大震災では、JRだけが補助を受けられない結果になりました。

しかし、自民党の議員連盟は昨年、黒字会社でも被災路線が過去3年間赤字であれば激甚災害指定などを条件に支援を可能とし、国と自治体の負担割合を3分の1とする法律改正案をまとめています。これが成立すれば、激甚災害時にはJRであっても復旧費用の補助が受けられることになります。それを前提に、福島県と沿線自治体は、3分の1を上回る地元負担を検討する意向を示したようです。

JR東日本の姿勢は変わらず

実現すれば、JRの復旧費用負担額は25億円程度になる可能性もあります。そのくらいの金額なら、JR東日本の体力を考えれば負担できる水準です。

ただ、復旧したところで黒字になる可能性はゼロに等しいからか、JRが復旧に消極的であることに変わりはありません。

会議終了後、JR東日本の坂井究経営企画部長は、只見線について「乗車人数が少なく、鉄道の特性を発揮するには難しい。地域の足を守っていく上では、バスが望ましいが、鉄道で復旧する場合も含めて議論していく」と話し、バス転換が最善であるという姿勢を変えませんでした。

輸送密度を見る限り、鉄道どころかバスの存続すら怪しい数字なのは言うまでもありません。それを乗り越えて、只見線は鉄道復旧に進むのか。結論が出るまでもう少しかかりそうです。(鎌倉淳)

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