地下鉄「豊住線」は有楽町線・半蔵門線と直通するのか。6両編成でピストン運行の案も

地下鉄「豊住線」計画が現実味を帯びてきました。東京都都市整備局が発表した「広域交通ネットワーク計画の中間まとめ」に含まれていたからで、交通政策審議会の次期答申に盛り込まれる可能性が高くなりました。次期答申に盛り込まれたら、事業化が視野に入ってきます。

とはいえ、「豊住線」といってもピンと来ない人も多いはず。そこで、概要や運転計画を調べてみました。

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有楽町線の延伸

「豊住線」は、有楽町線の豊洲駅~半蔵門の住吉駅を結ぶ地下鉄計画です。正確には、「東京8号線(豊洲~住吉間)」といい、有楽町線を豊洲で分岐して延伸し、住吉に至る路線です。その先は、さらに亀有まで伸ばす計画もあります。

有楽町線の豊洲駅はすでに2面4線で作られていて、分岐は可能です。また、半蔵門線の住吉駅は2層構造になっていて、こちらでの合流も可能です。ということで、この区間5.2kmを結ぶトンネルを掘れば完成します。

豊住線計画平成25年度東京8号線(豊洲~住吉間)延伸に関する調査報告書より

東京メトロは乗り気でなく

ただ、東京メトロは副都心線を「最後の地下鉄」としており、豊住線の建設には乗り気でありません。そのため、江東区が中心となって第三セクターを設立し、上下分離で建設したうえで、運営を東京メトロが担う、というスキームが模索されています。2014年6月には、かなり詳細な調査報告書として「東京8号線(豊洲~住吉間)延伸に関する調査報告書」が江東区から出されており、運転計画なども公表されています。

それによりますと、車両は6両編成で、ピーク時の運転本数は毎時12本、つまり5分間隔とされています。有楽町線や半蔵門線との直通運転はせず、豊洲~住吉間のみの運転となります。報告書にはありませんが、ピーク時に5分間隔ということは、日中は10分間隔程度になりそうです。

中間改札は設けられず、既存の東京メトロのネットワーク内で利用できます。つまり、運賃は東京メトロの運賃で、区間によっては短絡され値下げになることもあります。この調査によると、総事業費は1,260 億円とされています。

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臨海副都心へのアクセス向上が目的

豊洲~住吉の中間駅は3駅で、うち東陽町で東西線と接続します。東京の湾岸・下町エリアで6両編成の地下鉄が5駅を行ったり来たりのピストン運行をする計画です。

そんな地下鉄を利用する人がどの程度いるのだろうか? と調査報告書をよく読むと、路線整備することで、以下のような効果があるそうです。

まずは、東京東部や千葉西部から東京臨海副都心へのアクセス向上。次に、総武緩行線や東西線の混雑緩和。さらに、臨海副都心と東京スカイツリー、東京ディズニーリゾートを結ぶ観光回遊ネットワークの形成。そして、輸送障害時の代替ルートです。

いろいろ書き連ねていますが、要するに、豊洲や臨海副都心のアクセス向上が主目的のようです。輸送密度の予想は15万人/日だとか。

実際に最も大きな効果として見込まれるのは、東陽町における東西線からの乗り換え客のようです。豊洲方面への通勤・通学客や、その先有楽町線やゆりかもめに乗り換えての需要も見ているようです。

東京メトロは「やるなら直通運転」

調査報告書に書かれていることは、事業化へ向けた一つの案ですので、これがそのまま実現するわけではないでしょう。実際、この報告書が出た後に行われた交通政策審議会の「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会(第4回)」の議事録によりますと、東京メトロは「当社が運行する場合、豊洲駅で都心方面へ直通運転することを想定している」としています。

つまり、メトロとしては、有楽町線の一部列車を豊洲から住吉方面へ振り分ける構想です。その列車が住吉止まりなのか、さらに半蔵門線に乗り入れて押上やその先まで行く想定なのかは、明らかにされていません。

東武同士の直通運転も?

もし有楽町線から豊住線・半蔵門線を経て押上に至る直通列車が運転されるなら、東武同士でスカイツリーラインと東上線の直通運転も実現できます。和光市~豊洲~住吉~押上です。

が、豊住線を有楽町線や半蔵門線に直通させても、線形的に利用者が限られそうなのも事実。直通させると、需要の細い豊住線区間に10両編成を走らせることになりますし、既存路線の運転本数も調整しなければならなくなります。有楽町線の新木場方面への列車本数は減ることになるでしょうし、半蔵門線渋谷方面は清澄白河折り返しが増えることになるでしょう。

潮見駅で京葉線と接続案も

上記の議事録には、委員会側の意見として、「JR京葉線の潮見駅との乗換が便利になるようにルートを設定してはどうか」という問いかけがあります。豊洲~東陽町の中間駅を潮見駅にしてはどうか、という質問です。

東京メトロ側は、「ルート設定には支障物など様々な制約がある」とやや否定的な見解でしたが、不可能というわけでもなさそうです。ただ、そうなると建設費は高くなるでしょうし、枝川付近の鉄道空白エリアをなくすことができなくなるというデメリットも生じそうです。

ということで、豊住線の建設は決まりそうですが、どういう形になるかはなんともいえません。路線的に独立した地下鉄になるのか、有楽町線の「支線」扱いになるのかも不明です。もし独立したら、山手線内を一切通らない唯一のメトロ路線となります。

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